上 下
32 / 214
第一章

31.スイの力

しおりを挟む
闘技場に皆が集まったのだが、ええ、集まったのが王族だけでなく、騎士たちまで見物に来ているのだ。
全く!!訓練をサボりやがって!
ジョギングの距離延ばしてやる!
「それでは、召喚します」
俺は両手で印を組み、
「我を支えし神々よ、我の声が聞こえたならば門を開き、顕現されよ」
組んだ指の前に、吉相体で描かれた特大の判子のようなモノが現われる。それを地面に押しつけると、その円が光り、中から飛び出してくる、神獣様。
皆の驚く顔が照らされて、正直面白い。
『おい、スイ!呼ぶのが遅い!待ちくたびれたぞ!!』
『こっちの世界の空気を味わわないと、本領発揮出来ないだろうが!』
『全くだ、スイレン。麒麟様なんて怒っておいでで、手が付けられないのだ』
『それなのにこっちに来ないなんて、天邪鬼なお方です』
白い虎、赤い鳥、青い龍、緑の亀。
そして、巨大なお姿。
「・・・・・・・うん、皆元気だね。というか、等身大で出てくるなんて思わなかったわ。やはり闘技場借りてよかった」
彼らの姿は大きすぎて、俺からギャラリーが全く見えない。
向こうとしても見えないだろう、俺がどこにいるのか。
「あの~~親しみやすい大きさになってくださいません?」
『ちっ!頼み事の多い奴だな』
舌打ちされたっ!
それでも言うこと聞いてくれるから、さすが物わかりの良い神々だ。
普通の虎サイズなどになって、ギャラリーがよく見える。
泡を吹いて卒倒している者までいる。
ジオルドとジルフォードなんてあんぐりと大口を開けて固まっているし、アルバートたち団長は直立不動、副団長ズは情けなくもへたり込んでしまっている。
「なんか、ごめん?」
謝る必要ないのに、謝ったのは仕方ないことじゃないか?
『スイ、この世界は『精霊』で溢れているのだな』
「え、あ、そうなんだ。この世界の加護は『精霊』から与えられるものらしい」
『へ~~で、スイ、お前誰かと性行為したのか?匂うぞ、お前以外の人の匂いが。それも、二人?』
「っ!!!嗅がないで!白虎!というか、青龍!首を絞めないで!苦しい!!」
『ん~この匂いは・・・・・・・・あそこかっ!!』
白虎は空を駆け、そして、ジオルドとジルフォードの前に降り立った。
『おお、この匂いだ。ふんふん。ん?んんんん??』
『白虎も気付いたか?』
『朱雀もか?これはもしや』
『ああ、もしやだな』
ジオルドたちは白虎たちに俺の前まで連れてこられた。
「す、スイ!?一体・・・・・・」
「ははは、紹介すると、白い虎が白虎、赤い鳥が朱雀、青い龍が青龍、緑の亀が玄武。で、後もう一体の神獣様から加護を与えていただいているんだけど、超シャイな方で」
「じゃなくて!あまりに神々しすぎて、私たちどうしたらいいの?」
「普通で良いって。ところで、何が『もしや』なの、白虎、朱雀?」
『ああ、お前らの中に同じ力が存在している。精霊女王から何か授かったな?』
「「「っ!!!!!!!!!!あれ、精霊女王だったの!?」」」
知らなかったわ~~、ま、会ったことないから知らなくて当然なんだけど。しかも、声だけだったし。
『スイ、お前、この二人と交わることで、精霊の子を孕むようになっているぞ?』
「はっ?はぁぁぁぁぁぁっ!つか、勝手っ!勝手すぎ!!」
『ん?了承も何も得ずに勝手にこの力を押しつけられたのか?』
「そうなんだよ!!つか、姿も現してないんだけど!!」
『なんとっ!!それは我らが怒っておこう。しかし、それは産むまで消せぬ。せいぜい頑張れよ』
「人ごとかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
俺が絶叫しているのに、傍らでは、
「私たちの子・・・・・・超可愛いだろうな」
「だろうな。どちらに似るのか楽しみだ」
嬉しそうに話している殿下たちに「精霊の子だから」と言って止める気力は全くない。
ただ、「親ばか」になるのは間違いない。
『スイ、そろそろ私は子供たちと遊んできても良いよな?』
「あ、怖がらせないようにな」
『心得ているわ!』
白虎は女性に抱かれている子供に近づき、鼻を寄せる。子供は泣くこともなく、恐る恐る手を伸ばし、そっとひと撫でする。その感触が気持ちよかったのだろう白虎は子供の手に頭を擦りつけて甘えている。その行動に「白虎は優しい虎さん」と印象づけられたようで、他の子供たちにも沢山撫でて貰っている。白虎は大の子供好きなのである。
それより注意しないといけないのが・・・・・・・・・・・・・・・。
既に遅かった。
朱雀は空へ飛び立ち、悠々と空を他の鳥たちと共に飛んでいる。あの真っ赤な体躯で、長い尾を持つ神の姿を一般の人に見られるわけにはいか・・・・・いや、いいや。この国の鳥、朱雀と似たり寄ったりの姿だわ。
煌びやかさではこちらの世界の鳥の方が鮮やかだ。神々しさは、もちろん負けないが。
『スイ、あっちから美味そうな野菜の匂いがする』
と、玄武が向いた方向は、第一騎士団の農園だった。
あれから何故か土と水属性の騎士たちが訓練も兼ねて、第一騎士団の畑で植物の世話をし始め、段々と畑が大きくなりついには「農園」となったのだった。
それにこの世話に参加した騎士たちは、格段に精霊の加護が強まっている。自分たちでも変化がわかるらしく、普通の訓練もいっそう励むようになったのだ。
だからといって、他の属性も手を抜いていたわけではないからな。
「あとで行ってみるか?玄武が食べたいもの結構あると思うぞ?」
『うん、連れて行って』
と、言ったきり甲羅の中に入り込んで、寝てしまった。
ん、寝る?
「うわっ!青龍もここで寝ないで!寝るくらいなら俺の相手してよっ!」
『ん?んっ!スイレンの相手か!?久しぶりだな!喜んで相手をしてやろう!怪我しても知らんからな!』
「ぐっ!怪我しないよう頑張ります。負けっ放しだからな~~。今も勝てる気は全くないけど」
『神に人間が勝とうなど笑止!でも、お前相手には手加減はできんからな~。たいした人間だ』
「元、超特級な人間兵器ですから」
『自分でそのようなことを言うでない』
「うん」
神獣様は俺が自分で「人間兵器」と言うのを嫌う。言う度に優しい声で窘めてくれる。
俺を心配してくれるのは、神様だけだった・・・・・・・。
だけど、今は違う!
この国は俺が強くして、護る!
そのためには、俺の力を見せる必要がある。
だから、青龍に相手を頼んだのだ。
『スイレンの大切な者たちよ。観覧席に戻っておれ。さもなくば、死ぬぞ?』
「「っ!?で、でもスイは!?」」
『スイレンは死なん。私たちがこの子を殺すことは絶対にない。寸前まではいくかもしれんが』
「えええええええええええええええっ!今回もそこまで俺をボコボコにするの!?」
『あったりまえだ、バカモン!お前最近弱くなっておろう?力の色が淡くなっておるわ!』
「・・・・・・・・・たるんでるのは俺か・・・。うっし!ボコボコにしちゃってください」
『あい、わかった。玄武!この二人を連れて、観覧席に結界を張ってくれ』
『ん~~~~、わかった。ほどほどにね』
『ああ、判っている』
玄武は身体の大きさを変えて、二人を咥え、王族の観覧席にドスンとその二人を落としたのだった。
「一応、この国の王子なんだけど・・・・・・」
『知らん。知らぬ間に我ら(・・)の(・)スイレンをモノにしおって!』
「あは、あははははは・・・・・俺も悪いです、ごめんなさい」
と、言いつつも玄武が結界を張り終わったことを感じ取ると、すぐに俺は青龍に蹴りを食らわすが、足をとられ放り投げられる。
放物線を書いている間に戦輪を打つが受け止められて、もちろん俺に返される。それを難なく受け取って、次の武器を打つが全て躱される始末。
細く長い鋼、鋼糸を青龍に向かって放ち捕えようとするが、その強靱な皮膚で護られた手で鋼糸をたぐり寄せ、俺の腰を捕まえ捕えたのだ。
「くそっ!!」
『ほらな?この程度までスイレンの力は落ちているぞ?こんなに簡単に捕まることなかったのになぁ?』
ドゴッ!!
と、音がするくらい腹に蹴りをめり込まされて、俺は壁まで吹っ飛んでいく。
ゴンッガラガラ
俺が壁にぶつかった後に一部が崩れる音が闘技場に響く。
もちろん、俺だって無傷なわけがない。
「ゴホッ!あがっ・・・っ!!」
口の中を血が舐めるように覆い、それを吐き出す。
肋骨何本と内臓が一部損傷か?
人間兵器の俺がへたばるわけにはいかない。
額も切れているのだろう、地面にボタボタと血を落としながら、力の入らない足を奮い立たせて立ち上がろうとしても、どうにも無理で。
『お前は弱くなった。理由は、お前を無条件で護ってくれる人間が出来たからだ』
「・・・・・うん」
『わかっていたのか?それなら良い。はは、良い傾向だ。お前が蔑ろにされる世界なんてどうでもいいが、スイレンが幸せで弱くなるのなら、我らに文句はない』
「うん」
『だからだ・・・・・・・・。おい、そこの王子とも!スイレンを一生大切に護れ!でないと、今すぐこいつを我らの世界に連れて行くからな!』
いつの間にか結界は解かれ、青龍の横に白虎、朱雀、玄武が並び立つ。
その威厳は俺でも平服するほど、強い!!
それにも負けず、ジオルドとジルフォードは二人で
「当たり前です!まだスイより弱い我々ですが、スイの盾になって護る事を誓います!」
「俺たち家族の恩人で、大切なスイをどんなことからも護り抜きます!!」
二人の言葉に会場中が喝采をあげる。
サーシャ様は・・・・・・・ここから声は聞こえないが、口の動きから
『きゃー!!お嫁さんをください宣言!!ああ、私の子たちにあんなに可愛い子が!!結婚式のドレス仕上げなきゃ!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃ、ねーよ、サーシャ様。
感動から、一気に現実に戻され、肩を落とす俺に、
『スイレン、お前は何をしている?あ、傷を治してやろう』
『治してやろうって、私が治すのですよ、青龍』
『ま、水の力の玄武の役目だからな~。それにしても、そこまで酷い怪我久しぶりだな』
「お前がしたんだろうが!悉く、俺の武器から逃げやがって!ぅぐぅっ!!」
『大人しくしてください、スイ!』
「ごめん、玄武」
彼が手を翳すだけで、俺の身体どころか衣服まで元通りに戻った。
『ま、こちらの空気も知れたことだし。俺らの加護は充分にスイに与えられるな』
『白虎、それより私たちは戻り次第精霊女王に文句を言いに行かなければ!』
『あったりまえだ!姿を見せず、我らの大切に育てた子を勝手に孕み腹にするなんて!』
『精霊界を燃やさないでくださいよ、朱雀。麒麟様に怒られるのは嫌ですから』
「は~~痛かった!この痛み久しぶりで、超強烈だった!さてと!俺の力も見せられたことだし、というか、負けたところを見せただけか?さ~お開きだ!この様の俺を見て勝てると思った騎士たちは今俺に挑んでこい!」
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
誰も挑んで来ませんでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

【R18】清掃員加藤望、社長の弱みを握りに来ました!

Bu-cha
恋愛
ずっと好きだった初恋の相手、社長の弱みを握る為に頑張ります!!にゃんっ♥ 財閥の分家の家に代々遣える“秘書”という立場の“家”に生まれた加藤望。 ”秘書“としての適正がない”ダメ秘書“の望が12月25日の朝、愛している人から連れてこられた場所は初恋の男の人の家だった。 財閥の本家の長男からの指示、”星野青(じょう)の弱みを握ってくる“という仕事。 財閥が青さんの会社を吸収する為に私を任命した・・・!! 青さんの弱みを握る為、“ダメ秘書”は今日から頑張ります!! 関連物語 『お嬢様は“いけないコト”がしたい』 『“純”の純愛ではない“愛”の鍵』連載中 『雪の上に犬と猿。たまに男と女。』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位 『好き好き大好きの嘘』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高36位 『約束したでしょ?忘れちゃった?』 エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高30位 ※表紙イラスト Bu-cha作

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

【R18】ひとりで異世界は寂しかったのでペット(男)を飼い始めました

桜 ちひろ
恋愛
最近流行りの異世界転生。まさか自分がそうなるなんて… 小説やアニメで見ていた転生後はある小説の世界に飛び込んで主人公を凌駕するほどのチート級の力があったり、特殊能力が!と思っていたが、小説やアニメでもみたことがない世界。そして仮に覚えていないだけでそういう世界だったとしても「モブ中のモブ」で間違いないだろう。 この世界ではさほど珍しくない「治癒魔法」が使えるだけで、特別な魔法や魔力はなかった。 そして小さな治療院で働く普通の女性だ。 ただ普通ではなかったのは「性欲」 前世もなかなか強すぎる性欲のせいで苦労したのに転生してまで同じことに悩まされることになるとは… その強すぎる性欲のせいでこちらの世界でも25歳という年齢にもかかわらず独身。彼氏なし。 こちらの世界では16歳〜20歳で結婚するのが普通なので婚活はかなり難航している。 もう諦めてペットに癒されながら独身でいることを決意した私はペットショップで小動物を飼うはずが、自分より大きな動物…「人間のオス」を飼うことになってしまった。 特に躾はせずに番犬代わりになればいいと思っていたが、この「人間のオス」が私の全てを満たしてくれる最高のペットだったのだ。

処理中です...