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朝になった。
私が目を覚ますとロイアン殿下はネズミの姿に戻っていた。
ロンは私の顔の近くで丸くなって眠っている。
良かった。ネズミの姿に戻っているわ。
あっ、ロイアン殿下にしてみれば、良くないのか。
私がロンを眺めていると、ロンが目を覚ました。
「おはようございます。ロイアン殿下」
「おはよう。ロンと呼べと言っているだろう」
「そうでしたね。すみません……ん?」
「えっ?」
「な、なんで言葉を話しているのですか?」
「あれ? 何故だ?」
私は首を傾げた。
「ロイアン殿下……やはり、王宮に戻った方が……」
「ロンだ。嫌だ!」
わがままな王子様ね。
「ふー、ロン……とりあえず、ネズミの練習をしましょう」
「ネズミの練習?」
「人前で話したら王宮に連れて行かれますよ」
「それは困るな」
「では練習をしましょう。私が話し掛けても、チューしか言っては行けませんよ」
「分かった」
「チューです」
「チュー!」
「ロン、おはよう」
「チュー」
うん。これならなんとかなるでしょう。
「ロン、とても上手です」
「チュー」
そんなやり取りをしていると、メイドが私の部屋に入ってきた。
「おはようございます。お嬢様」
「おはよう」
「今日は起きていたのですね。では、お着替えをしましょう」
「着替え……?」
「ええ、いつも起きたら着替えでしたよね」
「そ、そうね」
私はロンをちらっと見た。ロンはさっと顔を背けた。
「ねえ、お願いがあるのだけれど……着替えの間はロンを箱の中に入れておいて欲しいの」
「箱ですか?」
「ええ、そうよ」
「ですが、箱ですと呼吸が苦しいかもしれません」
「では、箱に穴を……穴はいけないわ! 穴から覗くかもしれないわね」
「ネズミがお嬢様の着替えを覗くのでしょうか?」
「そうよ。へんた……何でもないわ。そうね……もう一人呼んで、一人は廊下でロンを見ていてもらいましょう」
「かしこまりました」
無事に着替えが終わった。
私は朝食を食べに居間に向かった。
「おはようございます」
「おはよう、アネモネ」
今朝はお母様しか居なかった。
お父様とお兄様はきっと忙しいのだろう。
私はお母様とロンと食事を食べた。
部屋に戻るとロンと二人で話し合いをした。
「ロン……本当に王宮に戻らないのですか?」
「この生活が気に入っているからな」
「そうですか……」
ならば、ずっとネズミのままでいればいいのに。
そんな事は殿下に向かって言えないのが残念よね。
「はあ……これからどうします?」
「よし! デートに行こう!」
「デート……?」
「町に行くぞ!」
ネズミとデートか……やっぱり、セシルお兄様に素敵な男性を紹介してもらおうかしら。
私はワンピースに着替えた。
ちょっと裕福な家のお嬢様風のワンピース。
ロンと一緒に王都の町に出掛けた。
馬車の中では、ロンを小さなかごに入れて私の隣に置いた。
二度と膝の上には座らせません。
私が目を覚ますとロイアン殿下はネズミの姿に戻っていた。
ロンは私の顔の近くで丸くなって眠っている。
良かった。ネズミの姿に戻っているわ。
あっ、ロイアン殿下にしてみれば、良くないのか。
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「おはようございます。ロイアン殿下」
「おはよう。ロンと呼べと言っているだろう」
「そうでしたね。すみません……ん?」
「えっ?」
「な、なんで言葉を話しているのですか?」
「あれ? 何故だ?」
私は首を傾げた。
「ロイアン殿下……やはり、王宮に戻った方が……」
「ロンだ。嫌だ!」
わがままな王子様ね。
「ふー、ロン……とりあえず、ネズミの練習をしましょう」
「ネズミの練習?」
「人前で話したら王宮に連れて行かれますよ」
「それは困るな」
「では練習をしましょう。私が話し掛けても、チューしか言っては行けませんよ」
「分かった」
「チューです」
「チュー!」
「ロン、おはよう」
「チュー」
うん。これならなんとかなるでしょう。
「ロン、とても上手です」
「チュー」
そんなやり取りをしていると、メイドが私の部屋に入ってきた。
「おはようございます。お嬢様」
「おはよう」
「今日は起きていたのですね。では、お着替えをしましょう」
「着替え……?」
「ええ、いつも起きたら着替えでしたよね」
「そ、そうね」
私はロンをちらっと見た。ロンはさっと顔を背けた。
「ねえ、お願いがあるのだけれど……着替えの間はロンを箱の中に入れておいて欲しいの」
「箱ですか?」
「ええ、そうよ」
「ですが、箱ですと呼吸が苦しいかもしれません」
「では、箱に穴を……穴はいけないわ! 穴から覗くかもしれないわね」
「ネズミがお嬢様の着替えを覗くのでしょうか?」
「そうよ。へんた……何でもないわ。そうね……もう一人呼んで、一人は廊下でロンを見ていてもらいましょう」
「かしこまりました」
無事に着替えが終わった。
私は朝食を食べに居間に向かった。
「おはようございます」
「おはよう、アネモネ」
今朝はお母様しか居なかった。
お父様とお兄様はきっと忙しいのだろう。
私はお母様とロンと食事を食べた。
部屋に戻るとロンと二人で話し合いをした。
「ロン……本当に王宮に戻らないのですか?」
「この生活が気に入っているからな」
「そうですか……」
ならば、ずっとネズミのままでいればいいのに。
そんな事は殿下に向かって言えないのが残念よね。
「はあ……これからどうします?」
「よし! デートに行こう!」
「デート……?」
「町に行くぞ!」
ネズミとデートか……やっぱり、セシルお兄様に素敵な男性を紹介してもらおうかしら。
私はワンピースに着替えた。
ちょっと裕福な家のお嬢様風のワンピース。
ロンと一緒に王都の町に出掛けた。
馬車の中では、ロンを小さなかごに入れて私の隣に置いた。
二度と膝の上には座らせません。
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