相性って大事

茜菫

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結婚までの道のり

ちょっと疑ってしまいました(3)*

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 二人は無言で歩き、家までたどり着いて一息つく。ニーナがリビングのソファにかけると、フェリクスは彼女の名を呼んだ。

「ニーナ」

 ニーナは彼の顔をまともに見れずにうつむく。フェリクスは彼女の手に、自分の手をそっと重ねた。

「ごめんなさい、フェリクス……」

「怒っていませんよ」

「でも、ごめんなさい……」

「私が、事前に兄のことを説明しておけばよかったですし」

「自分の兄が女に見えるかもしれない、とか普通は言わないし……」

「それは……そう、ですね……」

「それに、そこが問題じゃなくて……」

 ニーナにとって、フェリクスの兄であるアウグストを女性に見間違えたことが問題なのではなく、まさかと思いながらもフェリクスを疑ってしまったことが問題だった。

「ニーナは私が…………兄と、ただならぬ仲だと疑ったのですね」

「はい、ごめんなさい……疑っちゃいました……」

 ニーナが女性だと思い込んだ彼の正体はフェリクスの兄で、兄弟だからこそ二人は親しげだった。それを知らず、ニーナはフェリクスを疑い、彼を問いただした。知らなかったとはいえ、フェリクスからすれば後ろめたいことはなにもなく、恋人に信じてもらえずに疑われたことになる。不快に受け取られても仕方がない。

「ニーナ」

 謝罪し落ち込むニーナにフェリクスは首を横に振り、やさしげにほほ笑む。

「私が怪しい行動をしたのなら、疑ってもいいんですよ。盲信は望んでいません」

「……フェリクス……」

 あまりにもやさしく受け入れられ、ニーナは涙が出てしまった。フェリクスは彼女の肩を抱いて引き寄せる。

「今回は……いえ、あれが兄だと知らなければ……そうですね……はあ……私と、兄が、ですか……そう見えても…………ええ、ええ。仕方がないですね」

 かなり言葉に間はあったものの、フェリクスはそう言った。ニーナはますます申し訳なくなる。

「フェリクス……ごめんなさいぃ……」

「怒ってはいませんから」

「お兄さん、あんなに美人なんだもん……フェリクス、と、取られちゃうと思っちゃって……そんなのいやって……」

「ニーナ……」

 フェリクスはニーナの頭をなで、その髪に口づけた。唇に触れるだけの口づけをし、ちゅっとリップ音をたてながら何度も口づけ合う。ニーナは少しずつ落ち着きを取り戻し、涙は止まった。

「嫉妬しました?」

「……した……」

「そうですか……相手は兄でしたが……ふふ」

 フェリクスは少し楽しげだ。ニーナが不思議そうにくびをかしげると、彼は少し困ったように眉尻を下げる。

「嫉妬してくださったことはうれしいです。……さすがに、兄と疑われるのは少し落ち込みましたが」

 その言葉にニーナは慌ててフェリクスに抱きついた。

「ごめんなさい! ……うう、今日はなんでもするから……!」

「なんでも?」

 ニーナがこくこくとうなずくと、フェリクスは立ち上がって手を差し出した。その手を取って立ち上がると、フェリクスは彼女を抱き上げて寝室へ向かう。

「では、今日は慰めてくれますよね?」

 そう言ってにっこりと笑ったフェリクスに、ニーナはただただうなずいた。



 ニーナは一糸まとわぬ姿で四つん這いになり、その状態で彼の陰茎を口で咥える。舌でなめながら吸いつき、根元を手で扱きながら反対の手で自分の中に指を差し入れ、いい所を擦って腰を揺らした。

 ここまではいつもと大差はなかった。けれど今夜はいつもと違って、部屋の明かりがすべて点り、ベッドのそば、ニーナの真後ろに姿見の鏡が置かれている。

(怒っていないって言ったけど、怒っているんじゃ……)

 ニーナが恐る恐る視線を上げると、目があったフェリクスが頭をなでた。

「怒っていませんよ」

 ニーナの頭の中を読み取ったように、フェリクスはにっこりと笑って後ろの鏡に目を向ける。そこに映っているだろう自分の痴態を想像し、ニーナは恥ずかしさに口を離して顔を上げ、手を止めた。

「んうっ、…………はぁ、……うぅ、本当に怒ってないの……?」

「ええ。なんでもして、慰めてくれるのでしょう? あなたのいやらしい姿を見れば、元気になりますから……ね」

(……確かに、ごく一部がとっても元気だけど……)

 ニーナは目の前にある、反り勃つ彼のものを見てごくりと喉を鳴らす。するとその唇に催促するように先端が押し当てられた。ニーナは恥ずかしいと思いながらも、とても興奮してしている。

「ほら、ニーナ。そのかわいい口を開いて、咥えてください」

 ニーナが言われるままに口を開いて咥え込むと、にフェリクスが息を吐く。

「ちゃんと手も動かして、見せてくださいね?」

「っうー……」

 フェリクスは彼女の尻をなで、両手で左右に開かせた。

(やめてー! 絶対丸見えになっているやつ!)

 内心悲鳴をあげつつも、ニーナは見られて興奮している自分に気づいている。自分は変態かもしれないと思いながら、ニーナは今日はなんでもすると言った手前、言われた通りに指を動かした。

「いい子です」

 褒められよろんでしまうニーナは、やはり変態なのかもしれない。フェリクスに対してのみに限るが。

「そんな欲しそうな顔をして」

(はい、欲しいです)

 ニーナは正直な気持ちを込め、目を潤ませてフェリクスを見つめる。

「……ふふ、ちゃんとあげますよ」

 そう言って笑ったフェリクスはニーナの頭をなでて腰を引いた。口内から彼のものが引き抜かれ、次は鏡を見るように四つん這いにさせられる。

 欲情した自分の顔が映り、ニーナは恥ずかしさを感じると同時にやはり興奮していた。自分の顔を見るのが恥ずかしくてうつむこうとしたが、フェリクスに顎に手を添えられて阻止される。

「ちゃんと顔を上げて、鏡で私に顔を見せて」

「フェリクスぅ……」

「なんでも、と言いましたよね?」

(やっぱり、怒っているんじゃない……?)

「怒っていませんよ? 楽しんでいるだけです」

「……っ」

「ニーナは、こういうこと……好きでしょう?」

(うう……正直、好き……!)

 ニーナは丁寧な言葉で恥ずかしいことをさせられて、正直、とても興奮していた。さすがに正直には言えずに黙り込み、顔を真っ赤にする。目を細めて笑うフェリクスは、すべてお見通しだろう。

「だから、ニーナも楽しみましょう?」

「っは、んっ」

 耳元で囁かれると同時に後ろからぐっと突き入れられ、ニーナは声を漏らして体を震わせた。鏡に映るのは自分の蕩けた顔と、それを楽しげに見ているフェリクスの顔だ。

 鏡越しに目が合い、左目にかかった前髪をかきあげたフェリクスにニーナは胸をきゅんとさせる。それが伝わったらしく、彼はにやりと笑った。

「私がこんなことをするのは、ニーナだけですからね」

「は、っ、うん、……うん……っ、あぁっ」

 フェリクスはニーナの腰をつかんで抽送しはじめる。肌がぶつかる音とおたがいの荒くなった呼吸音が寝室に響いた。ニーナは言われた通りに鏡から目をそらさずに、自分のとろけた顔とフェリクスの耐えるような表情を眺め、うっとりする。

「はぁ、……あ……っ」

 がつがつと攻め立てられ、奥深くに穿たれた剛直を締めつけながらニーナが絶頂を迎えると同時に、フェリクスは奥に吐精した。ずるりと中から引き抜かれ、あふれた精が腿を伝う。ニーナがとろけた顔のまま鏡越しのフェリクスを見ると、彼は鏡越しに彼女を見つめて後ろから抱きしめた。

「ニーナ、まだこれからですよね?」

「っ……う、ん……」

 ニーナが耳元で囁かれてうなずくと、フェリクスは鏡に映るように、彼女の両脚を左右に大きく開かせた。



 明日のことを考えて控えめではあったものの、鏡プレイというのもなかなかいいものだと、ニーナは大満足だった。
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