なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

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  屋敷の前に戻って来た。
  クラウスが私に話し掛けて来た。

「バラの花を見ながら、今からお茶を飲まないか？  少し話したい事がある」

「分かったわ」

  リーベル家の使用人が手早く用意をしてくれたので、私達は今、バラの花を見ながらお茶を飲んでいる。

「すまなかった」

  いきなり謝罪をしてきたクラウスに、私は理解が出来なかった。

「俺が精霊エミリア様の事を父上に報告をしたから、会えなくなってしまったのかもしれない」

「えっと……リーベル公爵が精霊エミリア様に会いに行ったってこと？」

「そうだ。父上は精霊エミリア様に会いに行ったけど会えなかったらしく、今度陛下と一緒に行く約束をしている」

「クラウスは悪くないわ。リーベル公爵家の人間として、精霊エミリア様の事を報告をする義務があるもの」

  クラウスは、複雑そうな顔をしていた。

「けれど、精霊エミリア様に会えなくなったのは俺のせいだよ。ごめん」

「クラウス……気にしなくていいわ。元々、精霊エミリア様は静かに暮らしたかったのよ。いつかはこうなっていたわ。それに別れの挨拶も出来たじゃない」

  クラウスの顔は、少し穏やかなものとなっていった。

「リリアーナ、ありがとう」

  クラウスの言葉を聞き、私は笑顔になった。

「ふふ。私からも報告があるのよ」

「なんだい？」

「ジャック様が、オリヴィア様と婚約をしたのよ」

  クラウスがかなり驚いた顔をしていた。

「ジャック様が？  オリヴィア様？  オリヴィアさんではなくて？」

「そうそう。オリヴィアさんは、オリヴィア様だったのよ。オリヴィア様は、ルシアン様のお姉様だったの。オリヴィア・グリデーラ様よ」

  クラウスの顔は、驚いたままだった。

「な、なんだって？」

「だからルシアン様のお姉様だったのよ。ジャック様は、グリデーラ家に婿入りするのよ」

  クラウスの顔はしばらく驚いていたが、やっと落ち着いてきたようだった。

「だから、騎士を辞めてしまうの」

「あんなに頑張っていたのに……やっとなれたのにか？」

「今のジャック様には、騎士として働くよりも大切なものが出来たのね」

  クラウスは、穏やかな顔をしていた。

「そうか。なんだか、分かる気がするよ」

  私はクラウスの言葉を聞いて微笑んだ。
  クラウスが、話しを続ける。

「ユリアスが不貞腐れそうだな」

「どうして？」

「騎士になって、ジャック様と一緒に働きたい。と言っていたから」

「なるほど。ユリアス様なら分かってくれるわよ」

「きっと、そうだな」

  それから私達はバラの花を見たり、おしゃべりを楽しんだ。