40 / 214
第一章
39.神格化
しおりを挟む
「凄いですね、スイ団長。もう『瘴気』を払ってしまった」
「ああ、我々もグズグズしてはいられないのだが、これではな・・・・・・・」
城下に住まう民が、属国になることに異を唱え、混乱しているのだ。
『瘴気』よりそれを優先させる浅はかな考えは、我が国には必要ないのかもしれない。
キツい言い方かもしれないが。
だが、スイが『結界』らしき物を張った瞬間を見ていた民も当然いる。
一様に口をポカーンと開けて固まった。そして、すぐに『瘴気』が払われると、安堵と困惑の表情が代わる代わる現われ、そして、行き着く先には自分たちが行ったスイに対する暴言と行動だ。
後悔しても既に遅い。
ならば、これからどう行動するかを考えて欲しい。
私は固まっていた民の言葉を辛うじて聞き取れた。
「あいつ、無能じゃなくて、神だったのか・・・なんということを」
「ああ、私たちはあのお方に大変失礼なことを。助けてなんて烏滸がましくて、言えない」
「綺麗・・・・・・『瘴気』がない空ってこんなに綺麗だったかな?スイ様、どうか私たちに謝罪の機会をお与えください」
自分たちの行いを恥じ、スイを敬い、謝罪の機会を設けて欲しいと訴える民を放置するのは王族としてはしてはならないことだが、こればかりはどうしようもない。
スイがこちらに戻ってこなければ。
でも、その光景を見ておらず、我々に苦情ばかりを言っている民は『瘴気』があの位置だけ晴れたことに気づいていない。なんと愚かなことなのだろう。
私はこの得体のしれない民をどうしたらよいのか、本当に困る。
「ジオルド、ここを放置して俺たちは城に戻らないか?そっちの浄化作業を先にした方がよくないか?」
「ジルが言いたいことはわかるけど、スイがどう行動するか全く判らないから、動けないんだよね」
「スイめ。格好良すぎるのはよいのだが、後のことも考えて行動してくれ」
「全くだ」
私とジルの意見が一致した。
お互いに大きな溜息を一つ。
と、その瞬間、
「お前たち、スラム街の瘴気を晴らしてくれたのがあのお方なんだぞ!」
「いい加減、態度を改めて、あの方に謝罪なりなんなりしなければならないのがわからないのか!」
あの瞬間を見ていた民たちが、未だ文句を言う民たちに立ち向かう。それで自分の愚かさに漸く気付いたのだ。
愕然と立ちすくみ、そして、ガクガクと膝を鳴らし立っていられなくなる者、泣きわめいている者、泡を吹いて倒れている者、様々な愕然の仕方が見れるこの場はなんとも愚かしい。
「このバーミリアに『神』が御降臨されておられたのか」
「私たちはなんと不敬なことを・・・・・」
「ああ、神様っ!」
あの愚かな態度から一変。
スイはもはや「神」として崇められ始めた。
何とも勝手なものだと、冷めた目で見る。
私たちのスイは「神」でも「女神」でも「聖女」でもない。
ただの、心優しい「最強の騎士」なだけなのだ。
「ああ、我々もグズグズしてはいられないのだが、これではな・・・・・・・」
城下に住まう民が、属国になることに異を唱え、混乱しているのだ。
『瘴気』よりそれを優先させる浅はかな考えは、我が国には必要ないのかもしれない。
キツい言い方かもしれないが。
だが、スイが『結界』らしき物を張った瞬間を見ていた民も当然いる。
一様に口をポカーンと開けて固まった。そして、すぐに『瘴気』が払われると、安堵と困惑の表情が代わる代わる現われ、そして、行き着く先には自分たちが行ったスイに対する暴言と行動だ。
後悔しても既に遅い。
ならば、これからどう行動するかを考えて欲しい。
私は固まっていた民の言葉を辛うじて聞き取れた。
「あいつ、無能じゃなくて、神だったのか・・・なんということを」
「ああ、私たちはあのお方に大変失礼なことを。助けてなんて烏滸がましくて、言えない」
「綺麗・・・・・・『瘴気』がない空ってこんなに綺麗だったかな?スイ様、どうか私たちに謝罪の機会をお与えください」
自分たちの行いを恥じ、スイを敬い、謝罪の機会を設けて欲しいと訴える民を放置するのは王族としてはしてはならないことだが、こればかりはどうしようもない。
スイがこちらに戻ってこなければ。
でも、その光景を見ておらず、我々に苦情ばかりを言っている民は『瘴気』があの位置だけ晴れたことに気づいていない。なんと愚かなことなのだろう。
私はこの得体のしれない民をどうしたらよいのか、本当に困る。
「ジオルド、ここを放置して俺たちは城に戻らないか?そっちの浄化作業を先にした方がよくないか?」
「ジルが言いたいことはわかるけど、スイがどう行動するか全く判らないから、動けないんだよね」
「スイめ。格好良すぎるのはよいのだが、後のことも考えて行動してくれ」
「全くだ」
私とジルの意見が一致した。
お互いに大きな溜息を一つ。
と、その瞬間、
「お前たち、スラム街の瘴気を晴らしてくれたのがあのお方なんだぞ!」
「いい加減、態度を改めて、あの方に謝罪なりなんなりしなければならないのがわからないのか!」
あの瞬間を見ていた民たちが、未だ文句を言う民たちに立ち向かう。それで自分の愚かさに漸く気付いたのだ。
愕然と立ちすくみ、そして、ガクガクと膝を鳴らし立っていられなくなる者、泣きわめいている者、泡を吹いて倒れている者、様々な愕然の仕方が見れるこの場はなんとも愚かしい。
「このバーミリアに『神』が御降臨されておられたのか」
「私たちはなんと不敬なことを・・・・・」
「ああ、神様っ!」
あの愚かな態度から一変。
スイはもはや「神」として崇められ始めた。
何とも勝手なものだと、冷めた目で見る。
私たちのスイは「神」でも「女神」でも「聖女」でもない。
ただの、心優しい「最強の騎士」なだけなのだ。
0
お気に入りに追加
209
あなたにおすすめの小説
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
どうやら生まれる世界を間違えた~異世界で人生やり直し?~
黒飴細工
BL
京 凛太郎は突然異世界に飛ばされたと思ったら、そこで出会った超絶イケメンに「この世界は本来、君が生まれるべき世界だ」と言われ……?どうやら生まれる世界を間違えたらしい。幼い頃よりあまりいい人生を歩んでこれなかった凛太郎は心機一転。人生やり直し、自分探しの旅に出てみることに。しかし、次から次に出会う人々は一癖も二癖もある人物ばかり、それが見た目が良いほど変わった人物が多いのだから困りもの。「でたよ!ファンタジー!」が口癖になってしまう凛太郎がこれまでと違った濃ゆい人生を送っていくことに。
※こちらの作品第10回BL小説大賞にエントリーしてます。応援していただけましたら幸いです。
※こちらの作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも投稿しております。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
その男、有能につき……
大和撫子
BL
俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか?
「君、どうかしたのかい?」
その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。
黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。
彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。
だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。
大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?
更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!
【R18BL】世界最弱の俺、なぜか神様に溺愛されているんだが
ちゃっぷす
BL
経験値が普通の人の千分の一しか得られない不憫なスキルを十歳のときに解放してしまった少年、エイベル。
努力するもレベルが上がらず、気付けば世界最弱の十八歳になってしまった。
そんな折、万能神ヴラスがエイベルの前に姿を現した。
神はある条件の元、エイベルに救いの手を差し伸べるという。しかしその条件とは――!?
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる