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本編
少し寂しかったのです(2)
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アデリナが落ち込んでぼんやりとしているうちにあっという間に時間は過ぎ、日は沈みかけていた。ヴァルターが帰ってくると報告を受けたものの、彼女は気だるさと気まずさに彼の出迎えを怠ってしまう。
(…こんなことではいけないわ!)
アデリナは自分を叱咤すると、夕食は共にすると家令に伝え、着替えて食堂へ向かった。彼女が食堂にたどり着くと、既にヴァルターは着席していて、彼女が入室するのと同時に顔を上げて声をかける。
「アデリナ、体は大丈夫か」
「はい。あの、旦那様…もうしわけございません」
出迎えなかったこと、子を成せなかったこと、そのどちらもの意をこめて、アデリナは謝罪した。ヴァルターは既に彼女の体の事は聞いているのだろう、軽く首を振って答える。
「気にするな」
いつもよりも優しげに聞こえた声音にほっとしつつも、その優しさにより一層申し訳なさが込み上げてくる。そんな彼女を気遣ってか、ヴァルターは全く関係の無い話をした。相変わらず直ぐに会話は終了してしまうが、その気遣いが彼女には嬉しかった。
アデリナは食事を終え、一緒に食堂を出て、書斎へ向かおうとするヴァルターに声をかけた。彼はこの後も仕事をするつもりだろうから、手短に済ませなければならないと端的に話を切り出す。
「旦那様」
「なんだ」
「今夜の訪れは…なさらない、ですよね」
月のもののうちは夫婦の営みが致せない、であれば、ヴァルターが自分の寝室へ訪れる意味もないのだからと、アデリナは考えていた。ヴァルターはその言葉に、目を見開く。あまりにも当然のことを聞いたことに、驚いたのだろうかと、彼女は不安になった。
「…そう、だったな…」
(…やはり、そうよね)
アデリナは少し落胆しながら、それではと別れた。浴室で体を清め、着替えて寝室へと戻り、今夜は待つ必要が無いからとベッドに横になる。
(眠れない…)
一向に眠れずに何度も寝返りをうって、無為に時間だけが過ぎていた。時計の針が二周しても眠れずに、ただ深く息を吐く。
(どうしてかしら…少し、寂しいわ…)
アデリナはここに嫁いできてから、初めて一人で眠る夜だ。こんなにもこのベッドは広かったのかと、不思議な感覚だ。嫁いでくるまでベッドは一人で眠るのが当然で、初めの頃は、ヴァルターに抱きしめられているのは眠りにくいわ、なんて考えていたこともあったのに。
「…っ?!」
アデリナはふと、寝室の扉がノックされた音が聞こえた気がして、飛び上がるように身を起こす。彼女はそのままそちらの方に体ごと向けるものの、扉はうんともすんとも言わずに静かにそこにあるだけだ。
(…はあ)
幻聴だったのかと落胆し、再び横になる。たとえ体を繋げずとも訪れてくれないだろうか、隣で眠ってくれないだろうか。アデリナはそんなことを考えてしまった自分に自嘲した。それをするのは、本当に愛し合っている夫婦くらいだろう。
(…こんなことではいけないわ!)
アデリナは自分を叱咤すると、夕食は共にすると家令に伝え、着替えて食堂へ向かった。彼女が食堂にたどり着くと、既にヴァルターは着席していて、彼女が入室するのと同時に顔を上げて声をかける。
「アデリナ、体は大丈夫か」
「はい。あの、旦那様…もうしわけございません」
出迎えなかったこと、子を成せなかったこと、そのどちらもの意をこめて、アデリナは謝罪した。ヴァルターは既に彼女の体の事は聞いているのだろう、軽く首を振って答える。
「気にするな」
いつもよりも優しげに聞こえた声音にほっとしつつも、その優しさにより一層申し訳なさが込み上げてくる。そんな彼女を気遣ってか、ヴァルターは全く関係の無い話をした。相変わらず直ぐに会話は終了してしまうが、その気遣いが彼女には嬉しかった。
アデリナは食事を終え、一緒に食堂を出て、書斎へ向かおうとするヴァルターに声をかけた。彼はこの後も仕事をするつもりだろうから、手短に済ませなければならないと端的に話を切り出す。
「旦那様」
「なんだ」
「今夜の訪れは…なさらない、ですよね」
月のもののうちは夫婦の営みが致せない、であれば、ヴァルターが自分の寝室へ訪れる意味もないのだからと、アデリナは考えていた。ヴァルターはその言葉に、目を見開く。あまりにも当然のことを聞いたことに、驚いたのだろうかと、彼女は不安になった。
「…そう、だったな…」
(…やはり、そうよね)
アデリナは少し落胆しながら、それではと別れた。浴室で体を清め、着替えて寝室へと戻り、今夜は待つ必要が無いからとベッドに横になる。
(眠れない…)
一向に眠れずに何度も寝返りをうって、無為に時間だけが過ぎていた。時計の針が二周しても眠れずに、ただ深く息を吐く。
(どうしてかしら…少し、寂しいわ…)
アデリナはここに嫁いできてから、初めて一人で眠る夜だ。こんなにもこのベッドは広かったのかと、不思議な感覚だ。嫁いでくるまでベッドは一人で眠るのが当然で、初めの頃は、ヴァルターに抱きしめられているのは眠りにくいわ、なんて考えていたこともあったのに。
「…っ?!」
アデリナはふと、寝室の扉がノックされた音が聞こえた気がして、飛び上がるように身を起こす。彼女はそのままそちらの方に体ごと向けるものの、扉はうんともすんとも言わずに静かにそこにあるだけだ。
(…はあ)
幻聴だったのかと落胆し、再び横になる。たとえ体を繋げずとも訪れてくれないだろうか、隣で眠ってくれないだろうか。アデリナはそんなことを考えてしまった自分に自嘲した。それをするのは、本当に愛し合っている夫婦くらいだろう。
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