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32. 芋芋スペシャルたっぷりあんこのせ
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ある日の放課後。私はシルフィーさんと街に遊びに来ていた。
私達は今、飲食店が多く立ち並ぶ通りを歩いている。
「シルフィーさん。お芋のいい匂いがしますね」
「お芋の匂いはしないけれど、アイリーンが好きな芋のデザートがある飲食店があるわね」
「まあ。これは偶然。きっと私達はお芋の神様に導かれてここに来たのでしょう」
私は両手を握り合わせてシルフィーさんを見た。
「お芋の神様ではなく、アイリーンに誘導されて来たのよ」
「それはびっくり。私はきっとお芋の神様に操られていたのでしょう」
「茶番はいいからお店に入るわよ。お芋のデザートが食べたいのでしょう」
「おお。有難き幸せ」
私はシルフィーさんと赤い屋根の可愛らしいお店に入った。
中に入ると店員が二階のテラス席に案内してくれた。客が少ない時間のようで、他の客と間隔が空いている。
私はもちろん『芋芋スペシャルたっぷりあんこのせ』を頼んだ。
シルフィーさんはケーキを頼んだようだ。
「お待たせ致しました。紅茶二つと苺が乗ったケーキと、芋芋スペシャルたっぷりあんこのせでございます」
「わーい。ありがとうございます」
私が芋から食べるかあんこから食べるか、ちょこんと乗った苺から食べるのか迷っているとシルフィーさんの視線を感じた。
「どうかしましたか?」
「楽しそうねと思って」
「ふふふ。幸せです」
「そう。良かったわね」
「シルフィーさん。田舎の村にはこんなに素晴らしいデザートは無いのです。滅多に食べられないご馳走なのですよ」
私はお嬢様のシルフィーさんに、芋芋スペシャルを食べられる事がどれだけ幸せなのかについて語った。
途中呆れた顔をしていたような気がするが、きっと伝わった事だろう。
「そろそろ食べましょう」
「はい。いただきます」
私が芋を食べているとシルフィーさんの驚いた声が聞こえて来た。
「えっ」
「どうしたのですか」
「ケーキが半分…………ねぇ、あなたが食べたのかしら」
「いえ。私は芋芋スペシャルを食べていました。ケーキは食べていません」
私は全力で首を振った。
「違うわよ。アイリーンではなくて、このピンクの妖精さんよ」
「えっ?」
そこでようやくシルフィーさんのケーキの近くに、ちょこんとピンク色の妖精が佇んでいる事に気付いた。
私達は今、飲食店が多く立ち並ぶ通りを歩いている。
「シルフィーさん。お芋のいい匂いがしますね」
「お芋の匂いはしないけれど、アイリーンが好きな芋のデザートがある飲食店があるわね」
「まあ。これは偶然。きっと私達はお芋の神様に導かれてここに来たのでしょう」
私は両手を握り合わせてシルフィーさんを見た。
「お芋の神様ではなく、アイリーンに誘導されて来たのよ」
「それはびっくり。私はきっとお芋の神様に操られていたのでしょう」
「茶番はいいからお店に入るわよ。お芋のデザートが食べたいのでしょう」
「おお。有難き幸せ」
私はシルフィーさんと赤い屋根の可愛らしいお店に入った。
中に入ると店員が二階のテラス席に案内してくれた。客が少ない時間のようで、他の客と間隔が空いている。
私はもちろん『芋芋スペシャルたっぷりあんこのせ』を頼んだ。
シルフィーさんはケーキを頼んだようだ。
「お待たせ致しました。紅茶二つと苺が乗ったケーキと、芋芋スペシャルたっぷりあんこのせでございます」
「わーい。ありがとうございます」
私が芋から食べるかあんこから食べるか、ちょこんと乗った苺から食べるのか迷っているとシルフィーさんの視線を感じた。
「どうかしましたか?」
「楽しそうねと思って」
「ふふふ。幸せです」
「そう。良かったわね」
「シルフィーさん。田舎の村にはこんなに素晴らしいデザートは無いのです。滅多に食べられないご馳走なのですよ」
私はお嬢様のシルフィーさんに、芋芋スペシャルを食べられる事がどれだけ幸せなのかについて語った。
途中呆れた顔をしていたような気がするが、きっと伝わった事だろう。
「そろそろ食べましょう」
「はい。いただきます」
私が芋を食べているとシルフィーさんの驚いた声が聞こえて来た。
「えっ」
「どうしたのですか」
「ケーキが半分…………ねぇ、あなたが食べたのかしら」
「いえ。私は芋芋スペシャルを食べていました。ケーキは食べていません」
私は全力で首を振った。
「違うわよ。アイリーンではなくて、このピンクの妖精さんよ」
「えっ?」
そこでようやくシルフィーさんのケーキの近くに、ちょこんとピンク色の妖精が佇んでいる事に気付いた。
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