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第三章

14 理由があったのに

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「な~、何で俺がお前たちの気持ちを無視してまで自分を鍛えていたと思ってる?」
「それは自身のためではないのか?」
「俺たちと逢って弱くなったと聞いていたからてっきりそうだと」
「そうだけど、違う」
一呼吸して、
「俺は力を維持し続けなければ、『瘴気を祓う』ことができなくなるし、神獣様に見放される」
「そんな彼らはっ!?」
「いや、俺が強いから、強い信念を持っているから力を貸してくださっているに過ぎない。それに彼らの力を借りると言うことはかなりの体力を消耗する。だから弱くなれないんだ」
「そうだったのか・・・・・・・・・。だが、あそこまでっ!身体の形が変わるくらいまで自分を痛めつける必要はないじゃないのか?」
と、当たり前の事を述べられるが、だが、
「ああ、そうだ。こちらの世界では本来あそこまでは行わない。あいつら3人と共にいつも鍛えているからな」
竜胆たちを指さすと、何故か「ふふ~~ん」と偉そうな態度を取ったので、棒手裏剣を撃ってやった。
「スイっ!!危ないだろうがっ!」
「そのくらい簡単に避けられるだろうが、テメーなら!」
ま、ごちゃごちゃ言ってくる3人は放置して、
「『瘴気を祓う』行為は元々俺の忍びとしての力で、これは厳しい訓練によって産まれ、そして俺だけが為しえる術だ。だが、広範囲になるとやはり神獣様の力を借りて行っているんだ。だから、俺は弱くなれないし、なりたくないんだ!俺が護りたいモノを護り続けるには!!」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
フィルハートの者たちは黙り込み、俯き、そして、
「私が馬鹿だったよ、スイ」
「ああ、俺もだ。君に護られてばかりの自分が情けない」
俺に護られるのは仕方がないことなのだ。
だって、彼らは『弱い』のだから。
あちらの世界で精霊の力を使えるのだから『強い』ことに変わりはないのだが、俺や後ろの3人と比べると天と地ほどの差が生まれてしまうのだ。
それだけ、彼らは弱く、俺が護らねばっ!という概念に駆られる存在なのだ。
ただ、最近はメキメキと上達し、強くなってはいるが。
一番はもちろん、
「レインはかなり強くなったな。あとであいつらにに鍛えてもらえ。レイは・・・・・・・」
彼の手を取り、そして額同士をくっつけて、俺の熱を彼に流す。
「ふぁ・・・・・・・・」
「ちょっと我慢しろよ。水の精霊よ・・・・・・・」
俺は精霊に呼びかけた。
すると『どうしたの?』と返答があった。
その精霊の姿は、
「綺麗な子だね」
『ふふふふふふ、ありがとう愛し子よ』
と、レイの肩に止まってルンルンと足を振っている。
「うん、再生の力を得たようだな。訓練次第で最高の医術師になれるよお前は」
「っ!!!頑張ります!!!!」
「ん、ということで菖蒲姐さん頼んだよ」
「はいはい、スイの頼みなら断れないわね。ワイン3本ね」
「了解です」
断れないと言いながら、要求してくる『高級ワイン』。
何がいいか考えていると、
「あのそれでしたら団長にとワインを数本持ってきておりますので、こちらをどうぞ」
レインが鞄から取り出したのはエリアスの領地で作られたワインだった。
姐さんはそれを受け取り、
「うわ~~~~異世界のワインを飲む日が来るなんて!!ありがとうね、坊や」
「ぼっ!・・・いえ、弟にご教授戴けるのであれば、お安いものです」
「あら、弟さん?そういえば似ているわね~~。綺麗で可愛いと・こ・ろ☆」
姐さんはそう言ってレインの顎をくいっと持ち上げて、顔を近づけて、
バチンッ!!!
「いったーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!何すんのよ、スイっ!!」
「菖蒲、そいつは俺の大事な副官で、それにそいつには大好きな恋人がいるから手を出すな」
キッと睨み付けると、ふふんと何故か笑い、
「承知致しました、翠蓮様」
と、畏まった礼を取ったのだった。
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