まずは抱いてください

茜菫

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本編

好きです、旦那様(18)*

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 アデリナがその言葉に静かに頷くと、ヴァルターはほっとしたようだ。だが、代わりに彼女が少し頬を膨らませて不満を表す。

「…ずるいですわ、旦那様」

 アデリナが拗ねたようにそう言うと、ヴァルターが驚いたように目を見開いた。予想もしていなかった言葉だったのだろう。

「私も伝えようと思っていたのに…また、旦那様に先をこされてしまいました」

「アデリナ」

「普段はあまり伝えてくださらないのに、こういう時はしっかりしているのですね」

「…すまない」

「いえ、褒めているのです」

 今のは彼女の本心だった。少し慌てた様子を見せたヴァルターに、アデリナは小さく微笑む。

「…旦那様を想いながら、刺しました。受け取ってくださいますか」

 彼女は手に持っていたハンカチを、ヴァルターに差し出した。彼はハンカチを受け取ると、大切そうにそれに口付ける。

「毎日、大切に使う」

「一枚で毎日はちょっと…でしたら、もっと用意しましょうか?」

「頼む。毎日使う」

 ヴァルターの声には、喜びの色が滲んでいた。目元を緩め、口元も緩めてハンカチを大切そうに眺めるヴァルターが、見た目は可愛いからはかけはなれているのに、アデリナにはたまらなく可愛く見えていた。

「…本当は、今日のデートで渡すつもりだったのです」

「埋め合わせよう」

「ふふ、期待していますからね?」

「ああ」

 ヴァルターはアデリナを抱き寄せ、彼女もそれに従い、彼の逞しい胸に顔を埋めた。彼女は彼の胸から伝わる鼓動が、自分の鼓動と負けないくらいに高鳴っていることに気づく。

「…もしかして、旦那様もあの花束をデートでくださるつもりでしたの?」

「そうだ。昨日のうちに、頼んでいた」

 ヴァルターはせめて花束だけでも彼女に手渡そうと、仕事を片付けて直ぐに受け取りに向かったそうだ。そこに何の因果か彼女が居合わせてしまい、勘違いされてしまった。アデリナはあの時、酷い勘違いをして感情のままに振る舞わなくて、本当によかったと思う。

 ヴァルターはハンカチをガウンのポケットにしまうと、彼女の唇に自分のそれを重ねた。そのまま何度も口付けられて、アデリナが唇を薄く開いて舌を差し出すと、彼は彼女の舌に舌を絡ませる。二人は深く口付け合い、吐息と舌が絡む水音を部屋に響かせて、それが耳から入って興奮させられた。

 アデリナは唇が離れると、彼から身を離した。情欲を宿したヴァルターの目にぞくぞくしながら、ベッドへ向かおうと彼に背を向ける。彼女はネグリジェを脱いでしまおうとしたが、その前にヴァルターが彼女を後ろから抱き抱えた。

「旦那様…」

 ヴァルターはそのまま、ネグリジェの上から胸を揉み、反対の手をスリットから中へ忍び込ませて内腿を撫でた。

「っん…」

 アデリナは首筋に唇を寄せられ、項に吸いつかれて息を吐く。下着の上から割れ目をなぞられ、その上の突起を擦られて体が震えた。
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