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第三章

4 依存

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翌日、なかなか食堂に降りてこないスイを起こしにレインが部屋に向かうと、人の気配が中からしないことに違和感を覚え、そっと扉を開くと、スイだけでなく猫の親子の姿もなかったそうだ。

ベッドにはきちんと畳まれた騎士服一式と、机には団長の証であるピアスと私たちの結婚指輪が、綺麗な布の上に置かれていたそうだ。
その光景にレインが悲鳴をあげると、階下にいた全ての団長副団長がスイの部屋に集まって、固まってしまったのだとか。
気を取り直したレイフォードがクローゼットを開けると、スイが当初着ていた服がなくなり、荷物も何もかもこちらの世界では手に入らない、嘗てスイが持っていた全てがなくなっていたのだとか。
また、ピアスなどと一緒に簡潔に書かれた手紙が机に置かれており、ただひと言

『ありがとう  スイレンより』

と、だけ記されていた。
その手紙は私の手元にあり、何回も何回もその文字を追っては懺悔に捕らわれる。

状況からスイ、いや、スイレンはこの国から出て行ったのだ。
私たち双子に裏切られる形でっ!
レインに釘を刺されていたのに、我慢できなかった私たちは愚かすぎた。

『団長はっ!こちらの世界に来て、私たちを強くしてくださいました!ですがっ!ご自身と対等に手合わせ出来る者がいないと嘆いておいででした!!手合わせしようにも殿下たちに姿を見られるわけにはいかないとおっしゃられておりました!ですからっ!私が『殿下たちに見つからない場所』があるとお伝えしたところ、殿下たちと逢えない日の夜は神獣様方と手合わせをされておられたのです!!』
『・・・・・・・・・・』
『あの場所なら殿下たちは来られないでしょう?私たちが案内しないかぎり!私は言いましたよね?『怒らないであげてください』と!!!なのにっ!!!』
『レイン、もう止めなさい』
エリアスが間に入らなければ、レインはずっと私たちを責め続けただろう。止められたレインは、エリアスの胸で大声を上げながら泣き続けた。
『俺たちはスイが強くなることを否定しない。してはいけないんだ。俺たちのせいで弱くなることも許してはいけないんだ。だから、見守るしかない現状だった』
『治癒だって玄武殿が完璧にされておいででした!それにスイは私の治癒技術を上げさせるため、自分の治療を私にさせてくださっていました!ご自身は痛みに耐えながら、私の能力発展に向上してくださっていました!なのにっ!!』
エリアスからは何も発せられず、ただただ強く睨まれるだけだった。


私たちはスイに頼りすぎていた。
スイが強すぎて、弱くなっていることすら気付くことができなかった。
それについて苦悩していることすら、私たちに悟らせなかった。
どれだけスイはこの世界で我慢を強いてきたのだろう。
どれだけ私たちはスイの足手まといであったのだろう。
尽きぬ後悔が去ることは、スイと再び会える日までないだろう。
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