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第一章

17.コントと差別

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「とりあえず、朝5時に城門前に集合。ジョギングしながら、ついでに俺に街の事を教えてくれ。早朝だから人は少ないだろうが、どんな所か見ておきたいからさ」
「いいだろう。それにその時間だと朝市とかち合うから、朝食をそこで取るのも良いかもな?」
「あ、団長それいいですね!食堂の朝食はいつも同じメニューなので飽きていたのです!」
「お前の気持ちは痛いほど分かる」
第一騎士団の会話を皆して頷く。確かに代わり映えしない食事はただの栄養源でしかなく、美味しく食べることができない。今まで朝市で食べようとは思わなかったのか?
「スイ、誰でも睡眠に重きを置きますよ・・・・・・」
あ~なるほど。しかしな、
「朝食は大事だぞ!一日の身体の資本だからな!ま、明日はその朝市に行って食べよう!俺もこの世界がどんな物食べているのか知りたいからな!」
ちょっと、いや、かなり楽しくなってきた。と、その前に、
「第一騎士団の二人には精霊に戻って貰う」
「「は???」」
当然、二人からもましてや外野からも「何で」という目線と声をいただくわな。
「もちろん体幹は鍛えるため、ジョギングはしてもらうが、貴方たちに足りないのは『精霊との会話』だ。ということを、貴方たちの傍にいた精霊たちが俺に訴えて、あ、こら、痛いっ!」
精霊が『いらないこと言うな!』と俺の髪の毛をいろんな方向に引っ張る。地味に痛い。しかも、多数の精霊が引っ張るものだから頭全体がマジで痛い。
そして俺の髪の毛がピンピンと引っ張られている光景を見て、
「本当に精霊がいるんだな」
と納得していた。
「ま、それは明日ジョギングの後で、アラベスク団長が世話をしているという畑に案内してよ?そこで原因と強くなる方法がわかるからさ!」
「畑?そこでどうやって強くなるんだ?」
「ま、それは明日の畑次第。で、他の皆は精霊たちに戻っては貰わないからな!覚悟しとけよ!」
「ぐっ!一体俺たちはどうなるんだろうな、レイ?」
「ははは。ヴォルフ生きてますか?」
「ははははははははは。つか、明日生きてんの俺?」


一通り明日の打ち合わせが終了した頃、ジオルドとジルフォードが戻ってきた。
「お、あのバカ以外揃ってるじゃないか」
「ジオルド、それはオーバカレイに失礼だ」
「いや、ジルほどではないだろう?」
「いやいや、ちゃんと名前を入れてやっただけでも慈悲があると思うけど?」
と、軽い言い合いに俺は「どっちもどっちだ」と小さく突っ込みを入れた。
「で、何を企んでるんだ?」
俺の背後に回って、いちいち抱きしめるのは止めて貰いたい。暑苦しい、主に筋肉がっ!俺はそれを邪険に払うとヴォルフに「すげ~度胸」と何故か感心され、それで思い出したが、ジオルドは王子だった。本当に綺麗にさっぱりと忘れ去っていた。だが、本人は全く気にしてなくて、逆に喜んでいる姿がキモイ。
「殿下、スイの住居はどこになりました?通常でしたら我々と同じ場所になるのですが」
「ああ、スイは私の部屋「えっ、それ普通に嫌だけど?」
ジオルドが何を言うかわかったので遮ってやったら、口を開けたまま固まってしまった。つか、嫌だろう、普通に?
「プライベートがないの誰だって嫌だろう?夫婦でもないのに。つか、異例はなしだ。王族がそんなんじゃ、示しが付かないだろうが」
「ス、スイ・・・・・もう少し殿下を慮ってくださっても・・・・・・」
「知らん。特別扱いは嫌いだ。順序っつもんがあるだろうが」
「スイ・・・・・殿下が使い物にならないから、少しで良い優しい言葉をかけてやってくれないか?」
完全に固まってしまったジオルドに何故かご乱心したジルフォードが「兄上ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」と叫びながら、ガクガクと揺さぶっている。首取れそうだけど、あれ大丈夫か?
「は~仕方ないな。休みの日は一緒にいてやるから、それで満足しろよ」
後ろに突っ立っているジオルドの手を掴んで、引き寄せ、軽く頬にキスを落とすと、固まっていたのが嘘のように俺の顎を固定し、息も出来ないほどの口づけを皆の見ている前で披露させられた。


「はっはっは!まさかこの私が、はっはっは!」
「知るかっ!」
ジオルドの頬には大きな紅葉ができあがっている。
「殿下、スイに拳で殴られなかっただけでもよかったですよ。この程度で済んだのですから」
レイが冷やしたタオルで腫れを取ってやっている。
俺は、ジルフォードの傍に避難中。こっちは兄を冷たい目で見下ろして、
「ジオルド、さすがに俺でも引くわ・・・・・・・。暫くスイとの接触を禁止してやろうか?」
おおお、俺の殿下超格好いいんですけどぉぉぉぉ!
「それは駄目だ!スイ不足になる!仕事が出来なくなって俺が困る!」
「いや、お前を困らそうとしてるんだけど?」
「はっはっは!・・・・・・・私が悪かったから許してくれ」

「なぁ、俺たち何のコント見せられてんの、ユーステス」
「知らない。つか、知りたくねーよ、ね、団長?」
「・・・・・・・・。すごいな第三・第四騎士団の仲の良さ」
「「はぁ、ま、そうですね・・・・・・・」」
俺たち置いてきぼりじゃね?なのは、この際どうでも良くて、あれ、アルバート団長は?と探すと、一人黙々と執務を熟されておりました。

「それはそうと、スイ。城の中を案内するから行かないか?と言っても俺も詳しいわけではないから、ジオルドたちに案内を頼まないと駄目なんだけど」
とジルフォードが提案してくれたので、もちろんそれに飛びつかないわけがない。
本来俺が勤める執務室は、なんと第三騎士団の隣で、しかも、部屋の中から行き来ができるというなんとも都合の良い構造だ。
他には食堂や衛生室、他の騎士団の執務室や経理課など覚えきれないほどの部屋を案内され、最後に訓練場へと連れてきて貰った。
そこには、何やら不穏というか何というか・・・・・・・。
「スイ、すみません。本来はこんなことがあってはならないのですが、騎士の中には差別が蔓延しているのです」
レイフォードが恥ずかしそうに言う。
「何度も糾そうとしたんだが、昔からの差別の名残が根強くて、どうにもならないんだ」
アルバートの口調は諦めが混じっている。
「スイ団長、大きく場所を取って訓練しているのが騎士団に所属している者で、隅に追いやられている者が騎士ではある者の『不要』の烙印を押された者たちです」
ユーステスが大きく陣取っている者たちを憎々しげに見ている。
「ユーステス、副団長なのだからわきまえなさい」
「すみません、団長」
ユーステスは一応謝罪はするものの自分の意志は曲げていない。
「スイ団長、ユーステスは騎士団の中で一番差別を嫌い、行動に移した者なのです」
ヴォルフがユーステスの背中を優しく摩る。
「ユーステス、うん、良い奴だな、お前は。だからこそ、明日精霊たちを君に戻せるんだ。君のその心はそのままであってくれ」
「はっ!」
何故かヴォルフまで俺に敬礼をする。ま、いいか。
「だが、騎士団に所属しておきながらこの程度・・・・・。情けない!それに比べて・・・・・・」
俺は奥の隅で剣技を磨いていた一人の銀髪の男性に声をかけた。
「貴殿に本日付で、第四騎士団副団長の任を与える。反論は許さん。俺に付いてこい」
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