38 / 214
第一章
37.汚れた子供
しおりを挟む
殿下たちとレインを連れて市井に行くと、阿鼻叫喚な事態となっていた。
興奮する民衆、それを宥めようとする我が騎士団。
怒号が飛び交う中、一人の男が俺に気付いた。
「あああっ!テメーは異世界からきた無能じゃねーかっ!!」
その男の大声で、一気に俺に視線が集まる。
だが、一人の女が
「で、でもっ!団長を示すマントとエギュレットがあるわ!!」
「はぁっ!?フィルハートは狂ったのか!?」
ビキッ
「あんな優男っ!国を救えるわけないじゃないっ!!」
ビキキッ
「あんな男を団長にするなんてフィルハートもたいしたことねーな!」
ビキキキッ
ドッと笑いに包まれる市井。
俺は怒りを通り越して、顔から表情がなくなった。
それに気づいたレインが小さく「ひっ!」と漏らす。
「フィルハート騎士団、こいつらの面倒はどうでもいい。後回しだ。助ける必要もないくらいこの国の民は愚劣だったってことだ」
「す、スイ団長・・・・・・・・」
レインが俺を気遣おうとするも、俺の威圧に後ずさる。
それを片目で捕えると、片端に小さな2人の子供がこの非常識な輪から外れる位置に立っていた。
遠くだが目を凝らして見ると、衣服は汚れ、髪はザンバラで、身体は痩せこけているのがわかる。
俺はその子たちの目の前に一瞬で立って見せた。
「君たちはどうしてここにいるの?」
俺はなるべく怖がらせないように、優しい声で問うた。
兄弟なのだろうか、小さい子の方が大きい子の背中に隠れてしまった。
背中を使われてしまった男の子は、俺が怖いのだろうか、小刻みに震えている。
「大丈夫、大丈夫だよ。お兄ちゃんは何もしないから」
「・・・ほんと?」
「うん、嘘はつかないよ。あっ!たまには言っちゃうけどね」
「ぷっ!騎士様面白いね・・・・・あ、あのね、父ちゃんと母ちゃん、動かなくなっちゃった!助けてっ!皆死んじゃう!」
「・・・・・・・うん、そこまで案内してくれるかい?」
「助けてくれるの?」
「お兄ちゃんが出来る範囲ならね。ほら、お兄ちゃんに捕まって!」
俺は左右の腕にこの兄弟を抱き上げると、
「うわっ!すげーーーーっ!父ちゃんにもしてもらったことない!」
「兄ちゃんっ!高いよっ!」
抱き上げられたことが相当嬉しいようで、俺の首に腕を回してはしゃいでいる。
「このくらいなら俺だって出来るんだよ!さて、案内頼むよ!振り落とされないよう、俺のマントをしっかり握りしめてろよ」
「「うんっ!!」」
ただ、抱き上げた兄弟は見た目よりかなり軽く、痩せこけている。
もしかして、この子たちは・・・・・・・
「レイン!一個小隊と共に多くの物資を持って俺が行く方へ来い。物資の選定はお前に任せる!ただ食料を多めだ!殿下たちはこちらの対処を!シュタイン団長、殿下たちをお願いいたします」
「了解した!スイレン団長も気をつけてくれ!」
騎士団全体で俺に敬礼を贈る。その光景を見た兄弟たちは、俺の代わりに敬礼を返してくれた。
殿下たちの表情は見えなくとも、優しく笑ったのが気配でわかる。
そして、鈍い温かみが下腹部を満たすのだ。
興奮する民衆、それを宥めようとする我が騎士団。
怒号が飛び交う中、一人の男が俺に気付いた。
「あああっ!テメーは異世界からきた無能じゃねーかっ!!」
その男の大声で、一気に俺に視線が集まる。
だが、一人の女が
「で、でもっ!団長を示すマントとエギュレットがあるわ!!」
「はぁっ!?フィルハートは狂ったのか!?」
ビキッ
「あんな優男っ!国を救えるわけないじゃないっ!!」
ビキキッ
「あんな男を団長にするなんてフィルハートもたいしたことねーな!」
ビキキキッ
ドッと笑いに包まれる市井。
俺は怒りを通り越して、顔から表情がなくなった。
それに気づいたレインが小さく「ひっ!」と漏らす。
「フィルハート騎士団、こいつらの面倒はどうでもいい。後回しだ。助ける必要もないくらいこの国の民は愚劣だったってことだ」
「す、スイ団長・・・・・・・・」
レインが俺を気遣おうとするも、俺の威圧に後ずさる。
それを片目で捕えると、片端に小さな2人の子供がこの非常識な輪から外れる位置に立っていた。
遠くだが目を凝らして見ると、衣服は汚れ、髪はザンバラで、身体は痩せこけているのがわかる。
俺はその子たちの目の前に一瞬で立って見せた。
「君たちはどうしてここにいるの?」
俺はなるべく怖がらせないように、優しい声で問うた。
兄弟なのだろうか、小さい子の方が大きい子の背中に隠れてしまった。
背中を使われてしまった男の子は、俺が怖いのだろうか、小刻みに震えている。
「大丈夫、大丈夫だよ。お兄ちゃんは何もしないから」
「・・・ほんと?」
「うん、嘘はつかないよ。あっ!たまには言っちゃうけどね」
「ぷっ!騎士様面白いね・・・・・あ、あのね、父ちゃんと母ちゃん、動かなくなっちゃった!助けてっ!皆死んじゃう!」
「・・・・・・・うん、そこまで案内してくれるかい?」
「助けてくれるの?」
「お兄ちゃんが出来る範囲ならね。ほら、お兄ちゃんに捕まって!」
俺は左右の腕にこの兄弟を抱き上げると、
「うわっ!すげーーーーっ!父ちゃんにもしてもらったことない!」
「兄ちゃんっ!高いよっ!」
抱き上げられたことが相当嬉しいようで、俺の首に腕を回してはしゃいでいる。
「このくらいなら俺だって出来るんだよ!さて、案内頼むよ!振り落とされないよう、俺のマントをしっかり握りしめてろよ」
「「うんっ!!」」
ただ、抱き上げた兄弟は見た目よりかなり軽く、痩せこけている。
もしかして、この子たちは・・・・・・・
「レイン!一個小隊と共に多くの物資を持って俺が行く方へ来い。物資の選定はお前に任せる!ただ食料を多めだ!殿下たちはこちらの対処を!シュタイン団長、殿下たちをお願いいたします」
「了解した!スイレン団長も気をつけてくれ!」
騎士団全体で俺に敬礼を贈る。その光景を見た兄弟たちは、俺の代わりに敬礼を返してくれた。
殿下たちの表情は見えなくとも、優しく笑ったのが気配でわかる。
そして、鈍い温かみが下腹部を満たすのだ。
0
お気に入りに追加
209
あなたにおすすめの小説
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
僕は前世の知識を生かしのし上る……はず?
りまり
BL
僕は生まれた時から前世の記憶がある。
前世では40歳で交通事故にあい死んだのだが、僕は本を読むのが好きでいろいろなジャンルの本を読みあさっていた。
現世では公爵家の三男に生まれたので跡継ぎでもスペアでもなく自分でのし上らなければ爵位もないと言う悲惨な状況だった。
ならばと剣術を習い、前世で習った体術を生かし騎士となるべく奮闘する
気づいて欲しいんだけど、バレたくはない!
甘蜜 蜜華
BL
僕は、平凡で、平穏な学園生活を送って........................居たかった、でも無理だよね。だって昔の仲間が目の前にいるんだよ?そりゃぁ喋りたくて、気づいてほしくてメール送りますよね??突然失踪した族の総長として!!
※作者は豆腐メンタルです。※作者は語彙力皆無なんだなァァ!※1ヶ月は開けないようにします。※R15は保険ですが、もしかしたらR18に変わるかもしれません。
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる