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42 悠二くんの話
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「……本当に、悠二くんなの?」
「そうだよ。杏奈が急に別人のようになったから聞いたら、中身はローサフェミリアさんと言う方になっていたんだ。ローサフェミリアさんに杏奈は亡くなったと聞いて、後を追って来たんだ」
「どうやって?」
「トラックに飛び込んだよ」
「ええ!」
「とりあえず、みんな座らないか?」
フレデリクに促されて、ローサと悠二は座った。
「それで……死んだ俺は黄泉に行って、悪魔にこっちの世界に連れて来て貰ったんだ」
「えっ、あーくんに?」
「ローサさん、私達が知っている悪魔とは限らないよ」
「そうか、そうよね」
「悪魔に出会った俺は、杏奈に会いたいと言ったんだ。そうしたら悪魔は、小僧も私の娯楽の為に力を貸せと言って、気づいたらこの世界で亡くなった人間の身体に入っていたんだ」
「うん。きっとあーくんね。フレデリク殿下はどう思いますか?」
「ああ、私も同じ意見だ」
フレデリクは少し困った顔をした。
「そう。悠二くんは私を追いかけて来てくれたのね。ありがとう」
ローサは悠二に、にっこり笑いかけた。
「杏奈を迎えに来たんだ。元の世界には帰れないが、こっちの世界で二人で幸せになろう」
「悠二くん、私は今すでに幸せよ」
ローサは首を傾げた。
「杏奈はその男と付き合っているのか?」
「いいえ」
「では、恋人がいるの?」
「いないよ」
「なら、俺と幸せになろう。俺達付き合っていただろう」
ローサは、また首を傾げた。
ローサにとって悠二くんは、亡くなる半年程前に偶然再開をした、美味しいお店を知っていて、ご馳走をしてくれる高校の頃の同級生だ。
ローサには付き合っていた記憶は無いが、見方によっては付き合っていたのかもしれない。
「うーん。あのね、悠二くん。悠二くんは友達以上恋人未満なの」
「えっ……」
フレデリクは悠二を気の毒に思った。
「いつも、美味しいご飯ご馳走してくれてありがとう」
ローサはにっこりと笑った。
顔が引きつる悠二。
「杏奈は今、恋人がいないんだろう? だったら、俺にもまだチャンスはあるよな?」
「うーん。私恋愛ごっこをしなくちゃいけないから、あると思う」
ローサは悠二に向かって、親指を立ててニカッと笑った。
それを見て慌てたフレデリク。
「待ってローサさん。この国には身分と言うものがあってね。ローサさんは今、公爵令嬢だから難しいんじゃないかな?」
「そうなの? けれど、ケネスとエミールが結婚をしたら平民になるんでしょ?」
「そうだけど。ハイデランド子爵令息は、元々子爵家の生まれだから、給与が良い働き口を見つけ易いし、お金には苦労しないんじゃないかな? こねがあるからね」
「俺だって結構稼いでいるぞ」
「一般の方の普通と貴族出身の普通では、額がかなり変わると思うよ」
悠二は少し黙った後、口を開いた。
「顔を見せても絶対に声を出すなよ。バレると面倒なんだ」
悠二はフードを少しずらして、顔を見せた。
ローサとフレデリクは、目を見開いた。
「なっ、それなりに稼いでいるって言ったろう。元々農家出身だったんだけど、俺の性格には合わなくて、しかもこの細い体だろう。杏奈も王都にいそうだし出てきたんだ」
「悠二くんはレイノス様なの?」
ローサは小声で聞いた。
「うん、まあな。元々向こうの世界で俳優をやっていたから、やっぱりこの仕事が一番しっくり来るんだよなー」
「そうなんだ」
「今日の公演を見に来ていただろう? 悪魔から杏奈はオルブライト公爵令嬢になったって聞いていたから、今日逃したら会えなくなると思って、終わって急いで街を探したんだぞ」
「そうだったの。私の事は杏奈ではなくローサと呼んで。杏奈はもうローサちゃんのものなの。私の中にはローサフェミリア公爵令嬢が入っているんだ」
「分かった。じゃあ、俺の事はレイと呼んでくれ。ついでにあんたも」
「分かった。あんたじゃなくて、フレデリク殿下よ」
「殿下だって!?」
レイは驚いた顔をした。
「はじめまして、フレデリクと申します」
「ああ……レイです」
「どうぞよろしく」
「はあ、まあ」
フレデリクとレイは握手をした。
フレデリクは、顔は笑っているが目が笑っていない。
レイは王子様との握手に戸惑っていた。
ローサとレイは連絡先を交換して別れ、フレデリクはローサを寮まで送って行った。
寮の自分の部屋に戻ってから、ローサはふと気づいた。
あれ? 悠二くん……レイは、私の事を恋人だと思っていたのよね。
では、私を殺したあの女はいったい誰?
まさか、悠二くんは二股をかけていたの?
あの真っ赤な口紅の女も、興奮し過ぎて何を言っているのか、分からなかったのよね。
世の奥様方に恨まれる事をしてきたと自信を持って言えるローサだったが、二股をかけられて、それが原因で死ぬのは納得がいかなかった。
ローサは今度会った時に、レイに聞く事にして眠りについた。
「そうだよ。杏奈が急に別人のようになったから聞いたら、中身はローサフェミリアさんと言う方になっていたんだ。ローサフェミリアさんに杏奈は亡くなったと聞いて、後を追って来たんだ」
「どうやって?」
「トラックに飛び込んだよ」
「ええ!」
「とりあえず、みんな座らないか?」
フレデリクに促されて、ローサと悠二は座った。
「それで……死んだ俺は黄泉に行って、悪魔にこっちの世界に連れて来て貰ったんだ」
「えっ、あーくんに?」
「ローサさん、私達が知っている悪魔とは限らないよ」
「そうか、そうよね」
「悪魔に出会った俺は、杏奈に会いたいと言ったんだ。そうしたら悪魔は、小僧も私の娯楽の為に力を貸せと言って、気づいたらこの世界で亡くなった人間の身体に入っていたんだ」
「うん。きっとあーくんね。フレデリク殿下はどう思いますか?」
「ああ、私も同じ意見だ」
フレデリクは少し困った顔をした。
「そう。悠二くんは私を追いかけて来てくれたのね。ありがとう」
ローサは悠二に、にっこり笑いかけた。
「杏奈を迎えに来たんだ。元の世界には帰れないが、こっちの世界で二人で幸せになろう」
「悠二くん、私は今すでに幸せよ」
ローサは首を傾げた。
「杏奈はその男と付き合っているのか?」
「いいえ」
「では、恋人がいるの?」
「いないよ」
「なら、俺と幸せになろう。俺達付き合っていただろう」
ローサは、また首を傾げた。
ローサにとって悠二くんは、亡くなる半年程前に偶然再開をした、美味しいお店を知っていて、ご馳走をしてくれる高校の頃の同級生だ。
ローサには付き合っていた記憶は無いが、見方によっては付き合っていたのかもしれない。
「うーん。あのね、悠二くん。悠二くんは友達以上恋人未満なの」
「えっ……」
フレデリクは悠二を気の毒に思った。
「いつも、美味しいご飯ご馳走してくれてありがとう」
ローサはにっこりと笑った。
顔が引きつる悠二。
「杏奈は今、恋人がいないんだろう? だったら、俺にもまだチャンスはあるよな?」
「うーん。私恋愛ごっこをしなくちゃいけないから、あると思う」
ローサは悠二に向かって、親指を立ててニカッと笑った。
それを見て慌てたフレデリク。
「待ってローサさん。この国には身分と言うものがあってね。ローサさんは今、公爵令嬢だから難しいんじゃないかな?」
「そうなの? けれど、ケネスとエミールが結婚をしたら平民になるんでしょ?」
「そうだけど。ハイデランド子爵令息は、元々子爵家の生まれだから、給与が良い働き口を見つけ易いし、お金には苦労しないんじゃないかな? こねがあるからね」
「俺だって結構稼いでいるぞ」
「一般の方の普通と貴族出身の普通では、額がかなり変わると思うよ」
悠二は少し黙った後、口を開いた。
「顔を見せても絶対に声を出すなよ。バレると面倒なんだ」
悠二はフードを少しずらして、顔を見せた。
ローサとフレデリクは、目を見開いた。
「なっ、それなりに稼いでいるって言ったろう。元々農家出身だったんだけど、俺の性格には合わなくて、しかもこの細い体だろう。杏奈も王都にいそうだし出てきたんだ」
「悠二くんはレイノス様なの?」
ローサは小声で聞いた。
「うん、まあな。元々向こうの世界で俳優をやっていたから、やっぱりこの仕事が一番しっくり来るんだよなー」
「そうなんだ」
「今日の公演を見に来ていただろう? 悪魔から杏奈はオルブライト公爵令嬢になったって聞いていたから、今日逃したら会えなくなると思って、終わって急いで街を探したんだぞ」
「そうだったの。私の事は杏奈ではなくローサと呼んで。杏奈はもうローサちゃんのものなの。私の中にはローサフェミリア公爵令嬢が入っているんだ」
「分かった。じゃあ、俺の事はレイと呼んでくれ。ついでにあんたも」
「分かった。あんたじゃなくて、フレデリク殿下よ」
「殿下だって!?」
レイは驚いた顔をした。
「はじめまして、フレデリクと申します」
「ああ……レイです」
「どうぞよろしく」
「はあ、まあ」
フレデリクとレイは握手をした。
フレデリクは、顔は笑っているが目が笑っていない。
レイは王子様との握手に戸惑っていた。
ローサとレイは連絡先を交換して別れ、フレデリクはローサを寮まで送って行った。
寮の自分の部屋に戻ってから、ローサはふと気づいた。
あれ? 悠二くん……レイは、私の事を恋人だと思っていたのよね。
では、私を殺したあの女はいったい誰?
まさか、悠二くんは二股をかけていたの?
あの真っ赤な口紅の女も、興奮し過ぎて何を言っているのか、分からなかったのよね。
世の奥様方に恨まれる事をしてきたと自信を持って言えるローサだったが、二股をかけられて、それが原因で死ぬのは納得がいかなかった。
ローサは今度会った時に、レイに聞く事にして眠りについた。
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