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第一章 砂漠の街 古代遺跡
船の墓場
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コクピットの椅子で頭を打って気絶していたアレックスは、2時間ほどしてから意識を取り戻した。重い瞼を開きながら目を覚ます。操縦レバーを引き、ジェットが故障して飛行不可能となったIGFを、地面に足を突き立てて、どうにかして立ち上がる。しばらくして砂嵐が流れていたモニターが回復する。不時着した地点は、軌道エレベーター付近では無く、そこからやや離れた湖に、半分水没した熱帯マングローブ林の浅瀬だった。機体頭部のセンサーで周囲を見回す。
「補給や街は当分なさそう……か」
困惑していたアレックスはようやく現状を呑み込んだが、部下に裏切られたショックは彼にとって大きかった。その真実に彼はただ打ちひしがれていた。
「突然背後から狙い撃ちしてくるなんて、一体なんのつもりなんだ。味方じゃなかったのか」
数十メートル移動すると、茂みが消えて視界が開けてきた。しかしそこに広がっていたのは信じられない光景だった。無数の巨大な鉄の残骸が辺り一面に埋まっている。近づいて見て分かったことだが、それは廃棄された航宙軍艦の残骸だった。そこら中に無数の鉄くずや残骸が広がる空虚な光景はまさに船の墓場と呼ぶには相応しい場所だった。
「これは凄い……IGF一機どころか、下手すれば何十機、いや何百機でも搭載できる代物だぞ。昔の連邦にこんな代物があったとはな」
「ここで一夜を明かすとするか、上手く身も隠せそうだ」アレックスは一番近場の強襲揚陸艦クラスの廃墟船に近づき、艦尾のウェルドックのゲートの下部に手を突っ込み、こじ開ける。ゲートが音を立てながら、開いていく。
ウェルドックの内部には、おそらく百機はくだらないであろう大量のIGFが並んでいた。その多くは現行の機体と大きく違い、肩部や頭部に突起があり、全体的に曲線を描いたような華奢ながらも、未来的かつ優美なフォルムをしていた。特筆すべきは普通のIGFにあって然るべき"足"が存在しないことだ。いや厳密にいうと足らしきものはあるが、スラスターと一体化し、尻の部分に向かって細く直線形の"足"が伸びている。
「すごい。これが旧連邦軍の機体なのか……、改修すればもしかして今でも使えるかもしれないな」そうぼやきながら開いたゲートを再び閉じて、上手く機体を隠せる空間を探す。
艦の中央あたりに大きく開けた空間が現れ、アレックスは機体の足を止める。
レバーを倒してしゃがみ、ハッチを開け腹部コクピットからバックパックを背負いながらハシゴ状のロープを使って降りる。バックパックから医療キットとシュラフを出す。
医療キットの小箱から包帯と鎮痛剤、絆創膏を取り出して、負傷したふくらはぎと顔に、適切な処置を施す。「暗くなるまでまだ時間がある。それまで艦内を散策するのもアリだな」
ウェルドックの階段を昇り、無機質な廊下を進み、長い階段を昇りブリッジの最上階に出る。
CICは現在の連邦宇宙軍が使用している軍艦とは比べ物にならない程に広大だった。
「しかしおかしいな、舵がどこにも見当たらない」
アレックスは疑問に思う。現在の連邦軍艦隊の軍艦は基本的に人間の操舵によって航行している。
「いや待てよ。もしかしたらこの艦自動制御なのか」
士官学校時代に小耳に挟んだことがあるが、大戦初期の頃は「エーアイ」とかいうコンピューターによる、完全自動制御システムがあったらしい。
「しかし驚いたな、この星にはこんな代物がごまんとあるのか」
他にも何か掘り出し物が無いかと、くまなく探索を続ける。
艦長の席であろう半六角形のモニター付きスペースに進み、一冊の本を見つける。
「っと、これは…航海日誌か。しかし今はあまり時間が無いな、後で読むか」とアレックスは航海日誌をバックパックにしまう。
元来た道を戻り、再び自機を隠しているウェルドックへと足を早める。ひしゃげたゲートの隙間から真っ赤な夕陽が顔を覗かせる。アレックスはシュラフに身を包み、眠りにつく。「久々の休養だ。しっかり休むか」ここのところ訓練、訓練の日々でまともに睡眠すらとれていない。仮眠はせいぜい10~20分くらいで時間外に寝ている者は、身体にむち打たれ強制的に叩き起こされる。
睡眠時間を極端に削り神経が高ぶらせた上に、ヘロインなどの薬物による洗脳教育を施し、極端な肉体労働により肉体を極限まで搾り取られる。まさに苛烈を極めた絵に描いた地獄のような日々だった。幸いアレックスは薬物に対して謎の耐性があったため、洗脳には至らなかったが、それからやっと解放される時が来たと知れたアレックスは、言葉にできない密かな喜びに包まれていた。
―そう思いながらアレックスは深い眠りにつく。
「補給や街は当分なさそう……か」
困惑していたアレックスはようやく現状を呑み込んだが、部下に裏切られたショックは彼にとって大きかった。その真実に彼はただ打ちひしがれていた。
「突然背後から狙い撃ちしてくるなんて、一体なんのつもりなんだ。味方じゃなかったのか」
数十メートル移動すると、茂みが消えて視界が開けてきた。しかしそこに広がっていたのは信じられない光景だった。無数の巨大な鉄の残骸が辺り一面に埋まっている。近づいて見て分かったことだが、それは廃棄された航宙軍艦の残骸だった。そこら中に無数の鉄くずや残骸が広がる空虚な光景はまさに船の墓場と呼ぶには相応しい場所だった。
「これは凄い……IGF一機どころか、下手すれば何十機、いや何百機でも搭載できる代物だぞ。昔の連邦にこんな代物があったとはな」
「ここで一夜を明かすとするか、上手く身も隠せそうだ」アレックスは一番近場の強襲揚陸艦クラスの廃墟船に近づき、艦尾のウェルドックのゲートの下部に手を突っ込み、こじ開ける。ゲートが音を立てながら、開いていく。
ウェルドックの内部には、おそらく百機はくだらないであろう大量のIGFが並んでいた。その多くは現行の機体と大きく違い、肩部や頭部に突起があり、全体的に曲線を描いたような華奢ながらも、未来的かつ優美なフォルムをしていた。特筆すべきは普通のIGFにあって然るべき"足"が存在しないことだ。いや厳密にいうと足らしきものはあるが、スラスターと一体化し、尻の部分に向かって細く直線形の"足"が伸びている。
「すごい。これが旧連邦軍の機体なのか……、改修すればもしかして今でも使えるかもしれないな」そうぼやきながら開いたゲートを再び閉じて、上手く機体を隠せる空間を探す。
艦の中央あたりに大きく開けた空間が現れ、アレックスは機体の足を止める。
レバーを倒してしゃがみ、ハッチを開け腹部コクピットからバックパックを背負いながらハシゴ状のロープを使って降りる。バックパックから医療キットとシュラフを出す。
医療キットの小箱から包帯と鎮痛剤、絆創膏を取り出して、負傷したふくらはぎと顔に、適切な処置を施す。「暗くなるまでまだ時間がある。それまで艦内を散策するのもアリだな」
ウェルドックの階段を昇り、無機質な廊下を進み、長い階段を昇りブリッジの最上階に出る。
CICは現在の連邦宇宙軍が使用している軍艦とは比べ物にならない程に広大だった。
「しかしおかしいな、舵がどこにも見当たらない」
アレックスは疑問に思う。現在の連邦軍艦隊の軍艦は基本的に人間の操舵によって航行している。
「いや待てよ。もしかしたらこの艦自動制御なのか」
士官学校時代に小耳に挟んだことがあるが、大戦初期の頃は「エーアイ」とかいうコンピューターによる、完全自動制御システムがあったらしい。
「しかし驚いたな、この星にはこんな代物がごまんとあるのか」
他にも何か掘り出し物が無いかと、くまなく探索を続ける。
艦長の席であろう半六角形のモニター付きスペースに進み、一冊の本を見つける。
「っと、これは…航海日誌か。しかし今はあまり時間が無いな、後で読むか」とアレックスは航海日誌をバックパックにしまう。
元来た道を戻り、再び自機を隠しているウェルドックへと足を早める。ひしゃげたゲートの隙間から真っ赤な夕陽が顔を覗かせる。アレックスはシュラフに身を包み、眠りにつく。「久々の休養だ。しっかり休むか」ここのところ訓練、訓練の日々でまともに睡眠すらとれていない。仮眠はせいぜい10~20分くらいで時間外に寝ている者は、身体にむち打たれ強制的に叩き起こされる。
睡眠時間を極端に削り神経が高ぶらせた上に、ヘロインなどの薬物による洗脳教育を施し、極端な肉体労働により肉体を極限まで搾り取られる。まさに苛烈を極めた絵に描いた地獄のような日々だった。幸いアレックスは薬物に対して謎の耐性があったため、洗脳には至らなかったが、それからやっと解放される時が来たと知れたアレックスは、言葉にできない密かな喜びに包まれていた。
―そう思いながらアレックスは深い眠りにつく。
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