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🌹『瑠璃のケエス:芽吹』💎本編🌹

Drop.006『 Ice and a litttle water〈Ⅰ〉』【2】

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(実家だってんならまだしも、俺が一人暮らししてるのは、花厳さんも知ってるし……)
 では、誰に“怒られる”というのか。
(あと考えられるような相手がいるとしたら……、隣人とか……、大家とか……? ――もしかして、壁薄い家に住んでるかもって心配してんのか……?)
 もしそうであるならば、何となく合点がいく。
 だが、そのような心配であれば、桔流には無用である。
 何せ桔流は、本業も兼業も、給料には恵まれている。
 そのため、25歳という年齢にしては、大分と良い条件の物件に住んでいるのだ。
 そんな桔流は、その旨を踏まえ、手早く返事を送信した。
 すると、タイミングが良かったのか、花厳からの返事はそこから数分で返ってきた。
『分かりずらくてごめんね
 怒られないかっていうのは、恋人さんにって意味だったんだ』
「――恋人?」
 すぐさま折り返されてきた返信に更に疑問が深まり、桔流は思わず声を出して復唱した。
 そして、ハッとして耳を澄ませた。
(聞かれて……ないよな……)
 とある事情から、かれこれ長い間恋愛というものを避けてきた桔流が、たったの一度でも“恋人”などと呟いたと知れれば、同僚たちがこぞって問い詰めてくるに違いない。
 そのような事から、周囲に人の気配がないか耳をそばだてた桔流だが、しばらくして安堵の息を吐いた。
 そして、改めてスマートフォンと向き合い、メッセージを打ち込んだ。
『そういう心配だったんですね
 こちらこそ、察しが悪くてすみません
 でも、そういう事なら大丈夫ですよ
 俺、恋人いないんで』
 花厳を安心させるため、普段より少し多めに絵文字を交えたメッセージを打ち終えると、桔流はメッセージを送信した。
 そして、自身の返事がメッセージ欄に表示されたのを確認すると、
(どこまでも相手に気を遣っちゃう人なんだな)
 と、苦笑した。
 💎
 その頃――。
(なんだ……違ったのか……)
 桔流からの返信を確認した花厳は、すっかり脱力していた。
 桔流と初めて二人きりで食事をした時。
 会話の中で、桔流は、花厳と同じバイセクシャルである事を知った。
 そして、いつからか花厳は、そんな桔流に自覚もないままに惚れていた。
 それゆえに、花厳は昨晩。
 桔流が酷く親しげに接していたがために、あのカラカル族の青年が桔流の恋人であると思った。
 だが、それは誤解であった事が、今しがた判明した。
 花厳は、それに安堵した。
 そして、
(まったく、何をホッとしてるんだか……。――これは自分で思ってる以上に、重症かもな)
 と、自身に呆れながらも今一度スマートフォンと向き合った花厳は、桔流からの誘いを喜んで受ける旨を伝えるべく、メッセージを綴った。
 
 💎
 
 数日後――。
 翌日の予定が互いにフリーとなっているその日の夜。
 桔流は、仕事終わりの花厳と待ち合わせ、自宅へと招いた。
 家に招かれるなり、向かい合って食事をするのに程よい上品なテーブルに案内された花厳は、早々にキッチンに立った桔流を見るなり、
「せっかくの休日なのに、料理をさせるのは申し訳ないな」
 と気遣ったが、桔流は嬉しそうに笑って言った。
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