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月下に浮かびし桜の花は

待てば海路の日和あり②

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翌日。


「はぁ…疲れた…。」
「おう、目が覚めたか!」
「金烏…おはよう。」


どうやら調伏で力を使ったらしく、その後はぐっすり寝てしまっていたらしい。


「いま…何時?」
「昼過ぎだな。さっき光義が心配で見に来ていたぞ。」
「え?叔父さんが…」


ばれただろうか。でも何も言わずにそのまま寝かせてくれたということは…。

そんなことを思っていると顔に出ていたらしく金烏が慰めた。


「ま、いいんじゃねーの。お咎めがないんだしな。」


抜けているようでちゃんと見ているのが光義という男だ。暁はあきらめの境地でため息をついた。


「それより暁、葛葉から手紙と米、届いているぞ。」
「お米!?本当!!」

そういって玉兎が手紙とお米を手渡した。


「お米だああああああ。これだけあればとりあえずひと月は食べれる!!」


涙を流しながら暁は米袋に頬ずりした。

葛葉からの手紙を読むと、意識を失っていた男達は皆目を覚ましたとの報告が書かれていた。


「これで…一安心だね。」
「で?暁はこれから参内すんのか?」
「あ…そうだね。ちょっと遅刻だけど昨日も休んだし、とりあえず出仕するよ。」


暁は身支度を整え陰陽寮の向かった。

陰陽寮はいつもの通り皆がそれぞれの仕事をしていてばたばたしていた。


「陰陽師見習い、賀茂暁。参内しました。」
「あ、暁。もう具合はいいのかい?」


暁が出仕の挨拶をしに陰陽頭の光義の元に行くと、暁の姿を認めた光義が笑みを浮かべて言葉をかけた。

そしてその傍らには高遠が控えていた。


「暁君。」
「た、高遠殿!なんで、ここに!?」


昨日の事を思い出し暁は焦った。じっと暁を見つめる高遠。

暁は昨日の正体がばれているのではないかと内心ドキドキして高遠の言葉を待った。背には冷や汗がつぅと流れた。


「違う…か?」
「なななんの事でしょうか?」
「昨日夢に美しい少女が出てきてね。暁君に似ていたんでね。」
「さぁ…そうなんですか?気のせいでは?」
「そう?残念だな。」
「は?」
「だってすごく可憐な少女だったから。出会っていたら運命だなと思ってね。」


そう言ってくすりと高遠は笑った。

相も変わらず良く読めない人だ。

高遠という光義といい、自分の周りにはどうも食えない人間が多すぎる。なんだか色々と考えすぎて疲れてきた。


「さて暁、病欠のあと大変だと思うけど、さぁ仕事だよ」
「はい!」


京はこれから桜の花盛り。

宮中の早咲きの桜の花びらが一片、暁の元に降りてきたのを捕まえて、暁は仕事へと向かうのだった。


月下に浮かびし桜の花は 終

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