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 塔の説明を終え、レアケはティータイムにしようとソファでくつろいだ。ティーポットには魔力を注げば湯がたまる魔法を仕掛けていて、早速それをエスタに使わせる。

「ああ、そうだ。一番大事なことを言い忘れておったの」

 初めて紅茶を淹れようとして悪戦苦闘しているエスタを微笑ましげに眺めながら、レアケは思いついたように声を上げた。なんとかポットに茶葉を入れ、湯をはったエスタはそれをテーブルに置いて顔を上げる。

「よいか、エスタ。国王がこちらに来られた際は、大人しくおれ。何が起きようとも、決して目は向けず、一言も言葉を発してはならぬぞ」

「国王?」

 この国の王は齢六十五と高齢だ。エスタは直接王を見たことはないが、彼の悪評はさんざん耳にしていた。

「国王って、あの、レイ…」

「阿呆!軽々しく、王の名を口にするな!」

 眉をしかめ、敬意などなくエスタが王の名を口にしようとする。だがそれを、レアケは大きな声を出して遮った。あまりにも大きな声にエスタは驚き、目を丸くして硬直する。レアケは自分が大声を出したことに気づくと、首を横に振って顔を片手で覆った。

「はあ。…本当に、礼儀も何も知らぬ小娘だの」

「うう…」

「言葉遣いも、礼儀も…そも、歩き方も酷い。足は開いてがに股歩きだわ、肩はいからせておるわ…」

「なっ、歩き方なんてどうでもいいだろ!」

「良くない、美しくない。そなた、それではまるで男のようだ」

 レアケの言葉に、エスタは顔を真っ赤にした。肩を震わせたエスタはかっとなり、つい大きな声で、決して言ってはならぬ言葉を発する。

「うるせえ!ババア!」

「ほう…」

 エスタはその場の温度がひゅっと下がったように感じた。目が据わり、じりじりと近づいてくるレアケの姿にエスタは恐怖を感じ、ぶるぶると震えだす。口だけにっこりと笑みを描いたレアケは、怯えて震えるエスタの頭を鷲掴みにした。

「そ、な、た。私が魔女だということを忘れておろう?」

「あだっ、いだだだだっ」

 レアケはそのまま力を加え、エスタは痛みに淑女らしからぬ悲鳴を上げる。止めようとレアケの手を両手で掴んだが、細い腕からは想像できないほどの力で、びくりともしなかった。

「いい?私がちょっと魔力を注げば、小娘の頭くらいひねり潰せるのよ」

「ひっ、…ご、ごめんなさいぃっ!魔女様、お姉さま!もう言いません!!」

 エスタが涙目で許しを乞うと、レアケはぱっと手を離した。しゃがみ込み、痛む頭を両手で擦るエスタを半眼で見下ろしながら、レアケは腰に手をあて、深く息を吐く。

「まったく、近頃の小娘は…」

 エスタはその言葉が心底年寄り臭いと思ったが、頭の痛みに口を噤んだ。
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