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「ジャイルズさんさ
俺が話しかけたの迷惑そうだったのにさ
何なの?」
リックの本名が分かったあと、ジルはすごく考え込んでいた
ちょっと引くくらいに
だから俺は置いていくことにした
遅くなってご飯抜きとかだったら困る
非常に
急激に成長している俺の体は元の世界の成長期の時と比べ遜色ない食欲に満ち満ちていた
話しかけると迷惑をかけることもある、と学習した俺は二度とジャイルズ氏に絡まないという決意を秘めて立ち去ったのに、当のジャイルズ氏に付け回されている
「…いや、あの…よろしければリチャード・シュナイダーを紹介して頂けないかと」
「え?
知り合いじゃないの?」
「知り合いだなんてとんでもない
あの方は英雄ですよ」
「…?」
俺はリックの姿を思い浮かべた
確かに体格はものすごくいい
クマのようだ
べらぼうに強い
なるほど
コミュニケーション、特に初対面の相手の時のぎこちなさ
よれよれの服
武器も特に所持している様子がない
「俺の知っているリックは、ビ…ビアンカの兄で強くて毒舌でとんでもなくコミュニケーションが下手でデカいことを除けばただのおっさんなんだけど」
「そんだけオプション付いてたらただのおっさんは無理ですよ」
「でも英雄ってなんの?
俺、本はそこそこ読んだけどリチャード・シュナイダーの名前は見たことないよ」
「…俺はアンダーグラウンドで動いている人間です
だから水面下での動きもそこそこ知っています」
「とても5歳とかその辺の子供には見えないね」
「まぁ5歳ではないので」
「6歳だった?
間違えてごめん」
「いえ6歳でもなく…」
「じゃあ7―」
「違います」
「…逆に4歳?」
「違いますよ」
「めんどくさいな
何歳なの?
あ、(この世界では)歳上なのにタメ口でごめん、なさい」
「タメぐ―?
…いえ
言っていることが本当なら王子ですから」
「信じてないのかよ」
本当に王子だよ、不本意ながら
大体疑ってるくせに、結構ぶっちゃけてるけど大丈夫なのか?
あとタメ口ってこっちでは言わないみたいだな
どう言えばいいんだろう
「まぁいざとなれば僕の方が強いので」
ナイフの刃がキラリと光る
やめろよ
怖いから
チビってやろうか
「…あと、俺は16です」
へぇ
「…ん?」
「16歳です」
「…言いたくないんだね
ごめん、聞いて」
「本当に16歳なんですよ」
「いや、だって見た目俺と変わらないじゃん」
「…俺もさっきあなたにそう言いましたよね
まぁ意味は逆ですけど」
「俺にもよく分からないんだよね、この成長のスピード感」
「…世界と取引したのではないんですか?」
「ジャイルズさんはしたの?」
「ジルでいいですよ」
「あー、うん
ジル」
時々、今?って思うようなタイミングで答えが返って来る
「…赤ん坊であるはずの王子がこの姿ならそうなのかと…」
「だったら俺の成長速度で本人か疑うなんて酷いんじゃないの?」
「普通はしないんですよ
割に合わないから」
「え?」
「いや、厳密には世界的には合いますけど…
取引は当価値のものを差し出さないといけないので大きいものを取り扱うほど失うものも大きいのですよ」
なるほど
「何を手に入れたの?」
「…」
文脈から察するに取引をしたであろうジルからは決定的な返答はない
食えないガキ、いや、青年ゆえだろうか
「あ、プライバシーか
ごめん」
「…いえ…」
「で、英雄のリックになんで会いたいの?」
「僕の知り合い、を守って欲しいんです」
なんとも含みを持たせた言い方である
「恋人?」
「違います」
「あ、そう」
「でも…狙われている、と思うので」
「…大変だね」
「そうですね」
狙われてるってストーカーとかそういうのかな
でも、ジルはめちゃくちゃ強い
そんなジルが頼りたい程リックがすごいやつなのは(実感できないが)分かった
でも色々釈然としないこともある
「俺が王子だったらリックに保護されているって思ったんだよね」
「…はい
リチャード・シュナイダーは妹君様を王の魔の手から逃すために動いていらっしゃったので
大切な妹君様のご子息を保護するのは当然かと」
「…そういう情報もアンダーグラウンドで手に入れたの?」
「そうです」
「リックってサーカス団の団長だよね?」
「まぁそういった活動もしていましたね
サーカス団というのは、移動していても特殊なスキルや道具を持っていても怪しまれることはありません
いい隠れ蓑になります」
「…王国軍の反乱でもしてるの?」
「いいえ
妹君様の1件の前は国境で他国からの侵略を防ぐ活動がメインでしたね、あのサーカス団は」
「むしろ王国側だったんだ」
「そういうわけでもありません
ここで長話するのも安全では無いので、案内していただけますか?」
すごくいい所で話を切られた
何かペース崩されるな
「いや、ジルが信頼できるかどうか分からないじゃない」
なんか悔しいので抵抗してみた
「腕力に訴えてもいいのですが」
やめてくれ
「後々面倒なことになるのはイヤなので…
どうしたものでしょう?」
リックはとりあえず強そうなのでとりあえず連れていこう
決してジルからの脅しに屈したわけではないし、面倒事を押し付けたい訳でもない
うん
違うとも
その時
「…ジル、何してる?」
何となく聞き覚えのある声が俺の後ろから聞こえてきた
俺が話しかけたの迷惑そうだったのにさ
何なの?」
リックの本名が分かったあと、ジルはすごく考え込んでいた
ちょっと引くくらいに
だから俺は置いていくことにした
遅くなってご飯抜きとかだったら困る
非常に
急激に成長している俺の体は元の世界の成長期の時と比べ遜色ない食欲に満ち満ちていた
話しかけると迷惑をかけることもある、と学習した俺は二度とジャイルズ氏に絡まないという決意を秘めて立ち去ったのに、当のジャイルズ氏に付け回されている
「…いや、あの…よろしければリチャード・シュナイダーを紹介して頂けないかと」
「え?
知り合いじゃないの?」
「知り合いだなんてとんでもない
あの方は英雄ですよ」
「…?」
俺はリックの姿を思い浮かべた
確かに体格はものすごくいい
クマのようだ
べらぼうに強い
なるほど
コミュニケーション、特に初対面の相手の時のぎこちなさ
よれよれの服
武器も特に所持している様子がない
「俺の知っているリックは、ビ…ビアンカの兄で強くて毒舌でとんでもなくコミュニケーションが下手でデカいことを除けばただのおっさんなんだけど」
「そんだけオプション付いてたらただのおっさんは無理ですよ」
「でも英雄ってなんの?
俺、本はそこそこ読んだけどリチャード・シュナイダーの名前は見たことないよ」
「…俺はアンダーグラウンドで動いている人間です
だから水面下での動きもそこそこ知っています」
「とても5歳とかその辺の子供には見えないね」
「まぁ5歳ではないので」
「6歳だった?
間違えてごめん」
「いえ6歳でもなく…」
「じゃあ7―」
「違います」
「…逆に4歳?」
「違いますよ」
「めんどくさいな
何歳なの?
あ、(この世界では)歳上なのにタメ口でごめん、なさい」
「タメぐ―?
…いえ
言っていることが本当なら王子ですから」
「信じてないのかよ」
本当に王子だよ、不本意ながら
大体疑ってるくせに、結構ぶっちゃけてるけど大丈夫なのか?
あとタメ口ってこっちでは言わないみたいだな
どう言えばいいんだろう
「まぁいざとなれば僕の方が強いので」
ナイフの刃がキラリと光る
やめろよ
怖いから
チビってやろうか
「…あと、俺は16です」
へぇ
「…ん?」
「16歳です」
「…言いたくないんだね
ごめん、聞いて」
「本当に16歳なんですよ」
「いや、だって見た目俺と変わらないじゃん」
「…俺もさっきあなたにそう言いましたよね
まぁ意味は逆ですけど」
「俺にもよく分からないんだよね、この成長のスピード感」
「…世界と取引したのではないんですか?」
「ジャイルズさんはしたの?」
「ジルでいいですよ」
「あー、うん
ジル」
時々、今?って思うようなタイミングで答えが返って来る
「…赤ん坊であるはずの王子がこの姿ならそうなのかと…」
「だったら俺の成長速度で本人か疑うなんて酷いんじゃないの?」
「普通はしないんですよ
割に合わないから」
「え?」
「いや、厳密には世界的には合いますけど…
取引は当価値のものを差し出さないといけないので大きいものを取り扱うほど失うものも大きいのですよ」
なるほど
「何を手に入れたの?」
「…」
文脈から察するに取引をしたであろうジルからは決定的な返答はない
食えないガキ、いや、青年ゆえだろうか
「あ、プライバシーか
ごめん」
「…いえ…」
「で、英雄のリックになんで会いたいの?」
「僕の知り合い、を守って欲しいんです」
なんとも含みを持たせた言い方である
「恋人?」
「違います」
「あ、そう」
「でも…狙われている、と思うので」
「…大変だね」
「そうですね」
狙われてるってストーカーとかそういうのかな
でも、ジルはめちゃくちゃ強い
そんなジルが頼りたい程リックがすごいやつなのは(実感できないが)分かった
でも色々釈然としないこともある
「俺が王子だったらリックに保護されているって思ったんだよね」
「…はい
リチャード・シュナイダーは妹君様を王の魔の手から逃すために動いていらっしゃったので
大切な妹君様のご子息を保護するのは当然かと」
「…そういう情報もアンダーグラウンドで手に入れたの?」
「そうです」
「リックってサーカス団の団長だよね?」
「まぁそういった活動もしていましたね
サーカス団というのは、移動していても特殊なスキルや道具を持っていても怪しまれることはありません
いい隠れ蓑になります」
「…王国軍の反乱でもしてるの?」
「いいえ
妹君様の1件の前は国境で他国からの侵略を防ぐ活動がメインでしたね、あのサーカス団は」
「むしろ王国側だったんだ」
「そういうわけでもありません
ここで長話するのも安全では無いので、案内していただけますか?」
すごくいい所で話を切られた
何かペース崩されるな
「いや、ジルが信頼できるかどうか分からないじゃない」
なんか悔しいので抵抗してみた
「腕力に訴えてもいいのですが」
やめてくれ
「後々面倒なことになるのはイヤなので…
どうしたものでしょう?」
リックはとりあえず強そうなのでとりあえず連れていこう
決してジルからの脅しに屈したわけではないし、面倒事を押し付けたい訳でもない
うん
違うとも
その時
「…ジル、何してる?」
何となく聞き覚えのある声が俺の後ろから聞こえてきた
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