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🍀本章🍀 完全版
第六章『 春怪の解式 』 - 03 /03
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「――それで、君がずっと傍に居てくれたら毎日楽しいだろうなって思ってね。――だから、君の体質も活かせて、研究も続けられて、何かあった時もすぐ助けられると思って、うちで働くっていう案も提示してみたんだ。――心に余裕があった方が、就職活動もしやすいだろうとも思ってね」
確かに、先生からその提案をされた時に、――もっと良い職場が見つかるかもしれないから、一応他の職場も見てみてね――とは言われた。
だが、僕としては今の職場より良い条件の職場などないと断言できた為、色々見ていますとは言いつつも、実は見ていなかったというのが真実だ。
「――でも、それでも俺のところを選んでくれて嬉しかったよ」
僕は、そんな先生の言葉に幸せを感じながら、当時の事を思い出しつつ、本心を告げた。
「……僕も、先生にお話を頂けたときは本当に嬉しかったです。夢のようでした……。――僕も、僕もずっと傍に居たかったんです……」
「そっか……。嬉しいよ。――もし君さえよければ、これからも傍に居て欲しいな」
先生は、そう言って僕の髪を撫でた。
僕は、それに心地よさと溢れんばかりの喜びを感じた。
そして、その喜びを噛みしめるようにして、
「……はい……居させてください……」
と言った。
すると先生はまた、うん、と言って、
「君が好きだよ、瑞尊君」
と続けた。
きっとこの先。
何度言われようとも、この言葉はその度に僕を殺すだろう。
そう思いながら僕は、
「僕も好きです、先生」
と思いを返した。
すると、そんな僕にひとつ微笑んだ先生は、そっと僕の手を握った。
そして、お互いの額を合わせるようにしてから、もう片方の手をゆっくりと僕の頬に添えた。
心臓がもたない。
僕はそう思ったが、後はもうすべてを先生に委ねる事にした。
初めて感じる先生とのその距離が、僕の脳を芯から溶かしてゆく。
身体中が熱い。
僕の体はちゃんと原型をとどめているのだろうか。
そんな事を思いながら、僕はただ先生との初めての距離を堪能した。
そして、お互いがその距離を確かめ合うようにした後、部屋にはしばしの静寂が訪れた。
その時の僕は、これまでにないほどに幸せを感じていた。
そして、そんな幸せを噛みしめていると、先生が言った。
「ねぇ、瑞尊君」
「はい……」
「俺、君がうちで働くようになってから、ひとつ悩みが出来てね――」
僕は、そんな先生の言葉に肝が冷えるような感覚を覚えつつも、恐る恐る続きを待った。
先生は続ける。
「最初はね、君の事が妙に可愛く見えるようになっただけだったんだけど――」
嗚呼。
そうして続けられた先生の言葉に、僕は心の中で思わず鳴いた。
僕は、今日だけで何度死ぬのだろう。
しかも、その先生の言葉にはどうやら続きがあるらしい事が分かる。
その為僕は、自分がここで爆散してしまわないように身構える事にした。
そして先生は続けた。
「どうにも徐々に別の気持ちも出てきちゃってね……。そうなってからは、俺はただ最低な人間なんだろうなって思っていたんだけど、――でも、あれは君が好きだったからなんだね。――理由が分かって安心したよ」
なんだろう。
ぼくはせんせいになにをおもわれていたんだろう。
僕は、すっかりバカになってしまった頭で必死に考えた。
あぁ。
もしかしたらせんせいは、すごいせいへきとか、ものすごいぷれいがすきなのかもしれない。
でも、そうだったとしても、ぼくはせんせいがすきだな。
そして僕は、バカになった頭でそこから色々な妄想を始めてしまい、果てには大変失礼な事を考え始めていたのだが、そんな妄想タイムは、次の先生の言葉で粉砕された。
「――最初、可愛いと思い始めた次に、キスしたいって思うようになってしまった時は自分でも少し驚いたけど……、できればその先の君を見たくなってからは、流石に頭を抱えたよ」
僕は、どちらかと言えば先生はそういった欲求があまりない方だと思っていた。
大誤算だった。
「瑞尊君」
「へっ、は、はい……」
「これも恋愛感情という事でいいのかな……。一応これも、君だけにしか抱いてない感情なんだけど」
先生が目を細めるようにしてそう訊いてくるので、僕ははくはくと口を動かすのが精いっぱいで、応答する事ができなかった。
先生は、こんなに異常なほどの色気をもつ人だっただろうか。
先生の瞳には、実は強力な魔力が宿っているのではないだろうか。
僕がそんな事を思っていると、当の先生は、悪戯っぽい笑みを作っていた。
もしかしたら僕は今、からかわれているのかもしれない。
そんな事から僕はふとそう思い、ちょっと悔しくなり反撃に出ようとした。
だが、
「でもこれは、俺だけなのかな。瑞尊君はどう? 瑞尊君は俺との事、考えたりした事あるのかい?」
と問われ、反撃どころではなくなってしまった。
「せ……先生」
「ん?」
そして、反撃も何もなくなってしまった僕は、白旗を振る事を決めた。
因みにだが、正直に言えば、想像した事があるか――どころの話ではない。
何度後悔し、何度懺悔したか分からないほど、僕は先生との事を想像したし、それで自身を慰めた事も数知れない。
だがそれは、先生には絶対に知られなくない事上位三位内に入るレベルの事だった。
だがきっと、先生にはもう隠しても無駄なのだろう。
何せこの悪戯っぽい笑みが、それを物語っている。
そして、ここで否定するのも、何か違うのではないか。
ここで否定するのは、この先生の気持ちを無下にする事になるのではないか。
だが、とはいえ――さすがに。
しかし、いやでも、しかし――。
そうして僕は、そんな葛藤の末に、――分かって下さい察して下さい勘弁して下さい――の意を込めて、白旗を振る事にしたのだった。
「先生、お願いです。――もう……、許して下さい……」
すると、先生はきょとんとした様子で言った。
「え? 許してって――」
だが、そう言った先生はその直後。
僕の白旗ではなく、別の事から僕の過去を察したらしく、ややおかしそうに笑いながら言った。
「――あぁ、はは。うん。そうか。うん。――わかった。ありがとう」
僕は、そんな先生の反応を不思議に思い、赤面しているのであろう己の顔を上げた。
すると先生は、相変わらず悪戯っぽい笑みで僕に微笑んだ。
そして、
「男はこういう時、分かりやすくていいね」
と言った。
つまり、――そういう事だ。
現状を理解した時。
僕は僕の僕を全力で叱責した。
そして、あまりの恥ずかしさにその場から逃げ出そうとした。
だが、そんな僕の腰に腕を回すようにした先生が、
「うんうん、大丈夫大丈夫」
と言いながら、僕の脱走を制したのだった。
どうやら逃がしてはもらえないらしい。
僕はこれまで、先生を甘く見過ぎていたようだ。
どうやら先生は、まったくもって奥手ではないと見える。
しかも、今見る限りでも、こういったやりとりも結構楽しんでいると見える。
僕はそんな、今までの優しい先生とは真逆ともとれるその一面を知り、ショックを受けるどころか問題なくドキドキした。
僕はマゾなのかもしれない。
「瑞尊君はそういう一つ一つの反応が可愛いよね」
許して下さいと言ったのが逆効果だったのだろうか。
あれが逆に先生のサディスティックな部分を刺激してしまったのだろうか。
僕は、相変わらず背丈の低い椅子に収まったまま、椅子ごと捕らわれるようにして先生に蹂躙されている。
「瑞尊君は今、何に興奮してるのかな」
「……う……わ、わからないです」
「わからないほど色々想像してるのかい」
(す、すごい意地悪だ!!)
僕は思わず、心の中でそう叫んだ。
顔も身体も熱くてたまらない。
だが、それでも先生は僕を逃がしてはくれないらしい。
「瑞尊君は、俺とするのは嫌?」
先生は、片方の手で僕の左手を優しく取り、僕の指を親指で撫で擦るようにして包み込んでくる。
何も特別な場所を触られているわけでもないのに、僕の体はそれだけでも反応を示してしまう。
そんな中ではあったが、僕は念願ともいえるこの機を逃したくないという一心で、先生の問いに男らしく男らしい返事をする事ににした。
「――や、やじゃ……ない、です」
すると、そんな男気を認めてくれたのか、先生はふと笑んでは、
「うん、良かった」
と言って、いつの間に緩めたのか分からない僕の帯をやんわりと引き抜くようにして、そっと僕との距離をなくした。
そして僕はまた、脳が痺れるような感覚に呑まれた。
また、それと同時に先生の大きな手が僕の肌を撫で擦る。
僕は、その感覚に耐えきれず、高まる感情と共に意図せず途切れ途切れに声帯を啼かせた。
そして、それから先生の手でひとしきり熱せられ、蕩けさせられた後、
「――ここだと背中痛くなっちゃうね。あっち行こうか」
と耳元で問われ、それすらも刺激になってしまうところ、僕は、もうなんでも大丈夫です、と言いそうになるのを堪え、
「はぃ……」
と答えた。
そしてその晩。
僕は結局、何度も死に、何度も爆散したのだった――。
「ふふ、おはようさんです」
「お、おはようございます」
そうして僕が何度目かの転生を経て眠りについた晩の翌朝。
女将さんや、旅館スタッフの怪たちが妙ににこにことしながら挨拶をしてくるので、僕はそれを不思議に思いながらも挨拶を返していた。
すると、僕の隣にいた先生がひとつ唸った。
「ううん……」
僕はそれもまた不思議に思い、首をかしげるようにして問う。
「どうしたんですか?」
すると先生は、
「うん……」
と、歯切れが悪そうにそう言った後、
「これは……バレてるな」
と言って苦笑した。
僕はその時。
それが何の事か分からずまた問い返したのだが、先生は結局教えてはくれなかった。
だが、その後。
部屋で二人きりになった後に、
「いやぁ……、女将さんは女性の勘だと思うんだけどね。怪たちは多分、――君の気が少し変わった事で気付いたんだろうね。――その、昨日の夜の事」
と教えてくれた。
そしてその事実を知った僕はといえば、――もう僕はこの部屋の外には出られないです――と訴えながら、文字通りその場に突っ伏したのであった。
確かに、先生からその提案をされた時に、――もっと良い職場が見つかるかもしれないから、一応他の職場も見てみてね――とは言われた。
だが、僕としては今の職場より良い条件の職場などないと断言できた為、色々見ていますとは言いつつも、実は見ていなかったというのが真実だ。
「――でも、それでも俺のところを選んでくれて嬉しかったよ」
僕は、そんな先生の言葉に幸せを感じながら、当時の事を思い出しつつ、本心を告げた。
「……僕も、先生にお話を頂けたときは本当に嬉しかったです。夢のようでした……。――僕も、僕もずっと傍に居たかったんです……」
「そっか……。嬉しいよ。――もし君さえよければ、これからも傍に居て欲しいな」
先生は、そう言って僕の髪を撫でた。
僕は、それに心地よさと溢れんばかりの喜びを感じた。
そして、その喜びを噛みしめるようにして、
「……はい……居させてください……」
と言った。
すると先生はまた、うん、と言って、
「君が好きだよ、瑞尊君」
と続けた。
きっとこの先。
何度言われようとも、この言葉はその度に僕を殺すだろう。
そう思いながら僕は、
「僕も好きです、先生」
と思いを返した。
すると、そんな僕にひとつ微笑んだ先生は、そっと僕の手を握った。
そして、お互いの額を合わせるようにしてから、もう片方の手をゆっくりと僕の頬に添えた。
心臓がもたない。
僕はそう思ったが、後はもうすべてを先生に委ねる事にした。
初めて感じる先生とのその距離が、僕の脳を芯から溶かしてゆく。
身体中が熱い。
僕の体はちゃんと原型をとどめているのだろうか。
そんな事を思いながら、僕はただ先生との初めての距離を堪能した。
そして、お互いがその距離を確かめ合うようにした後、部屋にはしばしの静寂が訪れた。
その時の僕は、これまでにないほどに幸せを感じていた。
そして、そんな幸せを噛みしめていると、先生が言った。
「ねぇ、瑞尊君」
「はい……」
「俺、君がうちで働くようになってから、ひとつ悩みが出来てね――」
僕は、そんな先生の言葉に肝が冷えるような感覚を覚えつつも、恐る恐る続きを待った。
先生は続ける。
「最初はね、君の事が妙に可愛く見えるようになっただけだったんだけど――」
嗚呼。
そうして続けられた先生の言葉に、僕は心の中で思わず鳴いた。
僕は、今日だけで何度死ぬのだろう。
しかも、その先生の言葉にはどうやら続きがあるらしい事が分かる。
その為僕は、自分がここで爆散してしまわないように身構える事にした。
そして先生は続けた。
「どうにも徐々に別の気持ちも出てきちゃってね……。そうなってからは、俺はただ最低な人間なんだろうなって思っていたんだけど、――でも、あれは君が好きだったからなんだね。――理由が分かって安心したよ」
なんだろう。
ぼくはせんせいになにをおもわれていたんだろう。
僕は、すっかりバカになってしまった頭で必死に考えた。
あぁ。
もしかしたらせんせいは、すごいせいへきとか、ものすごいぷれいがすきなのかもしれない。
でも、そうだったとしても、ぼくはせんせいがすきだな。
そして僕は、バカになった頭でそこから色々な妄想を始めてしまい、果てには大変失礼な事を考え始めていたのだが、そんな妄想タイムは、次の先生の言葉で粉砕された。
「――最初、可愛いと思い始めた次に、キスしたいって思うようになってしまった時は自分でも少し驚いたけど……、できればその先の君を見たくなってからは、流石に頭を抱えたよ」
僕は、どちらかと言えば先生はそういった欲求があまりない方だと思っていた。
大誤算だった。
「瑞尊君」
「へっ、は、はい……」
「これも恋愛感情という事でいいのかな……。一応これも、君だけにしか抱いてない感情なんだけど」
先生が目を細めるようにしてそう訊いてくるので、僕ははくはくと口を動かすのが精いっぱいで、応答する事ができなかった。
先生は、こんなに異常なほどの色気をもつ人だっただろうか。
先生の瞳には、実は強力な魔力が宿っているのではないだろうか。
僕がそんな事を思っていると、当の先生は、悪戯っぽい笑みを作っていた。
もしかしたら僕は今、からかわれているのかもしれない。
そんな事から僕はふとそう思い、ちょっと悔しくなり反撃に出ようとした。
だが、
「でもこれは、俺だけなのかな。瑞尊君はどう? 瑞尊君は俺との事、考えたりした事あるのかい?」
と問われ、反撃どころではなくなってしまった。
「せ……先生」
「ん?」
そして、反撃も何もなくなってしまった僕は、白旗を振る事を決めた。
因みにだが、正直に言えば、想像した事があるか――どころの話ではない。
何度後悔し、何度懺悔したか分からないほど、僕は先生との事を想像したし、それで自身を慰めた事も数知れない。
だがそれは、先生には絶対に知られなくない事上位三位内に入るレベルの事だった。
だがきっと、先生にはもう隠しても無駄なのだろう。
何せこの悪戯っぽい笑みが、それを物語っている。
そして、ここで否定するのも、何か違うのではないか。
ここで否定するのは、この先生の気持ちを無下にする事になるのではないか。
だが、とはいえ――さすがに。
しかし、いやでも、しかし――。
そうして僕は、そんな葛藤の末に、――分かって下さい察して下さい勘弁して下さい――の意を込めて、白旗を振る事にしたのだった。
「先生、お願いです。――もう……、許して下さい……」
すると、先生はきょとんとした様子で言った。
「え? 許してって――」
だが、そう言った先生はその直後。
僕の白旗ではなく、別の事から僕の過去を察したらしく、ややおかしそうに笑いながら言った。
「――あぁ、はは。うん。そうか。うん。――わかった。ありがとう」
僕は、そんな先生の反応を不思議に思い、赤面しているのであろう己の顔を上げた。
すると先生は、相変わらず悪戯っぽい笑みで僕に微笑んだ。
そして、
「男はこういう時、分かりやすくていいね」
と言った。
つまり、――そういう事だ。
現状を理解した時。
僕は僕の僕を全力で叱責した。
そして、あまりの恥ずかしさにその場から逃げ出そうとした。
だが、そんな僕の腰に腕を回すようにした先生が、
「うんうん、大丈夫大丈夫」
と言いながら、僕の脱走を制したのだった。
どうやら逃がしてはもらえないらしい。
僕はこれまで、先生を甘く見過ぎていたようだ。
どうやら先生は、まったくもって奥手ではないと見える。
しかも、今見る限りでも、こういったやりとりも結構楽しんでいると見える。
僕はそんな、今までの優しい先生とは真逆ともとれるその一面を知り、ショックを受けるどころか問題なくドキドキした。
僕はマゾなのかもしれない。
「瑞尊君はそういう一つ一つの反応が可愛いよね」
許して下さいと言ったのが逆効果だったのだろうか。
あれが逆に先生のサディスティックな部分を刺激してしまったのだろうか。
僕は、相変わらず背丈の低い椅子に収まったまま、椅子ごと捕らわれるようにして先生に蹂躙されている。
「瑞尊君は今、何に興奮してるのかな」
「……う……わ、わからないです」
「わからないほど色々想像してるのかい」
(す、すごい意地悪だ!!)
僕は思わず、心の中でそう叫んだ。
顔も身体も熱くてたまらない。
だが、それでも先生は僕を逃がしてはくれないらしい。
「瑞尊君は、俺とするのは嫌?」
先生は、片方の手で僕の左手を優しく取り、僕の指を親指で撫で擦るようにして包み込んでくる。
何も特別な場所を触られているわけでもないのに、僕の体はそれだけでも反応を示してしまう。
そんな中ではあったが、僕は念願ともいえるこの機を逃したくないという一心で、先生の問いに男らしく男らしい返事をする事ににした。
「――や、やじゃ……ない、です」
すると、そんな男気を認めてくれたのか、先生はふと笑んでは、
「うん、良かった」
と言って、いつの間に緩めたのか分からない僕の帯をやんわりと引き抜くようにして、そっと僕との距離をなくした。
そして僕はまた、脳が痺れるような感覚に呑まれた。
また、それと同時に先生の大きな手が僕の肌を撫で擦る。
僕は、その感覚に耐えきれず、高まる感情と共に意図せず途切れ途切れに声帯を啼かせた。
そして、それから先生の手でひとしきり熱せられ、蕩けさせられた後、
「――ここだと背中痛くなっちゃうね。あっち行こうか」
と耳元で問われ、それすらも刺激になってしまうところ、僕は、もうなんでも大丈夫です、と言いそうになるのを堪え、
「はぃ……」
と答えた。
そしてその晩。
僕は結局、何度も死に、何度も爆散したのだった――。
「ふふ、おはようさんです」
「お、おはようございます」
そうして僕が何度目かの転生を経て眠りについた晩の翌朝。
女将さんや、旅館スタッフの怪たちが妙ににこにことしながら挨拶をしてくるので、僕はそれを不思議に思いながらも挨拶を返していた。
すると、僕の隣にいた先生がひとつ唸った。
「ううん……」
僕はそれもまた不思議に思い、首をかしげるようにして問う。
「どうしたんですか?」
すると先生は、
「うん……」
と、歯切れが悪そうにそう言った後、
「これは……バレてるな」
と言って苦笑した。
僕はその時。
それが何の事か分からずまた問い返したのだが、先生は結局教えてはくれなかった。
だが、その後。
部屋で二人きりになった後に、
「いやぁ……、女将さんは女性の勘だと思うんだけどね。怪たちは多分、――君の気が少し変わった事で気付いたんだろうね。――その、昨日の夜の事」
と教えてくれた。
そしてその事実を知った僕はといえば、――もう僕はこの部屋の外には出られないです――と訴えながら、文字通りその場に突っ伏したのであった。
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