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1章 始まりの一日
05 警護官に見守られながら
しおりを挟む「つまり山部さんは斧を扱う技術が世界一なので【斧聖】に、柿本さんは氷魔法が世界一で【氷聖】になっているんです。【男聖】スキルを持つ菅井様は、男性の中で一番、その、精力が強いということになります」
世界一と言われても何のことか分からなかったので、キョウカちゃんに説明してもらった。
驚きはしたが、世界一の男性と言われるのは悪い気がしない。
むしろめちゃくちゃ嬉しい。
【男聖】は珍しいどころじゃないんだろうが、あと2つのスキルも名前のインパクトが凄いな。
【女難】はデメリットスキルっぽい名前だし、なんとなくスキルの効果が予想できる。女の子絡みで何かありそうだ。
【夜の帝王】は何というかR18系のスキルではないかと疑いたくなる名前だ。夜が強くなるとかだろうか。
「検査結果がAランク基準数値を遥かに上回っていたので、まさかとは思いましたが……」
「そういえば、特Aランク新設とかで今騒いでんだっけ? 聖級スキル発表すればお偉方は誰も文句言えねぇだろうな」
「むぅ、競争倍率が高くなる。でも大丈夫」
「倍率……うぅっ」
「マロン、アタシらは無理だろ」
自分は選ばれるわけが無いと思っていそうなアカネに、選ばれる気まんまんのマロン。そして自信が無くなってきている3級冒険者のキョウカちゃん。
1級冒険者2人のキャラが濃過ぎて、どんどんキョウカちゃんの影が薄くなっていってしまうなぁ。
頑張れキョウカちゃん、と俺は心の中で応援しておこう。
「さて、菅井様の検査も終わりましたし、本日は大変お疲れのことでしょう。詳しい話は明日、担当官がご自宅に向かう手筈になっておりますので、そちらの方とご相談ください。今日はこのままご帰宅なさってはいかがでしょうか。もう少しお休みになりたい場合は休憩室をご用意しておりますが、院内が少々騒がしくなってしまいましたので、ご不快に思われるかもしれません……」
「そうですね。あまり長居するのもあれなんで、このまま帰ろうと思います」
この世界にやってきてから、まだ半日程度しか経ってないのに、とんでもない騒ぎになってしまったものだ。
あ、仲良くなったアンナちゃんとホマレさんの件はどうしたものか。
「あの、コレ、もしよかったら!」
「RINRINのIDです。またお会いできるのを楽しみに待ってますね」
RINRINというのはこの世界の通話アプリらしく、俺のスマホにも既にインストールされていた。
未読のトーク履歴が999+件……めちゃくちゃ溜め込んでるな。公式アカウントからの通知ではなく、知り合いのようだ。
これは後で確認しなくては。今は2人のIDを入力して、スタンプでも……この世界の俺、スタンプ買って無いのかよ。仕方ない。適当に顔文字でも送っておこう。
「用は済んだな? んじゃ、護衛は任せな」
「いざ、旦那様との愛の巣へ」
「運転はお任せ下さい」
「それじゃあ二条先生、色々ありがとうございました。アンナちゃん、ホマレさん、またね」
「そんな、お礼なんて。勿体ないお言葉有難うございます。ご体調が優れないときはいつでも当院をご利用下さいませ」
「またね!」
「今日という日の幸せ、絶対に忘れません」
お世話になった二条先生や、アンナちゃんとホマレさんとその場で別れ、車に乗り込む。
俺がいなくなった病院では、アンナちゃんとホマレさんが他の看護師から怒涛の質問責めにあったが、満面の笑みで対応したようだ。
◇
「本日は大変お疲れ様でした。私たちは家の周辺で警戒にあたります。担当官が来て正式な警護官が決まるまでは私たちが臨時警護官になりますので、御用の際はこちらに連絡下さい」
連絡先はどうみてもキョウカちゃんの個人IDだったが、気にせず登録した。
さっきまでキリッとしていたキョウカちゃんの顔が途端にフニャフニャになる。やっぱりキョウカちゃんって、どこか抜けてるよなぁ。
「キョウカ、ズルい。私も渡す」
「アタシのRINRINも教えとくか。嫌だったら登録しなくて良いからな。臨時だし」
次いでマロンとアカネの連絡先もゲット。
「周辺で警戒って言ってたけど、みんな俺の家の中には入らないの?」
「だ、男性の部屋に入るなんてそんなの恐れ多いです! それに専属警護官以外が住居に入るのは原則ダメなんです」
「家で護衛とか、アタシらの理性がやべぇ。守るべき男性の貞操が守れなくなるからな、ハハ」
「私は大人しくする。家でも大丈夫。じゅるり」
口元から涎を垂らしてるマロンが1番大丈夫じゃなさそうだ。
「そっか。それじゃあ専属の護衛官が決まるまでよろしくね」
正直、3人とも専属にしようと思っているが、まだ伝えないでおこう。すぐにでも襲われそうだ。
「はい!」
「おぅ、任せときな」
「よろしく。末永く」
その後、みんなは一瞬で散開していった。
流石は隠密系のスキルを持った冒険者。近くに居るのだろうが、どこにいるかまるで分からなくなった。やはり俺みたいな一般人とは比較にならないほどの、圧倒的なステータスなのだろう。
さて、病院での検査を終えてようやく帰宅できたなぁ。
帰宅して取りかかったことは、パソコンでの調べ物だ。パスワードが前世と変わってなくて助かった。
「ふむ、冒険者はなろうと思えば10歳から登録できるのか。男性も登録は可能、と」
冒険者登録は、ダンジョン近くにある冒険者ギルド支部でもできる。
1番家から近い初級ダンジョンは、徒歩10分のところにあった。
現在時刻は昼過ぎ。
明日は担当官という人が来て忙しくなるだろうし、今日中に登録してしまおう。
そうと決まればキョウカちゃんにRINRINで連絡しよう。
お、新しいグループがあるな。護衛連絡用グループか。情報共有が早そうで助かるな。ポチポチとメッセージを打ち込んでっと。
『近くの冒険者ギルドまでお出かけですね! 護衛はお任せ下さい!』
今回はこの世界に慣れるためにも、徒歩で行くことにした。
道中で助けて欲しいときの合図などを決めて、家を出る。
人通りはそんなに多くないが、道行く人が俺に視線をロックするのがなんか楽しい。
「うひゃぁ、すっごいイケメン。今日の夜は、はかどりますなぁ」
「あたし、声かけちゃおうかな。ワンチャンないかな」
「やめときなって。近くに警護官いるんだから、捕まっちゃうよ」
「ママ、あたし、あのお兄ちゃんとケッコンしたい!」
OLっぽいお姉さんも、女子高生たちも、幼い女の子まで、みんなが足を止め、ポーっとした表情で顔を赤らめながらこちらを見てくる。
チラッと目が合うと、はぅぅと腰を抜かして立っていられなくなる女の子も。
俺は気分も調子も良くなって、微笑んでみたり、小さく手を振ってみたりと、ちょっとしたサービスをしてみた。
「キャッ、手を振られちゃった! ハァハァ、これって結婚だよね?! 子作りしても良いよね!?」
「うわっ、今あたしに笑ってくれた!」
「何言ってるの、私に向かって微笑んでくれたのよ!」
「好き好き好き好き好き好き好き好き」
思った以上に反応が良くてやり過ぎてしまった。
幼女までヤンデレのような瞳になっててヤバそうだし、あまり迂闊に愛想を振りまかない方が良いな。
俺はその場をそそくさと立ち去り、冒険者ギルドへ早足で向かった。
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