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第二章

36.昔の聖女の扱い※残虐表現有り

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俺は焔という國の入り口に立っている。
禍々しいほどの『瘴気』に覆われた黒い闇の國だ。
これに耐えられる人間とは、俺のような規格外の人間だけのはず。
なのに中では人が蠢いている気配が漂ってくる。
一体どうなっているのか・・・・・・・。
國の入り口である頑丈な門を破壊し、中に入る。この門は外から簡単に開けられない仕様となっているらしく、そのため門番が誰一人としていなかった。
焔の中身は、『普通の國』だった。
中は『瘴気』で淀んでいるわけでもなく、ごく普通の國であった。
上空を覆う『瘴気』とこの國の最重要箇所であろう『城』以外は。
外から来た俺が『異物』過ぎるのか、皆建物の中に避難する。また、窓からは弓矢を放ってくるので、それを叩き落とす。
この國は、普通の民でも戦闘を平気で熟すのだと知った。
俺が弓矢程度では傷も負わない異端の者と理解しだしたらしく、段々と攻撃方法が荒っぽさを増す。が、どの技にも全く顔色を変えず、かすり傷も負わず、逆に負わされる立場になると『忍び』として俺に向かってくるも、忍びとして挑むのならば、俺は容赦する必要はない。
トドメを刺す必要は現在ないと判断した俺は、気絶させるに留まり、一纏めにして大きな建物の中に放り込んだ。
だが、俺でも赦せない事が起きた。
俺を仕留めさせる道具として『子供』を使ったことに。
親に許しを請いながら、多量の涙を流す子供の身体に呪符を巻き付けている。その護符は自身諸とも地獄へと堕とす代物だ。
その光景はあまりに赦すことができず、その親であったであろう者の腰をスパンと斬り落とした。
子供からは「ひっ!」と小さな恐怖の声が漏れたが、この子から呪符を外し、その小さな身体を清めてやると、ギュッと俺に抱きついて

「お兄ちゃんありがとう!!!」

同族に感謝なんてされたことなくて、嬉しかった俺はその子供を抱き上げて安全な場所を案内させた。
そこには戦えない多くの者たちが小さく身を寄り添いあっていた。
戦えない理由は、

『瘴気の材料にされたから』

この國はどこまでも腐っていた。
話を聞くと、『瘴気』を大きく育てるため、自国の民を犠牲にしてきたらしい。
よく見ると、目が見えない者、片腕がない者、他多くの者たちがどこかしらをこの國を統治する者たちに奪われ、役立たずと見做され、このような質素で小汚い場所に追いやられているのだと。


「やっぱりこの國潰すから、統治者はあの城か?」
「はい、あそこにこちらに召喚された元『聖女様方』のご意志を継がれる者たちが住んでおります」
「『召喚』?『元聖女』??」
今までこの國を潰すことしか考えていなかった俺に、疑問符を付けさせる二つの単語。
ここの人たちにどういうことか説明をさせると、

「この國は元々こちらの世界の住人が作った國ではないのです」

纏めると、大昔聖女として召喚された俺の一族がこの世界に虐げられて、そして使い捨てにされ、再び違う一族が召喚されを繰り返したらしい。
当時は、この世界のどこの國でも召喚は可能だったそうだ。
そして、召喚された『聖女』の最期は何処の國でも惨たらしかったそうだ。
逃げないよう手足を拘束され、一日中寒い地下室のような所に閉じ込められ、ただただ言われるがまま、祈りを捧げていたそうだ。
食事もきちんと与えられず、奴隷のように扱われたのだと。
辛うじて逃げだし。生き延びた聖女たちが造りあげた國がこの焔だと。
積年の恨みが『瘴気』となり、今この世界を壊そうとしているのだと。
その方法が、他の國や街に人柱、つまり俺の親父みたいなミイラを配置し、そこに『瘴気』を集めるらしい。その『瘴気』を溜めて膨らませて、『この時』と思ったときに解放する予定のようだ。
人柱が置かれたその箇所は『瘴気』を発生させやすくなるのだそうだ。バーミリアやホルシオの様に。
ただ、ホルシオからは人柱が見つかっていない。だが、必ずどこかに存在するはず。
見つけてやる!!
それより、


「・・・・・・・俺の一族がこちらに召喚されていた?ばあちゃん以外に?え?理解できなんだけど?」
「それはそうでしょう。この事はどこの國も隠したい過去の負の無機物遺産。赦されることのない過去を忘れようとしているのです」
そう言えば。こちらに来た始めの頃、『召喚の儀』は国間で今は規定で行ってはならないと言っていた。
過去にこのようなことがあったからなのか?
ただ、ジオルドたちはこの事を知らないようだ。
この國の成り立ちが本当ならば、忘れてはならない過去。
都合の悪いことを隠すこの世界を「壊そう」と考えるのは当然だ。
だが、

罪のない者たちを傷つけてよい理由にはならない。


「『復讐』を企てる気持ちは理解出来るが、やはり関係の無い者たちにこの扱いはあんまりだから、やっぱり滅ぼしてくるわ」
「っ!!!???」

引き留める声を無視して、奔ってその城の重要箇所へと到達した。
もちろん俺は最強の人間兵器。
誰にも傷を付けられず、城の中でどんちゃん騒ぎをしていた輩を黙らせてやっただけ。
重要箇所には5名の厳つい俺と同郷だと感じさせる者たちが威風堂々と座っていた。
だが、俺の瞳を見たこの者たちの反応は、ひっぺり腰で、ガクガクと膝を言わせている。
「な、そ、その瞳はっ!?」
「ふ、風磨一族の最強が持つ瞳!?」

俺の紫の瞳は、一族で最強の者に受け継がれる特別な物。
そして、怒りが最高潮になると明るい紫へと変化し、気持ちが収まらない限り、このままだ。
どこかで折を見て戻そうにも、自分の感情次第なのでどうにもならないのだ。

「お前たち、この世界で好き勝手しているようだな?」
「ひっ!こっちへ来るなっ!」
「『瘴気』を作るのに、何人の罪亡き者を手に掛けた?ああ??」
「ひぃぃぃぃっ!!!」
「お前らの境遇には同情する。だがっ!犯してはいけないことをした!聖女の恨み?ああ、そうだろう、恨みはあるだろうな!だが、違う形で晴らすべきだった!」
「た、助けてくれ、命だけは!!」
「ほぅ、俺がどのくらい強いのか理解しているようだ」
と、言った傍から忍具を投げつけてくるのは何とも小賢しい。
「貴様とて、我ら風磨一族の最高実力者5人を相手にただでは済まないだろう!?」
そう言って何と契約しているのかわからないが、炎や水、風の力を繰り出してくる。
しかし、最高の五神獣と契約している俺にとって塵に等しい技ばかりで。
その力を奪い取り、契約神獣も強制解除する。
「なっ!?ばかなっ!?」
「こんなことって・・・・・・・」
「謝罪も懺悔もなにもないようだな?」
「「「「「ひぃっ!!」」」」」


「俺は風磨一族が頭領、翠蓮。貴様らを処刑する!」
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