相性って大事

茜菫

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婚約までの道のり

ニーナの憂鬱(4)*

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(私はいい大人なので、自分の行動には責任を持つ。持つとも!)

 ニーナは自らの手で家の鍵を開け、フェリクスを招き入れた。扉を閉めて鍵をかけた途端、フェリクスはニーナを後ろから抱きすくめて耳元でささやく。

「……私は、都合よく解釈します」

「っ……フェリクス……」

 自分のことを好きだと言った男に好きだと返して、あんなことを言って、あんなことを言われておいて、家の中に招き入れたのだ。これからどうなるのかは想像がついている。

「フェリクス、待って」

「ニーナ」

「……先に、キスしたい」

 ニーナの言葉にフェリクスはそっと腕を離した。向かい合い、フェリクスの手が頬に触れ、ゆっくりと唇が重なる。はじめは啄むような軽いキスを何度か繰り返し、ニーナが受け入れるようにその背に手を回して唇を薄く開くと、フェリクスはそこから舌を入り込ませた。

「ん……」

 舌を絡める甘い交わりにニーナはぞくぞくする。体を寄せあい、回した手でおたがいの体をなで合うと、さらにぞくぞくした。

「……はぁ……」

 唇が離れ、ニーナはうっとりして息を吐く。フェリクスの目には情欲が浮かんでいて、ニーナも同じような目をしていた。

(これは、あれか……ベッドまで待てないコース……!)

「……はじめてだから、我慢、します」

 残念ながら、ニーナの予想は外れたようだ。ちなみに、ニーナはそのコースを実際にやったことはない。妄想でならあったが。

(ここででもやぶさかじゃないんだけど……ううん、初めてなんだし、ベッドでの方が色々とやりやすいよね)

「ニーナ」

「は、はい!」

「どちらですか」

「あ……」

 ニーナは小さな声で問われ、顔を赤くしながら寝室へと案内した。自分の足でベッドに向かおうとしている、そう仕向けられているこの状況に少し興奮している。

 ベッドの前までやってくると、フェリクスはニーナを軽々と抱き上げて座らせ、その向かいに乗り上げる。もう何度も妄想したシチュエーションだが、現実は妄想よりもすてきだ。

 ニーナは再び唇を塞がれ、何度も角度を変えて奪われながら、ブラウスの釦を外されていく。フェリクスはそのままブラウスを脱がせると、下着も手際良く脱がせた。

(私も、脱がせてみたいな……)

 そんなニーナの内心を読んだように、フェリクスはにっこりと笑った。

「ニーナ、脱がせて」

「……っ」

 ニーナは内心大よろこびだった。早速フェリクスの服に手をかけたが、騎士の制服は少し複雑な作りになっていたため、脱がし方がわからずに手が止まる。ニーナがうまく脱がすことができずにもたついていると、フェリクスが彼女の手に自分の手を重ねた。

「こうするんです。……覚えていて」

 フェリクスはニーナの手で服のホックを外して釦を外し、その間に左手にはめていた手袋を口で外す。ニーナは多少もたつきながらもなんとか脱がせ、現れたフェリクスの体に目が釘付けになった。

 二年前のあの事件で、騎士として鍛えた体は失われてしまったのだろう。体の線は少し細く、左半身には本人が言っていたとおり、やけどのような跡がある。左の手から肘の辺りまでが特にひどく、黒ずんでいた。

「……こわいですか?」

 その言葉にニーナは首を横に振り、手を伸ばして肌に触れた。するとその刺激に反応し、フェリクスの体がわずかに震える。

「あっ、ごめんなさい! 急に触って……」

 ニーナが手を引っ込めようとすると、フェリクスはその手を取り自分の肌に触れるように促した。

「触ってください。あなたの、好きなように」

「……っ」

 ニーナは変な声が出そうになったのをなんとか飲み込んだ。恐る恐る顔色を窺うも、フェリクスはとても笑顔だ。

 ニーナが手のひらを体に這わせると、フェリクスは少しくすぐったそうに笑う。嫌な顔をせず受け入れられたようで、ニーナはとてもうれしかった。

「私も、触りたい」

「あ……っ」

 フェリクスの大きな手が肌をなでる。ゆっくりと胸をもまれ、その頂きをきゅっと摘まれ、ニーナは声をもらした。おたがいに体をまさぐり合い、何度も口づけ合う。ニーナの下腹部がうずきはじめたのと同じように、フェリクスも下半身が窮屈そうになっていた。

(さ……触ってみたい)

 ニーナの視線を感じてか、フェリクスは再び彼女の手を取ってズボンの上から自身に触れさせた。つい目がいってしまったことを恥ずかしく思いながら、ニーナは恐る恐るたずねる。

「い、いいの? ……引かない?」

「私にはご褒美です」

 笑顔で答えられ、ニーナはほっとしながらそれに触れた。ズボン越しでもわかる大きさにごくりと生唾を飲み込む。直接見てみたい、触ってみたい。そう思っているとフェリクスは前を寛げた。

(……頭の中をのぞかれているみたい)

 そのことすらのぞかれているかのように、フェリクスがわずかににやりと笑った。ニーナはその笑顔に胸を高鳴らせる。

「とても、欲しそうな顔をしていて」

「えっ」

「その表情、そそられます」

「……っ」

 ニーナは赤くなった顔を両手で覆う。彼女も、フェリクスの言葉にとてもそそられていた。

「ニーナ、触ってください」

 甘えるような声音でねだられ、ニーナは逆らえるはずもなかった。直接触れたことはいままなく、妄想の中でしかない。少し不安であったが、ニーナは片手で包み込むようにそれに触れる。そのままゆっくりと擦っていると、先端から先走りがあふれて手をぬらし、少し円滑になった。

(わあ……ちょっと、大きくなった……)

 それが自分の手によるものと思うと、ニーナはなおのことうれしく、興奮した。

「ニーナ、気持ちいい……」

 ニーナはあまりうまくはできていないと自覚している。けれども、褒められてうれしくなった。

 フェリクスはニーナの手に手を重ね、唇に口づける。ニーナはそのままゆっくりと押し倒されてベッドに背をあずけると、フェリクスが上に覆い被さった。

(あ……これ……)

 フェリクスはニーナの下腹部にそっと手を置く。そこからじんわりと熱が伝わってくるのを感じて、ニーナはそれがなにか気づいた。

(私、これから本当に……)

 使ったことはなく、使われたのも初めてだが、避妊の魔法だ。その魔法をかけられている、つまり、これから本当に体を繋げるのだと改めて認識して、ニーナの興奮はさらに高まっていく。

「……っ」

 フェリクスの手が下着の上から割れ目をなぞる。ニーナはそこがすでにぬれているのが、下着越しに触れられただけでわかった。

「もう、ぬれていますね……」

「う……っ」

 フェリクスに耳元で囁かれ、ニーナは恥ずかしさに顔をそらした。下着の上からなぞられ、やさしく上の蕾のあたりを擦られ、ニーナは息を吐いた。下着越しだからかもどかしい刺激に懇願するようにフェリクスに目を向けるも、彼は笑うだけだ。

「……さ、触って……」

「触っていますよ」

「意地悪……ねえ、直接、触って……っ」

 楽しそうに笑ったフェリクスは、ニーナの下着の紐を解いた。

(紐パンツ、便利……!)

 ニーナは初めこそこの世界の下着が紐パンツだったことにおののいたが、いまは内心で大よろこびできるくらいに便利だと感動した。覆われていたものがなくなり、フェリクスの手によって望んでいた刺激を与えられ、ニーナは息をのむ。

「フェリクスっ……はぁ……んっ」

 あふれた愛液を絡めて蕾をいじめられ、秘裂を割って差し入れられた長い指が中を探るように動く。ニーナがいい所を擦られて体を震わすと、フェリクスはその反応に気づいたようだ。

「ここですか」

「っそこ……あっ……あ、気持ちいい……っ」

 ニーナがもっととねだるように腰を揺らすと、フェリクスは望みどおりに何度もそこを攻めた。

「あぁ、もうっ……イきそう……イッちゃう……あぁっ」

 いよいよ快感の頂点を迎える、その直前に指が引き抜かれた。中に埋まっていたものがなくなってしまい、そこがもの欲しそうにうずき、ニーナは体を震わせる。

「あ……どうし、て……っ」

「こちらが、欲しいでしょう?」

 そう言って、フェリクスは割れ目に熱く滾った陰茎を押し当てた。触れた熱に中がうずき、ニーナはそれが欲しくてたまらなかった。

「もう……欲しいっ、フェリクスの、はやく……っ」

「っ……はい、あげます。全部……っ」

 ニーナは懇願し、フェリクスがうれしそうに笑ったのを見ながらその背に腕を回した。
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