上 下
8 / 20
1章 始まりの一日

07 さぁ、世界が変わるとき

しおりを挟む


「速報です。本日精子検査を受けた15歳の男性が、これまで未確認だった【男聖】スキルを所持していることが政府により発表されました。男性が聖級スキルを所持する事例は世界でも初とのことです。実施された精液検査の結果では、Aランク基準値を遥かに上回る数値を記録し、病院関係者のみならず、関係各所が色めきだつ事態となっております」

 帰宅してからテレビをつけると、ちょうどニュースで俺のことが報道されていた。

 実名が出ていないことには安心する。
 それにしても、今日は俺の人生で1番濃い1日だったな。

「今後内閣は、新たに特Aランクの制度を制定するため、臨時国会を招集する予定です。これには野党から反対意見もあがっております」

 やはり俺1人のために制度を作るとか、反対意見があっても仕方ないよな。

「特Aランク? 与党は何を言ってるんだ! 男性の聖級スキル持ちが見つかったんだぞ! そこはSaintセイントの頭文字を取ってSランクだろうが! 牛肉じゃないんだから、特Aランクなんて名称で通すわけにはいかん!」

「いやぁ、聖級seikyuですし、ローマ字の頭文字もSですからねぇ。我々野党はSランクを推していきますよ。えぇ。ほら、ゲームとか最高ランクがSランクでしょ。若い子にはピッタリですよ」

 いや、そこ!?
 反対と言いつつ、野党もノリノリで楽しそうだ。

「今後新設されるランクの名称について、議論になりそうですね。スタジオには急遽きゅうきょ、ゲストとして男性省大臣にお越しいただきました。大臣はどうお考えでしょうか?」

「名称を議論している暇はありませんね。今は一刻も早く制度の中身について組み立てていくべきです。もしも彼が海外に誘致ゆうちされでもしたら、我が国にとっての最大の損失と言えるでしょう」

 いやいや、んな大袈裟おおげさな。

 流石に海外の人がわざわざ日本に来て俺を勧誘することなんてないだろ。

 ……ないよね?

「なるほど、ご意見有難うございます。確かに海外の動向には注意しなければなりませんね。それでは視聴者から寄せられた大臣への質問コーナーです」





Q1
 聖級男性の精子は購入できますか?

「Aランク同様、任意提供に関しては競売形式オークションでお求めいただけるようにしていきたいと考えております」

Q2
 聖級男性の警備は大丈夫なんですか?

「2級冒険者以上の方々を招集して選考する予定です。現在は1級冒険者を含む実力ある冒険者が、臨時警護官として任務にあたっておりますのでご安心下さい」

Q3
 聖級男性はイケメンですか?

「個人情報保護の観点から、お答えできません」

Q4
 聖級男性はどこがすごいんですか?

「献精1回の量が一般男性のおよそ100倍。データ上、妊娠確率がほぼ100%で、男性出生確率が2分の1です。我が国の男性が産まれる確率は200分の1ですから、通常の100倍男性が産まれやすいと言えます。それをたったの提供で1回で通常の100倍の量を確保できます」

Q5
 え、ヤバすぎませんか?

「はい、ヤバいです」

Q6
 新設されるランクでは配偶者の条件はどうなりますか?

「Aランク同様、全て上限も下限も設けません。【男聖】による精力の高さを考慮し、現在法案作成中のリングナンバー制度を適用したいと考えております。詳しくは男性省のホームページをご確認下さい」

Q7
 オークションって日本人しか参加できませんか?

「現在は制度上、オークション参加者は日本国籍の所有者に限定されておりますが、外交問題上、制度が変更される可能性はあります。男性省の管轄かんかつ外の回答はひかえさせていただきます」

Q8
 国民に知っておいて欲しいこととか、気をつけて欲しいことはありますか?

「彼に対して絶対に粗相そそうがないようにして下さい。彼は我が国の希望です。彼を害する行為は国家に対しての叛逆はんぎゃく見做みなされる場合があることをきもめいじて下さい」

Q9
 その男性だと気が付かず、不快な思いにさせてしまったらどうなるんでしょうか?

「現在は個人情報保護の観点から情報統制とうせいいておりますが、ある程度の情報は近日中に発表する予定です。情報公開前は、善意無過失の場合は罪に問わないものとします」

Q10
 皇族とのご結婚の可能性はありますか?

「管轄外です。あるとも、ないとも、明言できません」




「他にもたくさんの質問をいただいておりますが、割愛かつあいして以上と致します。というわけで、本日質問にお答え下さったのは、男性省の凡河内おおしこうち大臣でした。有難うございました」

「有難うございました」

「続いてのニュースです……」

 速報のニュースが終わり、俺は唖然あぜんとしてしまっていた。

 俺に不快な思いをさせたら罪に問われるって、自分で自分が怖くなってくる内容だった。

 正直「Aランクだ、すご~い」くらいの、ちょっとしたチヤホヤを想定していたのに、とんでもないことになってしまった。

 しかし、国民にとっても政府にとっても悪いニュースではなく、良いニュースであることは確かだ。


「なんか気疲れしたな。今日は早めに寝るか」

 たった1日で、俺が世界にもたらした影響ははかり知れないものとなった。

 キョウカちゃんの安産型のお尻から始まった1日。
 病院でアンナちゃんとホマレさんと仲良くなり、暫定ざんていでAランクという結果が出る。
 1級冒険者のアカネとマロンにも守ってもらいながら、冒険者ギルド支部へ行くが、そこで一悶着ひともんちゃく
 ニュースでは俺のことが大々的に報道され、国家が動いてしまうまでになった。

 昨日まではただの一般男性だった俺が、貞操逆転世界にやってきたことで、ここまで色んなことが起きるなんてな。

 明日は確か、担当官が来るはず。
 担当官がどんなものかも分かっていないが、これからどうなっていくのだろうか。

 微睡まどろむ意識の中、言い知れぬ不安感にさいなまれがなら、ゆっくりと目を閉じていった。





 目の前には大勢の女性のシルエットがあった。

 かしずく女性たち。
 横にはべる女性たち。

 誰もが何かを待つように、椅子いすに座る俺を見つめている。

 これは俺の願望がつくり出した夢なのだろうか……



 俺の視線で、群衆が動く。
 俺の一言で、世界が動く。

 俺に王たる資格はあるのだろうか。

 この玉座は俺に相応しいのだろうか。

 それは俺が語ることではない。

 彼女たちが俺を信じているのだから。

「覚悟は決めた。この世界のためにも、自分のためにも、最後の遺物を取り除く」



 ……なんだか滑稽こっけいな夢だな。

 この夢はハーレムに憧れる俺の深層心理でも表しているのだろうか。
 はたまた、あまり調子に乗って行動すると、大変なことになってしまうぞという警告か。

 俺がこの世界にやってきた意味はなんだ?
 俺はこれから、どうしたらいいのだろう?


「困っているようだなぁ仁軌じんき。ふむ、この世界に足りないもんは何か分かるか?」

 背後から懐かしい声が聞こえてくる。
 この声は、ジィちゃんか。久しぶりな気もするし、最近ぶりな気もする。不思議な感覚だ。

「足りてないものか。まぁ、男かな」

 振り向きながら答える。

 安直な考えだが、1番足りていないものは男性の数だろう。
 もっと言えば、女性に優しくする男性といったところか。

「そう、ナニが足りてないな。ハッハッハッ」

「いや下ネタかよ!」

 こんにゃろう。人が真面目に考えてるってときに下ネタかい。

仁軌じんきがハッスルすれば、近い将来は安泰あんたいだろう。でもなぁやっぱり今いる男たち、女たちの意識を変えんと、似たような時代が続いていくだろうな」

 孫にハッスルとか言うなよ、ジィちゃん。

 まぁジィちゃんの指摘は理解できないこともない。

 俺が精子提供をしていったら、短期的に人口も男の人数も増えるだろう。

 だが、それは根本的な解決には致らない。

「俺にできることが、他にあるってことか。でも何をしたら良いんだろう」

「ジィちゃんがヒントをやろう。まず、意識を変えるべきは?」

 意識を変えるべきは、男か女か。

 単純に考えれば、数の少ない男の方が意識を変えやすいか?

 いや、違う。今日の記憶を思い出せ。


 ギルド受付のあの男は、何故あれだけかたくなに女性を拒んでいる?

 それは女性が危険だと感じ、恐れているいるからだ。


 俺は何故、病院で検査の補助としてアンナちゃんとホマレさんを選んだ?

 正直、あの場にいたナースはどの子も可愛かったはずだ。

 俺は何故、道端みちばたで女の子たちが好意を向けてくれたのに、そそくさと足早に立ち去った?

 恥ずかしくなって立ち去ったわけじゃないはずだ。

 俺は何故、キョウカちゃんたちにその場で専属警護官になってもらわなかった?

 俺が一言、専属になってと言えば3人とも拒まなかったはずだ。
 それを分かっていても、俺はその一言を口に出せなかった。


 あぁ、そうだよ。

 やっぱり俺もこの世界の女性が怖かったんだよ。

 ギラギラした獲物を狙うような目。
 集団という覆しようがない人数差。
 圧倒的なレベル差による女性の力。

 自分に無害そうな女の子とは、とことんイチャついて、少しでも身の危険を感じたら心の距離を取る。

 誰よりも身勝手なのは俺だったじゃないか。


「分かったよ。ジィちゃん。まず意識を変えるべきは、自分おれだ」

「おぉ、良い目をするようになったなぁ仁軌じんきかいより始めよ。それがお前の答えか」

 ジィちゃんが嬉しそうに笑う。

「あぁ、この世界はいびつだ。少しでも良い世界になるように、俺が積極的に変えてみせる」

仁軌じんき、世界を変えるために、お前にできることは何がある?」

 世界を変えるためには、多くの男性の協力が不可欠だ。

 男性に協力してもらうためには、女性たちのギラギラとした欲望をどうにかしないといけない。
 女性の欲求を何らかの形で満たしてあげられるアクションが必要だ。

 しかし俺の体は1つしかない。1人ずつ満足させていくなんて、とてもじゃないが時間が足りない。

「今から簡単に始められて、多くの人の目に付き、満足できたりするもの……動画配信とかか?」

仁坊じんぼぅはなんとかチューブというのをよく見ていたなぁ。あれを見とるとき、ジィちゃん構ってもらえなくて寂しかった」

「いやごめんて、ジィちゃん」


 この世界は男性が貴重だ。

 男性の配信者というだけでそれなりに見てくれる人はいるはずだし、俺にはAランク超えというインパクトのある切り札も存在する。

 配信者になって人気を集められれば、認知度だけでなく発言の影響力も増していく。
 世界を変えるための第一歩になるかもしれない。

 だが、冒険者という道も捨てがたい。

 ダンジョンという未知の場所に、男女比をどうにかするアイテムが眠っていないとも限らない。

 配信者になるか、冒険者をやるか、別の選択肢を考えるか……迷うなぁ。


仁軌じんき、お前の思うままに、望むままに、突き進んだらいい。何をしたって良い。何もしなくたって良いぞ。お前がやりたいように、この世界を目ぇ一杯楽しめ!」

 楽しむ、か。

 そうだよな。俺が楽しめてないと、ダメだよな。

 よし、決めた。

 やりたいと思ったことは、全部やる。

 冒険者にもなるし、配信者にもなってやる。
 ハーレムも作るし、この世界も変えてやる。

 全部全部、楽しみながらやってやる!

「俺、この世界を楽しむよ! ジィちゃん、たくさんアドバイスありがとう」

「なんのなんの。困ったときはジィちゃんにいつでも相談して良いからな」

「何言ってんだよジィちゃん。ジィちゃんはもう亡くなって……あれ? ジィちゃん?」

 淡い光がふわふわとあちこちに散らばって消えていく。

 そうだ、これは夢だった。

 ダメダメな俺を心配して、夢の中にまで出てきて助言をくれたのか。

 全く、俺はいつになったらジィちゃん孝行ができるんだか。

 ジィちゃんが安心して成仏できるようになるためにも、気合い入れて頑張るぞ。

 だからジィちゃん、孫の活躍ゆっくり眺めといてくれな。
 あと、孫も待っててくれよな!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件

羽黒 楓
ファンタジー
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!

若返った! 追放底辺魔術師おじさん〜ついでに最強の魔術の力と可愛い姉妹奴隷も手に入れたので今度は後悔なく生きてゆく〜

シトラス=ライス
ファンタジー
パーティーを追放された、右足が不自由なおじさん魔術師トーガ。 彼は失意の中、ダンジョンで事故に遭い、死の危機に瀕していた。 もはやこれまでと自害を覚悟した彼は、旅人からもらった短剣で自らの腹を裂き、惨めな生涯にピリオドを……打ってはいなかった!? 目覚めると体が異様に軽く、何が起こっているのかと泉へ自分の姿を映してみると……「俺、若返ってる!?」 まるで10代のような若返った体と容姿! 魔法の要である魔力経路も何故か再構築・最適化! おかげで以前とは比較にならないほどの、圧倒的な魔術の力を手にしていた! しかも長年、治療不可だった右足さえも自由を取り戻しているっ!! 急に若返った理由は不明。しかしトーガは現世でもう一度、人生をやり直す機会を得た。 だったら、もう二度と後悔をするような人生を送りたくはない。 かつてのように腐らず、まっすぐと、ここからは本気で生きてゆく! 仲間たちと共に!

処理中です...