上 下
66 / 69

66. フタリカヤ村

しおりを挟む
 ふ? ふた? あー! いつの間にばれたんだろう。おばさんから手紙でも来たのかな? 手紙は隣り街まで行かないと出せないから大変なのに。いや、でもかわいい息子の為なら片道半日くらいはお安い御用なのかな。

「なーんだ。ばれちゃったのか。フタリカヤ村からおばさんが来るの。当日までジーンに秘密にしといて欲しかったんだけど」

「母さん? 母さんが来るだと?」

 ジーンはとても驚いた顔をしている。

「そうだよ。おじさんはお仕事で来られないみたい。私の父もだけど。おばさんと母とあとマイクが来るんだよ」

「えっ!? 金は? 宿泊費もかかるのに平気なのか」

「へっへーん。殿下に貰った金貨があるから大丈夫だよ」

「それはアイリーンのお金だろう」

 ジーンは戸惑った顔をしている。

「でも実家にほとんど送っちゃったし」

「おばさん達が使うならともかく、母はだめだって。ごめん働いたら返すから」

「いやいや。いいのにー」

 ジーンは絶対に返すからと言っている。まあいいか。魔法使いは基本高給取りだし、返せる見込みがあるのだろう。

「うーん。分かった。ありがとう。それで、ふた? がフタリカヤ村の話じゃないならなんだったの?」

「いや、もういいや。共存祭の当日は母さんを案内しなきゃだから忙しそうだなー」

「ふふ。マイクがジーンに会いたがっているみたい。良かったらマイクも一緒に回ってあげて」

 私の母はもちろん隣り街まで手紙を出しに行くことはなく、手紙を受け取り急いで読み慌てて返事を書き、配達員に渡したのだ。

 字の乱れ具合から私はそう予想した。

「お、おう。じゃあ、おばさんとアイリーンも一緒な」

「うん。それからシルフィーさんとユースチスくんも」

「ユースチスは今年も家族が来るんだって」

「そうなの。シルフィーさんも殿下が来るみたいだけど、短い時間みたいよ」

「そうなのか」

 寮に着くまで私達の話は続いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄の代償は

かずき りり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。 王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。 だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。 ーーーーーー 初投稿です。 よろしくお願いします! ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

溺愛親王と竜神さまの巫女

ななもりあや
恋愛
電車を待っていた時後ろから突き飛ばされたりん。 目が覚めたら平安時代風の時代へと転生していた。 表紙絵は絵師の葉月めいこさまに描いていただきました。

消えた隣人

うらら
ホラー
「消えた隣人」は、田舎町に引っ越してきた中村幸子が、隣人夫婦の不可解な失踪をきっかけに、町の闇へと引きずり込まれていくホラー物語です。

追放された聖女は半妖精に拾われて優しさに触れる

香木あかり
恋愛
「第一王子殺害未遂でリディア・クローバーを死刑に処する!」 ゴーシュラン王国の聖女であったリディア・クローバーは、謂われなき罪で死刑判決を下された。 (嫌よ、死にたくないわ……こんな無実の罪で処刑されるなんて!) 死んでしまうのだと絶望していた時、とある二人の人物の尽力で死刑から追放処分となる。 「いいかい?君は表向きは死刑となる。だが、実際は国外追放処分だ」 何とか王国を抜け出した彼女の前に半妖精だという一家が現れ、彼女の人生は一変する。 「ここで暮らすと良い。聖女だった頃のことは忘れて、ゆっくりしなさい」 慈愛に満ちた人々の優しさに触れ、リディアは明るさを取り戻していく。 しかし、リディアを謂われなき罪に陥れた者たちの陰謀に再び巻き込まれ、翻弄されていく。 (もう誰かに利用されるなんて御免よ。私は王国のおもちゃじゃないわ!) 半妖精や妖精の力を借りて、彼女は王国の陰謀に立ち向かう。 「さあリディア、行こうか。君を苦しめた奴を地獄に落としてやろう」 ※他サイトにも掲載中です。

無実の罪で投獄され殺された公爵令嬢は私です。今から復讐するから覚悟してくださいね。

しましまにゃんこ
恋愛
ダイナー公爵令嬢シルフィーは、聖女ユリアナを殺そうとしたという無実の罪を着せられ、投獄の上一族そろって処刑されてしまう。死の間際、シルフィーは自分と家族を殺した者たちに復讐を誓い、もし生まれ変われるなら、復讐を果たす力が欲しいと神に願う。 だがシルフィーは、虐げられる薄汚い孤児として転生していた。前世の記憶を取り戻し、力のない現状を嘆くシルフィー。しかし、そのとき彼女の胸に、聖女の紋章が浮かび上がる。 「ふふ、あはははははは!」 力を得た彼女の復讐が、今ここに幕を開けるのだった。 作品はすべて、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+さんでも掲載中、または掲載予定です。

さげわたし

凛江
恋愛
サラトガ領主セドリックはランドル王国の英雄。 今回の戦でも国を守ったセドリックに、ランドル国王は褒章として自分の養女であるアメリア王女を贈る。 だが彼女には悪い噂がつきまとっていた。 実は養女とは名ばかりで、アメリア王女はランドル王の秘密の恋人なのではないかと。 そしてアメリアに飽きた王が、セドリックに下げ渡したのではないかと。 ※こちらも不定期更新です。 連載中の作品「お転婆令嬢」は更新が滞っていて申し訳ないです(>_<)。

処理中です...