上 下
129 / 214
第三章

18 無力だ

しおりを挟む
「お~~い、レイ!こっちの4人治療してくれ!」
「えっ?あ。ぎゃーーーーーーーーーーーっ!!殿下っ!アルっ!エリアス兄様っ!!」
悲鳴と共にレイフォードは慌てて駆け寄ってきて、そして、
「スイっ!やり過ぎですっ!殿下の手がっ!!!腕がっ!!」
「ん、折れてるだけ?お前なら治せるだろ?」
「『だけ』ではありません!不敬罪にあたっても知りませんよ!!!」
プンスコ怒りながら一番重傷のジオルドの治療に専念しだす。
何故、一番重傷か?
それは一番俺に立ち向かってきては何度もやられていたからだ。
何がそうさせたのかは知らないが、闘志剥き出し、いざ出陣っ!て、感じでさ。
あまりにもその闘志と『力量』が見合わなくて、ちょいっとお仕置き?してやりました。
ら、こんなことになっております。
エリアスなんて、
「ここまでボロボロにされるなんて想像していなかった」
アルバートなんて、
「ああ、これで実力の5%だと?信じられん」
ジルフォードなんて、
「一生勝てる気がしない。力も『夫』としても・・・・・・」
と言う、ジルの肩を二人がポンポンとあやしていました。
「ま~なんだ、今日はこの辺で切り上げて、旨いもん食いに行こうか」
「『今日は?』ってことは、明日もこのような事をするのですか?」
ギョッとした表情をしながらも賢明に治療にあたるレイフォード。一切菖蒲は手を貸していません。
うんうん、回復のスピードが速くなっているな。あと、精度も飛躍的に伸びている。
菖蒲に任せて良かったわ。
じゃなくて、
「当たり前だろう?強くなって向こうの世界に戻るべきだろうが?」
「で、でも!!魔国は今一時も時間なく『瘴気』に蹂躙されている状態なのですよ!?」
正論をぶちかましてくるが、自分たちがどうやってこの世界に辿り着いたかをよく考えてほしいものだ。
「あのな、お前たち6人を青龍一人でここまで運んだんだぞ?本来ならば神獣様全ての力を借りてくるべき所をだ」
「っ!つまり・・・・・・・」
「そうだ。つまり、今青龍には力がない。よってどっちにしろお前たちは帰ることができない。およそ一週間かな?」
「一週間もですかっ!?」
「ああ。だから今のうちに鍛える。あの3人がいるうちにな」
ふふんと踏ん反り返る3人を俺は一瞥するだけで、クナイは投げつけなかった。投げつけたら最後、面倒を見てくれなくなる可能性『大』だからだ。
「それにな・・・・・・・・ん・・・・・・えっと・・・・・なぁ~」
「???どうしたスイ?珍しく良い淀んで?」
「いや、うん・・・・・・・」
自分から言い出すのが引ける内容な為言い淀んでいるのに、竜胆が
「こちらにいる間に今の貴方たちを限界まで鍛え上げることで、翠蓮が他の男に抱かれずに済むということですよ」
「竜胆!!そんなはっきり・・・・」
「私たちの誰かが口を挟まないといつまでもグチグチと言いかけては黙ってを繰り返すだけの翠蓮に反論されたくない」
「ぐっ!!面目ありません」
「だが、それでも翠蓮が他の男に抱かれる確率は低くなるだけで、抱かれないという選択肢はほとんどないと思って貰いたい」
「「えっ・・・・・・そんな・・・・・・・」」
「それだけ貴方たちの力量は国の助けにはならないのだと理解して欲しい」
希望をどん底まで叩きつける手腕は、竜胆の右に出る者はいないだろう。実際口論での闘いでは勝てる気がしない・・・・・・じゃなかった。勝てないのだから。
「だが、鍛え上げることで少しでも翠蓮の力にはなれるんだ。近付くことも許されない『魔国』へも行けるようになる」
「なぜ、そこまで知っているのか?」
「青龍殿がお教えしてくださったからだ。菖蒲にも葵兄さんにもな」
うんうんと頷く二人。当然俺は全てを知っている。
「『転移石』だったか?今の貴方たちの力では到底それすらも設置することは敵わないくらい『魔国』は瘴気に溢れた国のようだな」
「竜胆、そのくらいでいい。フィルハートの者たち皆撃沈しているから」
「あ?なんと軟弱な!!!ま~~いい。翠蓮を汚させるな。俺たちの主を護れ」
「「「「「「っ!!」」」」」」
「竜胆、お前・・・・・・」
「あああああっ!もういいっ!早く汗流して桃季の店行くぞ!!!腹減ってしかたない!!」
「う、うんっ!!そうだなっ!はは、あはははは」
「笑うな、翠蓮!!」
俺を大事に思ってくれている竜胆。ううん、竜胆だけじゃない。菖蒲も葵も。
うん、
「お前ら大好きだっ!」
「「「俺(私)たちもだっ!」」」
ガシッと肩を組み、笑い合う俺たち4人。
ああ、これが青春か!
と、思うが青春にはもはや遅い年齢だと理解した頃にはがっくりと肩を落とす俺たちでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

尻穴がバイブレーションしちゃう職業病が成人病として広まってしまった世界

左側
BL
座りっぱなしで働く人がなりがちな、『尻穴がバイブレーションしちゃう』病。 お尻に何かを入れると症状が治まる。 精液を注入すると落ち着いた状態が長持ちする。 ――― その病が成人病として広まってしまったファンタジー世界のお話。 凸 強面の三十路兵士団長(ナンディ・マサラー) 凹 若きエリート第二騎士団副長(モナイ・ヨーナ)  病気の対処療法を依頼しただけのハズが恋愛的に意識しちゃうチョロい話。 凸 兵士団のスーパールーキー日本人(ヒトリ・アト 阿斗一人) 凹 癒し系美人第二騎士団長(キリ・バイハル)  鬼畜攻めだという誤解と期待をされている騎士団長が念願の受けが出来るまでの話。 ※ 攻めが登場するまでが長引いたので、開き直って別章にしました。 ※ その内に他カップルの話も掲載する予定。 ※ お尻がブルブル震えるのをどーにかしようって話 ※ 思い付いた勢いで書いちゃったので通常以上に誤字脱字にご容赦ください ※ 付けるべきタグがあれば(地雷避けの為にも)お知らせください

明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~

葉山 登木
BL
『明日もいい日でありますように。~異世界で新しい家族ができました~』 書籍化することが決定致しました! アース・スター ルナ様より、今秋2024年10月1日(火)に発売予定です。 Webで更新している内容に手を加え、書き下ろしにユイトの母親視点のお話を収録しております。 これも、作品を応援してくれている皆様のおかげです。 更新頻度はまた下がっていて申し訳ないのですが、ユイトたちの物語を書き切るまでお付き合い頂ければ幸いです。 これからもどうぞ、よろしくお願い致します。  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 祖母と母が亡くなり、別居中の父に引き取られた幼い三兄弟。 暴力に怯えながら暮らす毎日に疲れ果てた頃、アパートが土砂に飲み込まれ…。 目を覚ませばそこは日本ではなく剣や魔法が溢れる異世界で…!? 強面だけど優しい冒険者のトーマスに引き取られ、三兄弟は村の人や冒険者たちに見守られながらたくさんの愛情を受け成長していきます。 主人公の長男ユイト(14)に、しっかりしてきた次男ハルト(5)と甘えん坊の三男ユウマ(3)の、のんびり・ほのぼのな日常を紡いでいけるお話を考えています。 ※ボーイズラブ・ガールズラブ要素を含める展開は98話からです。 苦手な方はご注意ください。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました! スパダリ(本人の希望)な従者と、ちっちゃくて可愛い悪役令息の、溺愛無双なお話です。 ハードな境遇も利用して元気にほのぼのコメディです! たぶん!(笑)

Restartー僕は異世界で人生をやり直すー

エウラ
BL
───僕の人生、最悪だった。 生まれた家は名家で資産家。でも跡取りが僕だけだったから厳しく育てられ、教育係という名の監視がついて一日中気が休まることはない。 それでも唯々諾々と家のために従った。 そんなある日、母が病気で亡くなって直ぐに父が後妻と子供を連れて来た。僕より一つ下の少年だった。 父はその子を跡取りに決め、僕は捨てられた。 ヤケになって家を飛び出した先に知らない森が見えて・・・。 僕はこの世界で人生を再始動(リスタート)する事にした。 不定期更新です。 以前少し投稿したものを設定変更しました。 ジャンルを恋愛からBLに変更しました。 また後で変更とかあるかも。

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

BLゲームのモブとして転生したはずが、推し王子からの溺愛が止まらない~俺、壁になりたいって言いましたよね!~

志波咲良
BL
主人公――子爵家三男ノエル・フィニアンは、不慮の事故をきっかけに生前大好きだったBLゲームの世界に転生してしまう。 舞台は、高等学園。夢だった、美男子らの恋愛模様を壁となって見つめる日々。 そんなある日、推し――エヴァン第二王子の破局シーンに立ち会う。 次々に展開される名シーンに感極まっていたノエルだったが、偶然推しの裏の顔を知ってしまい――? 「さて。知ってしまったからには、俺に協力してもらおう」 ずっと壁(モブ)でいたかったノエルは、突然ゲーム内で勃発する色恋沙汰に巻き込まれてしまう!? □ ・感想があると作者が喜びやすいです ・お気に入り登録お願いします!

処理中です...