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藤の花の季節に君を想う

さぁ蹴鞠の始まりだ①

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「よ、よし!!行くよ!」
「うん…」

暁と吉平はお互いの顔を見合わせて気合を入れた。
今日は蹴鞠会の日。この間高遠に紹介された宴で吉平は光義と香の話で意気投合した。その結果息子である影平が主催する蹴鞠の会に参加することになった。
吉平は意外にも鼻が利き、お香にも詳しがったため、光義にいたく気に入られたのだが本人も嬉しそうだった

「吉平、実は香道とかって雅な趣味があったんだね」
「うん。僕はあまり外で遊ぶのは苦手で。家でできる趣味が多いかな。」
「へぇ。歌会とかも好きなの?」
「そうだね。下手だけどそれなりに好きだね。といっても親族で集まった時に披露する程度だけど」
「それなら、宮中デビューしたら女の子にモテモテだね」

暁のその言葉に吉平は真っ赤になって反論した。
吉平は意外にも奥手なようだ。耳まで赤くなっている。

「そ、そんなことないよ!ぼ、僕は…暁ほど顔がいいわけではないし、きっとダメだよ」
「そうかなぁ?私もそんなに顔は良い方じゃないし、歌も学ぶ機会がなかったから下手だし。」

幼い頃から陰陽道の勉強ばかりしていたせいで、貴族の嗜みといったものに疎い。
陰陽師として町の人の力になりたいと思っていたからそれでよかったし、暁自身不自由も感じていなかったのだが、よもや宮中で仕事をするとは思わなかった。
こんなことなら基本的な貴族の嗜みを勉強しておけばよかった…と思うものの、後悔をしても仕方がない。
この辺のことは吉平に任せることにしようと暁は勝手に思った。
そんな言い合いをしていると入口から少年が出てきた。

「お!!君たちが暁君と吉平君?待ってたぜ!!」

普通なら女房が出迎えて主の元に連れてくのだが、いきなり少年が出てきたので暁達はびっくりしたため無言のまま少年を凝視した。
ラフな格好をしているが、影平の乳兄弟とかなのだろうか?
貴族としてはあまり好ましくないとされている浅黒い肌。でもそれが精悍な雰囲気を醸し出しているので全然悪く感じない。
髪を後ろで適当に結び、闊達そうな笑みを浮かべている。いかにも暁達を待っていたと言わんばかりだった

「あの、私は暁ともう…」
「俺は影平だ。さぁ行こう!!」

暁が申します、と言う間もなく影平は名前を名乗るとそのまま暁と吉平の背を押して館に押し込んだ。

「えっ?えっ!」
「あ、あんたが暁で、あんたが吉平か!!よろしくな!!」

戸惑う2人の背を押しつつも影平はがははと豪快に笑った。
その力は強くて、暁は抵抗することもできずそのまま影平に押されるまま部屋へと導かれた。

「連れてきたぜ!!」
「へぇ、お香が好きとかいうからどんだけ軟弱だとおもったけど…確かによわっこそうだな」
「まぁまぁそういうなよ。せっかく新しくメンバーが増えたんだぜ。」

中には暁と同じ年頃の男たちが座っていた。
暁と吉平を見ると興味津々で見つめられ、各々の感想を口にしていた。
正直そういう目で見られることに居心地は悪かったが、悪意は無いようだった。
いや…あまり褒められていない言葉を口にされていたが、彼らに悪びれがないようだったので暁は曖昧に笑った。

「で、どっちが香道好きなんだよ?」
「あ、僕です。」
「ふーん。そうか。親父に聞いていたけど、蹴鞠なんてできるのか?」
「いえ…僕は…あまり…」
「だよな。そんな運動好きなタイプではない感じだしな」

吉平を見て影平は不敵に笑った。
続いて、暁を見つめる。

「で、暁は?蹴鞠好きか?」
「あまり経験はないのですが、それなりにはできる…と思います。」
「初心者か。高遠殿の付き人っていうからそれなりの経験はあると思っていたんだけどな。予想以上に細くてびっくりした。」
「はぁ…」
「女が好きそうな美少年って感じだけど、高遠殿もそういう趣味があったんだな」
「は?どういうことです?」
「高遠殿があんな宴に連れてきたってことは結構なお気に入りなんだろ?」

そういう趣味の部分が気になるけど、あまり深く突っ込まないことにした。というか…高遠にそういう趣味あるのかもしれない。
ある意味気を付けなくては…とちょっと暁は思った。
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