上 下
2 / 10

ばあちゃん女神様のルームツアーを受ける

しおりを挟む
甘ったるい喋り方の『人』は、うねる金髪、グリーンな瞳、ぷるぷるとしたピンク色下唇。
ボン、きゅっ、ボン!としたナイスバディな『人』で。

「どちらさんで?」

宙に浮き周りにキラキラとしたエフェクト撒き散らした女性に声をかけた。

「どぉも。わたくしはこの世界の女神を拝命しております、シェラサーザと申します。」

空中で器用に正座をして、三つ指ついて挨拶した女神。

「…ご丁寧にありがとうございます。わたしは境ひかる、60歳です。」
「突然此処に来たものですから…」

女神はガバリと顔を上げ、わたしの目の前にズリズリと空中を移動してきて

「突然ですが、ひかるさん、異世界で第2の人生を送って貰おうと女神のギフトを授けました!」

女神様の話を聞くと、どうやら天界の人達の娯楽の中に下界観察があって、1人の(一柱の)神様がわたしを気に入って観察していたそうだ。
で、最近わたしが離婚して楽しそうにしていたので、残りの人生をもっと楽しんで貰たくてこの世界に喚んだ。と。

わたしの脳内ダダ漏れな妄想を実現化するべく、部下の女神様やら眷族達総動員して
妄想通りの環境を整えたらしい。

その成果がこのタイニーハウス。
及びその周辺。

外観は吹けば飛ぶような板張りのボロい小屋だが、内装は最新設備が揃ったハウス。
ハウスの横には巨大な樹。
世界樹というらしい。 
この樹を中心に「聖域結界」とやらが作動していて、悪意等持って此処に近づく人達は結界に弾かれるそうだ。
結界の位置に柵をしてあるから、後で確認してくれだってさ。

そして、テンション高めな女神様は、どうやら妄想を実現する為の陣頭指揮をとっていたらしく、ムフンムフンと鼻息あらくルームツアーをしてくれた。

「まずはコチラです!」
「玄関は履物脱いで上がる日本仕様にしました!」
「上がって右手をご覧ください。造り付けの収納ソファです、ベッドとしてもご利用できます。」
「これ!これご覧ください!スプリングです!地球のヤツ再現しました!」
「マット上げると収納スペースです」
「日本の貴方の部屋にあった買い置き商品等持ち込みました!」
「あ、これ。貴方のお布団と毛布…」

女神が持ち上げた毛布を見た伊藤さんは、わたしの背中から飛び降りて
毛布の上にダイビング。
すかさずグルグル呻りながらフミフミを始めた。

「えー…と、あとコチラ、キッチンです」
「シンクは小さいですがコンロは2口用意しました。」
「水と火は、魔石使用ですが…此処の引き出しに魔石を入れて下さい」
「この大きさ魔石で1年持ちます」

蛇口付近にある窪みと、コンロ近くにある窪みに青い魔石と赤い魔石をセットする。

「食器は…木製しかなくて申しわけありません」
「そして薪ストーブです、薪は此処に置いて火種は火魔法で。」
「ストーブ横の階段上ると、上はベッドルームとクローゼットがあります。」
「ベッド下のスペースに、トイレとシャワー室があります、」

はぁはぁ、と息をきらし
掻いてもいない汗を手のひらで拭うふりをすりる。

わたしは喋り続ける女神の後ろを、フンフン頷きながらハウスの中を見て回った。

いい!タイニーハウスいい!

壁際に造り付けられた折り畳み式のテーブルを出し、どこからか出したコーヒーを勧められた。

「えー…説明は以上です。」
「なにかご質問ありましたら、女神像に祈りを捧げて下さい」

女神像?

「こちらを」

空中から出した白い女神像を渡され

「これ、何処かに飾っておいてくださいね」

何から何までありがとう?
対価は何が必要なのかな?

「対価は…この世界で聖女として存在してください。」
「聖女は存在するだけでいいんです。」

「小説なんかだと、魔物退治だとか浄化とかするみたいだけど?」

「いえ、世界樹と聖女が居れば浄化も必要ありません。
必要な程の瘴気が溢れるのは、スタンピード位です」

それなら…いいかな。、なにもしないよ?

「えぇ、貴方には1人の時間を満喫して欲しいだけです」




そして、わたしの異世界生活が始まった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

箱庭の異世界でスローライフ万歳!

文月 蓮
ファンタジー
神様が落としたコレクターズボックスの角に頭をぶつけて死んでしまった葉月は、生前プレイしていたサンドボックス型のゲームによく似た世界で、若返り、蘇った。 せっかくだから、農業やものづくりをとことん楽しんでやる。 異世界でスローライフを楽しむ主人公の、のんびり、まったりなお話。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

僕はその昔、魔法の国の王女の従者をしていた。

石のやっさん
ファンタジー
主人公の鏑木騎士(かぶらぎないと)は過去の記憶が全く無く、大きな屋敷で暮している。 両親は既に死んで居て、身寄りが誰もいない事は解るのだが、誰が自分にお金を送金してくれているのか? 何故、こんな屋敷に住んでいるのか……それすら解らない。 そんな鏑木騎士がクラス召喚に巻き込まれ異世界へ。 記憶を取り戻すのは少し先になる予定。 タイトルの片鱗が出るのも結構先になります。 亀更新

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

処理中です...