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「アネモネ、婚約おめでとう!」

  アリスは笑顔で私を迎え入れてくれた。

「ありがとう」

  今は紅茶を飲んでほっとひと息。シロンちゃんは好みの木の実を食べると、眠ってしまった。

「アリス……あのね。ロイアン様との婚約を無かった事に出来ないかしら……」

「どうして?  もったいわ」

「そうなの。私では……。ロイアン様には他に素敵な女性がいると思うの」

「うまくいってないの?」

  私は少し考え込んだ。

「手紙はくれるけれど……婚約してからは一度もお会いしてないわ」

「不安になってしまったのね」

  アリスはきっとそうよ。と言って、時間が解決をしてくれるわ。と言っていた。

  本当にそうなのだろうか……?
  不安と言うよりも、そもそも私達の間に愛だの恋だのと言う感情は無い。
  ロイアン様はもしもあの日の事が、外に漏れた時の場合の為に私と結婚をしてくれるだけで、私達の間にそんな甘い感情は無いのだ。

  けれど、あの日の事をアリスに話す事は出来ないし、ロンはロイアン様だったの。なんて事も言えない。

  どうしても、今の気持ちのまま結婚をしたくないと思ってしまう私が居る。

「婚約を解消をする場合は、慰謝料とか高いかしら?」

「そりゃ、侯爵家でしょう?  慰謝料どころか、社交界でも少し気まずくなるのではないかしら?」

「そうよね。我が家の資産が減ったら、セシルお兄様のお嫁さんが見つから無いかも知れないわね……」

「ちょっとばかしお金が無くてもセシル様ならお嫁さんの一人や二人、すぐに見つけてくるのではないかしら?」

「アリス……お嫁さんは一人でいいと思うわ」

「まあ、そうね」

  アリスはケラケラ笑っていた。
  アリスは急に真剣な顔になった。 

「アネモネ……あまり思い詰めては、いけないわ。結婚をしたら毎日会えて幸せーってなるんだから。もっと、気楽ね」

「……ありがとう。アリス」

  アリスは私達が好き同士で婚約をしたと思っているようだ。
  けれど、実際は全然違う。
  ロイアン様は仕方なく私と婚約をしたのだ。
  仕方なく婚約をしてもらえた女は、果して幸せになれるのだろうか?

  近いうちにロイアン様と町で会う約束をしている。
  その時に、無理に結婚の話を進めなくて良い事を伝えよう。
  別に私は結婚をしなくてもいいのだ。もともと、そういう予定だった。

  穏便に婚約を解消するように話を進めていって、慰謝料とかもいらないように話を進めて行こう。

  無事に婚約が解消出来れば、お気楽、楽々実家生活の実現も出来るかもしれない。
  とにかく婚約解消後は、いかにセシルお兄様に同情をしてもらえるかよね。

  可哀想なアネモネ……ずっとここに住んでいいんだよ。を、引き出せれば完璧よ。

  よし!  夢に向かって頑張るわ。

「アリス!  ありがとう!  なんか元気出てきたわ」

「良かったわ。いつでも相談に乗るわね」

  私はご機嫌でアリスの家を後にした。
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