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第一章

15.侮辱

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俺はジオルドとジルフォードの案内で、これから行う闘技場へと足を運び入れた。
闘技場は円形で、コロッセオと似ている。
王族の観覧席には俺を連れてきた王子殿下二人以外の方々がワインを嗜んでいるお姿が見える。
ワイン美味そう・・・・・。という、羨ましい気持ちは絶対にないからな!これ重要!!正直それどころではなくて、マジで緊張する。
「そういえばスイはマントの色が黒なの気づいてる?」
「ん、あ、そういえば、ジオルド殿下の第三騎士団は金色ですね」
今更ながらに気がついた。
「インナーとマントは騎士団の色で分けてある。ついでにマントは王子、団長と副団長のみの着用で、王子はその騎士団色のサッシュ、団長は金色のエギュレットの違いがある。あとインナーとマント、サッシュの刺繍だが、これは対になる加護の色で編むことになっている。我々第三騎士団は私の加護「光」で地は金色だが、刺繍は対の「黒色」だ。第四はその逆だ」
「なるほどなるほど。それで団分けされているのですね」
闘技場を見渡すと、観覧席には色とりどりのインナーが見て取れる。
赤に青、緑に茶。
お、女性もいるんだな!
つか、
「すげ~~人!すんげ~~緊張してきたわ」
「俺の騎士団団長が緊張してどうする。どんと構えろ」
「ジルフォード殿下、俺こんなに見られること今までなかったんですよ?緊張するなって方が無理!」
「俺だってない。だが、王族としての矜恃で今ここにいる。正直慣れていない俺だって緊張で震えているが、ジオルドに情けない姿見られたくないからな」
「はっはっは。大丈夫だ!私も緊張している!ここまでの観客、私だってない!!」
どどーーーん、と胸を張って威張る姿は、正直情けない。
「ん?というか、殿下たちあっちの席じゃなくていいのか?」
今更だが、どうして二人が俺の案内をしてくれたんだろうか。王族なら安全席で見守っているのが当然ではないのか?
「本当に今更だな。私はスイを倒すために参加する!ジルはスイから技を盗むために傍にいる。以上!」
「い、ば、る、なっ!てか、怪我しても知らないからな!あ、ジルフォード殿下は俺の近くにはいないでくださいね。俺の上官に俺自身が怪我を負わせるなんて、そんな馬鹿なことあってはならないですから。ジオルド殿下は覚悟していてください。完膚なきまでに伸してさしあげますから?」
にっこり、と少し怒りを込めた笑みをジオルドに向けると、たじろいで「ほ、ほどほどでお願いします」と何とも情けない切り返しをいただきました。

闘技場中央部に行くと、威風堂々の騎士団長および副団長が俺の力量を試そうと息巻いている。ただ、蔑みの視線もいくつかある。
ま~異世界から来た野郎がいきなり団長になんだから、仕方ないとして。
「では、これより騎士団毎に対戦を「ちょっと待ってくれ、審判!」
と、ジオルドが止めに入った。
「各団毎にスイと対戦しても我々の負けが見えている。恥は承知だが、我々全員でスイに挑ませてくれないか」
「「「っ!!!!!!!??????」」」
会場中が一瞬凍り付き、ざわめきが起きる。
当然だ。対戦相手の方が「強い」と王子が断言し、そして全員でかからせてくれとは情けないにもほどがある。だが、ジオルドには俺の力量がちゃんと理解出来ているってことだ。
でも、やはり反発は起るのは必然。
「ジオルド殿下!!それは我々の力量をバカにしておられるのですか!!」
「いや、君たちは強い。だが、スイには勝てない」
「それがバカにしていると言っているのです!」
同調する声が観客席の騎士たちからも上がる。
ジオルド~~~自分の株を下げるようなことしなくてもよくね?俺手加減するの苦手だけど、頑張るから。力の差があるように見せないからさ、だからそんなに反感食らうようなこと言わないでおこうぜ?
「自分たちの力量もわからないのか?一人一人スイに挑んでも、手加減されるだけだ。手加減されて勝利を貰っても嬉しいのか?」
「我々の力が手加減されなければならないほど、彼の力が凄いと言うことですかっ!?」
もはや収拾が付かなくなってきている。俺は、ポツンと突っ立ったまま。ここで何か言おう物なら、これ幸いと俺を見下し、批判してくるであろう。面倒くさいことこの上ないので、この場は空気になろう。そうしよう!
「オークレイ第二騎士団長、ジオルド殿下の言い分が正しいと俺も思う。少しだが、スイの実力を見た。今の俺では絶対に勝てないこともわかった」
「はっ!アルバート如きが勝てなくても、私なら絶対に勝てる!あのようなひ弱な肉体を持つ異世界人に負けるはずがないだろう!」
失礼だな~、全く。お前には俺の10分の1も力ないのにさ。
「オークレイ!私のスイと騎士団長を侮辱するとは!そこまで言うのなら、スイ!この者と闘ってくれないか?それも超絶に手加減してだ!」
おいおいおいおい、俺に話を振るなよ。空気になっていたのに!つか、どさくさに紛れて「私のスイ」って言いませんでした?
俺は一呼吸して、
「殿下の命令とあらば。しかし、手加減とはどの程度でしょうか?」
「ちょっと待ってスイ。あ、ごめん私が間違えたな。大怪我をさせない程度で頼むよ」
「はぁ、じゃあ、私は武器を使用しません。術も使いません。体術だけでお相手しましょう」
俺はマントがついたジャケットを脱ぎ、武器を脇に控えていた審判に渡し、インナーだけになった。ついでにこのインナーはノースリーブでピッタリと肌に密着するタイプなので、服の中に武器が隠されていないことが観衆にもわかる。
「え、スイ?そこまでしなくてもいいんだけど?」
「???ハンデにならないではないですか?」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
フルフルと第二騎士団長は怒りに震え、
「バカにするのも大概にしろっ!」
と怒鳴り散らし、合図もないまま俺に突進してきたのだ。
剣に風の加護を纏わり付かせながら。
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