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第一部
他の誰にも渡さない(5)
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「私の方が、レイモンドのことを好きだから!譲らないわ!」
エレノーラはこれに関しては、言われっぱなしにしておけなかった。初めて言い返した彼女に、ニコラスが驚いたように目を向ける。アグネスは目に涙を浮かべたままエレオーラを睨みつけていて、彼女はそれに負けじとその目を見つめ返し、お互い黙ったまま睨み合いが続く。エレノーラに退く気はない、だが。
(…に、睨むのって、疲れる…)
表情が崩れてしまいそうになるのを必死で耐えるが、慣れないことをしているからか、眉間がひきつっていた。
(いつになったら、この睨み合いは終わるの…?早く終わってほしいわ…)
エレノーラは引き際がわからず、二人が暫く睨み合っていると、ニコラスが助け舟の如く大きく咳き込む。
「…いい加減にしてください、アグネス。これ以上留まるのなら、このことを報告しなければなりません」
飛び火でニコラスがアグネスに睨みつけられるが、彼は全く気にした様子はなく、再度彼女の名を呼んだ。ぐっと堪えるように唇を噛んでアグネスが退きかけたが、そこで間が悪いことに、レイモンドがやってくる。
「間の悪い…」
ニコラスがぼやくが、レイモンドはそれに全く気づいた様子はなく、エレノーラの姿を見つけて笑んだ。しかし直ぐに、アグネスに目を向けて眉根を寄せる。
「…アグネス?何故、ここにいるのですか」
「レイモンド!」
アグネスが抱きつこうとしたが、レイモンドがさっと身を引いて避ける。エレノーラは今のは少し可哀想に思ったが、成功していたら少し嫌な気持ちになっていたかもしれない。アグネスは何故かエレノーラを再び睨みつける。
(睨み合うのはもう嫌だわ…)
エレノーラが困っていると、その視線を遮るようにレイモンドが彼女の前に立った。
「アグネス。貴女は、エレノーラには近づかぬよう言われているでしょう」
(…さっきも聞いた気がするわ、この台詞)
レイモンドがニコラスを見習っているからか、喋り方もほぼ一緒だ。
「…たまたま、ここですれ違っただけなの」
だが、アグネスのニコラスに対する態度とレイモンドに対する態度は全く違った。好きな人の前ではしおらしくなるだろうが、ニコラスの呆れたような表情がなんとも言えない。
「そうですか。では、早く立ち去ってください」
「レイモンド!私、あなたに…」
「私は貴女に用はありません」
「そ…っ、…うぅっ」
レイモンドの冷たい態度に、アグネスは遂に涙を流しながら走り去ってしまった。エレノーラは彼女に少し同情心が生まれるが、かと言って彼女に優しくしているレイモンドを見たくはなかった。エレノーラはなんとも言えない気持ちで、その背が見えなくなるまで、アグネスの姿を見送った。
エレノーラはこれに関しては、言われっぱなしにしておけなかった。初めて言い返した彼女に、ニコラスが驚いたように目を向ける。アグネスは目に涙を浮かべたままエレオーラを睨みつけていて、彼女はそれに負けじとその目を見つめ返し、お互い黙ったまま睨み合いが続く。エレノーラに退く気はない、だが。
(…に、睨むのって、疲れる…)
表情が崩れてしまいそうになるのを必死で耐えるが、慣れないことをしているからか、眉間がひきつっていた。
(いつになったら、この睨み合いは終わるの…?早く終わってほしいわ…)
エレノーラは引き際がわからず、二人が暫く睨み合っていると、ニコラスが助け舟の如く大きく咳き込む。
「…いい加減にしてください、アグネス。これ以上留まるのなら、このことを報告しなければなりません」
飛び火でニコラスがアグネスに睨みつけられるが、彼は全く気にした様子はなく、再度彼女の名を呼んだ。ぐっと堪えるように唇を噛んでアグネスが退きかけたが、そこで間が悪いことに、レイモンドがやってくる。
「間の悪い…」
ニコラスがぼやくが、レイモンドはそれに全く気づいた様子はなく、エレノーラの姿を見つけて笑んだ。しかし直ぐに、アグネスに目を向けて眉根を寄せる。
「…アグネス?何故、ここにいるのですか」
「レイモンド!」
アグネスが抱きつこうとしたが、レイモンドがさっと身を引いて避ける。エレノーラは今のは少し可哀想に思ったが、成功していたら少し嫌な気持ちになっていたかもしれない。アグネスは何故かエレノーラを再び睨みつける。
(睨み合うのはもう嫌だわ…)
エレノーラが困っていると、その視線を遮るようにレイモンドが彼女の前に立った。
「アグネス。貴女は、エレノーラには近づかぬよう言われているでしょう」
(…さっきも聞いた気がするわ、この台詞)
レイモンドがニコラスを見習っているからか、喋り方もほぼ一緒だ。
「…たまたま、ここですれ違っただけなの」
だが、アグネスのニコラスに対する態度とレイモンドに対する態度は全く違った。好きな人の前ではしおらしくなるだろうが、ニコラスの呆れたような表情がなんとも言えない。
「そうですか。では、早く立ち去ってください」
「レイモンド!私、あなたに…」
「私は貴女に用はありません」
「そ…っ、…うぅっ」
レイモンドの冷たい態度に、アグネスは遂に涙を流しながら走り去ってしまった。エレノーラは彼女に少し同情心が生まれるが、かと言って彼女に優しくしているレイモンドを見たくはなかった。エレノーラはなんとも言えない気持ちで、その背が見えなくなるまで、アグネスの姿を見送った。
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