転生している場合じゃねぇ!

E.L.L

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「質問があります」

「却下」

「聞けよ」

「ストックが減るぞ」

「うっ…」

いや、それでも
これは聞かねばならぬ

「ちゃ、ちゃんと対価は用意しますとも」

そう
俺にはとっておきがある

「ほーん…」

少しは興味を持てよ

「魔王がいないってどういうこと?
辺境の地だからその存在が知られてないってこと?
それともそんなやついないの?」

「質問が多いな」

こんな言い方はバチが当たるかもしれないが
魔王はいてもらわなくては困る

「そもそも魔王がいないなら俺を召喚する意味なくない?
ですか?」

最後の敬語はまとめて付けた
ことにして貰えないだろうか
どんなに見えなくともこいつは神(仮)だ

「その場合お前は死んでるが」

「だけど、魔王が存在しないなら俺は元の世界には戻れないですよね?
魔王を倒したボーナスが元の世界への帰還なんですから」

「…魔王は存在する」

「王都でも認知されてないなんて随分モグリですね」

「未来にな」

「は?」

「魔王はこれから登場するんだ」

「なんですか、そのノストラダムスみたいな発言は」

「これは確定事項だ
天気予報より信憑性がある」

「天候よりも深刻な問題でしょうよ」

「全農家の皆様にスライディング土下座しろよ
それにノストラダムスは完全な眉唾じゃねぇ」

「異世界の存在がノストラダムスを語らないでください」

「お前、めんどくさ
彼女に振られろ」

「それはいっそ息の根を止めてください」

「止まってんだろ」

「まだですから」

「大体、お前今の状態で魔王と対決出来んの?
風の前の塵どころの話じゃねぇぞ」

「何でたまに俺のいた世界の要素ぶち込んでくるんです?」

「お前の脳みそのレベルに合わせてやってんだろ」

そこより気遣って欲しいところ沢山あるんですけど

「と、とにかく
まだ魔王は現れていないけどこれから現れるってことですね」

「そんなところだ」

「もしかして巨大な台風の呼び名とか、そういうのだったりします?」

「しない」

「魔王って魔法使えるんですか?」

「アホなこと聞くな」

「いや、大事なことですって
俺のスペック考えてくださいよ」

「大体のことが平均+‪αくらい」

「…まぁ元の世界の俺はそんな感じでしたね」

全てはナツに振り向いてもらうための努力だったな
ナツに会いたい
全ての思考がナツに通じてしまう

「気持ち悪い顔をするな」

「シンプルに酷い」

こんなに綺麗なビジュアルからは想像もできないだろうよ、この口の悪さは

「そもそも、まだいないのならあなたが何とかして現れないようにしたらいいじゃないですか」

「それが出来たらポンコツの召喚なんかしない」

ここに来てから俺のメンタルは鍛えられてムキムキだ
その内シックスパックになるかもしれない
俺の元いた世界なら何かのハラスメントで訴えられそうだ

「話してやっただろ
何と引き換えにするんだ?」

舌打ちすんなよ

「情報です」

こちらに視線を向けられる
赤い瞳がいつもよりこちらに興味ありげだ
いい導入だ

「もちろん、ナツと俺の馴れ初めから現在ま―」

「死ぬほどいらねぇな」
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