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人類はガイアに都合よく利用されて捨てられた
人類はガイアに都合よく利用されて捨てられた
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レーザー砲衛星の中で作業していた若い女性オペレーターは、休憩中の上司をインターカムで呼び出した。
「隕石がこちらに向かってきています。月面基地より、破壊処置命令が発令されました」
ディスプレイの向こうで、中年の男が慌てて葉巻を背後に隠していた。
『そ……そうか。今行く』
「衛星内は全面禁煙ですけど」
『固いこと言うなよ。子猫ちゃん』
程なくして男は制御室に入ってきた。
「やあ、おはよう。で、状況は?」
「哨戒衛星が地球衝突軌道にある小惑星を発見しました。衝突の可能性は九十八%。地球到達予定時刻は四十時間後」
「そうか」
男はガンマ線レーザー砲の発射準備にとりかかった。
「なあ」
機器を操作しながら、男は話しかける。
「俺たちは、なんでこんな事やってるんだろうな?」
「なにを言ってるんです。地球を……」
守るためと言い掛けて、女は押し黙った。
もう地球には守るべき人類はいないのだから。
数ヶ月前、未知のウイルス病が発生し、瞬く間に全世界に広がった。対策を立てる暇もなく、人類は全滅したのである。
月面基地に最後の通信が届いたのは一ヶ月前の事。『地球には絶対に降りるな』という命令だった。
幸いな事に、すでに月面基地だけで自給自足が可能な状態になっていたため、そこにいた二万人の人たちは生き延びる事ができたが、彼らは永遠に故郷を失ったのだ。
「隕石を撃ち落としたって、もう地球には誰もいない。女房も子供も友達もみんなウイルスに殺されてしまったのに……」
「でも、通信が途絶えただけで、まだ生きている人だっているかもしれません。ワクチンさえできれば、いつか私たちだって地球に戻れるかも……」
「どうだかな。地球は俺たちを受け入れてくれないかもしれないぞ?」
「え?」
「勘違いしないでくれ。ここで言う『地球』とは地球そのものという意味だ」
「どういうことですか?」
「いやなに……地球を離れる前に、彼女から妙な事を聞いてな」
「ちょっと待って下さい。彼女って? 奥さんいらっしゃったんじゃないんですか?」
「固いこと言うなよ。それにもう別れた。俺に女房がいると知った途端、出て行ったよ」
女は嫌悪感に顔をしかめる。
「で、彼女さんはどんな事を言ってたんです?」
「ガイア仮説って知ってるか?」
「ガイア仮説! ええ、知ってますけど」
惑星地球と、その表面に生息する生物は、相互に影響しあい環境を作り上げている一つの巨大な生命体ではないかという説は二十世紀からあった。その生命体はガイアと呼ばれている。
「彼女が言うには、ガイアには独自の意思があるそうだ。で、自分にはその声が聞こえると」
「そんな話を信じたんですか?」
「いや、電波な女の妄言と思っていた」
「電波な女が好みなんですか?」
「いや、どっちかというと苦手だ。ただ、身体だけはよかったから」
「ケダモノ」
女はボソっと呟く。
その声は男の耳に入ったが、男はあえて聞こえないふりをして話を続けた。
「最初は妄言だと思っていたが、最近はそれが本当のような気がしてな。もし、ガイアが本当に意思を持っているなら、俺たちの帰還を拒むかもしれない」
「なぜ、そう思うんですか?」
「俺だって、バカバカしい妄想だと思うよ。でもな、この一連の出来事がガイアの意思なら辻褄が合ってくるんだ」
「辻褄?」
「まず、ガイアにとって人類はすげーウザい存在だったはずだ」
「それは、その彼女さんが言ったんですか?」
「いや、俺の想像だ。もし俺がガイアだったら、これだけ環境を破壊しまくった人類はウザいと思う。滅ぼす動機は十分にある」
「ウザいだけで滅ぼされちゃたまりませんわ。それに人類を滅ぼしたのはウイルスですよ」
「エボラウイルスは、ガイアの不可侵領域を守っていた免疫抗体のようなものという説がある。それが本当だとするなら、ガイアはウイルスを操作できる事になる」
「目的と手段があったとして、なぜ今なんです? そんな事できるなら、とっくにやっていてもおかしくないじゃないですか?」
「それだよ。なぜ今になってガイアは人類を滅ぼしたかだ」
「今までお情けで生かしてやっていたけど、とうとう堪忍袋の尾が切れたってとこでしょうか?」
「情け? 違うな。彼女の話では人類もまたガイアが作り出したそうだ。ある目的のためにな」
「目的ってなんです?」
「俺たちだよ」
「え?」
「俺たちが今やっている仕事はなんだ?」
「なにって、地球を隕石から守って……まさか!?」
地球を巨大隕石の衝突から守るMDS(隕石防御システム)の必要性が叫ばれるようになったのは二十一世紀の前半。それが完成し稼働し始めたのは一年ほど前の事である。この二人は、その時から隕石を破壊するためのレーザー砲衛星に勤務していた。
未知のウイルスによる病気が蔓延する直前のことである。
「そうだよ。ガイアは宇宙からの災厄を防ぐために、宇宙へ行ける生物として人間を作り出したそうだ」
「宇宙からの災厄?」
「地球の生物史上、大量絶滅が五回起きている。その原因の一つはガンマ線バースト。一つは巨大隕石。五回のうち二回は宇宙からの災害だ。どれもガイアにとって大変な痛手だったのだろう。ガイアとしては、対策を立てるために宇宙へ行く必要があった」
「そのために、人間を作り出したというのですか?」
「ああ。だからガイアは、今までは人間がなにをやらかしても大目に見てくれていたんだろう。人間がいないと隕石から守る手段が作れない。だからMDSが完成するまで我慢していた。そして完成するのを見計らって、ウイルスを撒いたんだな」
「でも、ガイアに意思があるなら、警告を人間に伝える事だってできたのではないでしょうか?」
「最初から滅ぼそうとしている奴らに、そんな事するかよ」
男は黙り込んで機器の操作に戻った。
「そうでしょうか? ガイアだって最初から、人類を滅ぼす気なんかなかったんじゃないのかしら?」
「なぜだ?」
男は振り向きもしないで答える。そのため女が席を立った事に気が付かなかった。
「ガイアは地球を守るために、宇宙へ行ける生物が必要だった。だから、人類を作ったのに、まさか人類によってガイアが傷つけられるなんて、思ってもいなかったのではないでしょうか?」
「そうかな? そのぐらい予想できると思うが……」
「ガイアは悲しかったと思います。大量絶滅を防ぐために人類を生み出したのに、その人類の手によって環境を破壊され、多くの生物種が滅ぼされてしまった。ガイアは人間の手による大量絶滅を防ぐために、泣く泣く人類を滅ぼしたのだと思います」
「悲しい? バカ言うな。ガイアは自分勝手なんだよ。人類はガイアに都合よく利用されて捨てられたんだ」
「都合よく利用して捨てる? それは、あなたが、彼女さんに対してやったみたいに?」
「いや、俺はそんな事は……」
男は女の方を振り向いて絶句した。
いつの間にか女の手には、レーザー銃が握られていた。
「お……おい、冗談はよせ」
「あなたは思い違いをしています。ガイアは人類をウザいなんて思っていません」
「え? なんでおまえに、そんな事分かる?」
「さっき私は言いましたね。ガイアに意思があるなら、人間に警告を伝えればと」
「ああ」
「実際、伝えていたんですよ。ただ、ほとんどの人間はガイアの声が聞こえなかったのです。でも、彼女さんみたいに、ガイアの声を聞ける人間も稀にいるんですよ」
「なんでそんな事がわかる?」
「私もその一人だから」
「君も?」
「昔そういう人たちはシャーマンとか呼ばれていました。ガイアはシャーマンを通じて人類をコントロールしていたのです。でも人類が増えてくると、次第に人々はシャーマンの言うことを聞かないで、自分勝手に振る舞うようになりました」
「だからって人類を滅ぼさなくても……」
「滅びていませんよ。地球には、まだ私たちの仲間が残っています」
「私たちって? 他にもいるのか? ガイアの声を聞ける奴らが」
「ええ。ついでに言うと、月面基地にもかなり。でなかったら、私がレーザー銃なんて持ち込めるわけないでしょ」
「それ……玩具じゃないだろうな?」
女は、Gシートに向かって一発撃った。
Gシートの一部が焦げて、周囲に異臭が漂う。
「じゃあ、俺がさっき言った推測は本当だったのか?」
「少しだけ違いますね。ウイルスはガイアが直接作ったのではなく、ガイアの指示でシャーマン達が作ったのです」
「指示したなら同じだろ。だいたいよくそんな事できるな。ウイルスなんか撒いたら、お前たちだって死ぬんだぞ」
「大丈夫ですよ。ワクチンも同時に作りましたから」
「ワクチンがあるのか?」
「ええ。ガイアには人類を滅ぼす気は無かったんです。そもそも、滅ぼしてしまったら、せっかく作ったMDSもいずれダメになる。月面基地が自活できるようになったと言っても、いずれ限界が来ますから。システム維持に必要なだけの人口は残してあります」
「じゃあ、なぜ地球と連絡が取れなくなった?」
「月面基地住民の様子を見るためです。ガイアの意思に逆らいそうな人を排除してから、連絡を再開する予定です」
「俺はどうなんだ? 排除されるのか?」
「そうですよ」
「ま……待ってくれ。ガイアには逆らわない。だから命だけは助けてくれ」
「勘違いしないでください。排除すると言っても殺すわけじゃありません。地球に帰ることは許さないだけです。『排除』とは地球から排除という意味です。分かりにくい言い方してごめんなさいね」
「そうなのか。じゃあその物騒な物は引っ込めてくれ」
だが、彼女は首を横にふる。
「なぜだ!? 殺さないって言ったじゃないか」
「私が今からあなたを殺すのは、ガイアの意思ではありません。私の私的復讐です」
「復讐?」
「あなたに、都合よく利用されて捨てられたあげく、自殺した彼女さん。つまり私の姉の」
了
レーザー砲衛星は以前に書いた「懐いてしまった」に出てきたものとは似て非なるモノです。
「隕石がこちらに向かってきています。月面基地より、破壊処置命令が発令されました」
ディスプレイの向こうで、中年の男が慌てて葉巻を背後に隠していた。
『そ……そうか。今行く』
「衛星内は全面禁煙ですけど」
『固いこと言うなよ。子猫ちゃん』
程なくして男は制御室に入ってきた。
「やあ、おはよう。で、状況は?」
「哨戒衛星が地球衝突軌道にある小惑星を発見しました。衝突の可能性は九十八%。地球到達予定時刻は四十時間後」
「そうか」
男はガンマ線レーザー砲の発射準備にとりかかった。
「なあ」
機器を操作しながら、男は話しかける。
「俺たちは、なんでこんな事やってるんだろうな?」
「なにを言ってるんです。地球を……」
守るためと言い掛けて、女は押し黙った。
もう地球には守るべき人類はいないのだから。
数ヶ月前、未知のウイルス病が発生し、瞬く間に全世界に広がった。対策を立てる暇もなく、人類は全滅したのである。
月面基地に最後の通信が届いたのは一ヶ月前の事。『地球には絶対に降りるな』という命令だった。
幸いな事に、すでに月面基地だけで自給自足が可能な状態になっていたため、そこにいた二万人の人たちは生き延びる事ができたが、彼らは永遠に故郷を失ったのだ。
「隕石を撃ち落としたって、もう地球には誰もいない。女房も子供も友達もみんなウイルスに殺されてしまったのに……」
「でも、通信が途絶えただけで、まだ生きている人だっているかもしれません。ワクチンさえできれば、いつか私たちだって地球に戻れるかも……」
「どうだかな。地球は俺たちを受け入れてくれないかもしれないぞ?」
「え?」
「勘違いしないでくれ。ここで言う『地球』とは地球そのものという意味だ」
「どういうことですか?」
「いやなに……地球を離れる前に、彼女から妙な事を聞いてな」
「ちょっと待って下さい。彼女って? 奥さんいらっしゃったんじゃないんですか?」
「固いこと言うなよ。それにもう別れた。俺に女房がいると知った途端、出て行ったよ」
女は嫌悪感に顔をしかめる。
「で、彼女さんはどんな事を言ってたんです?」
「ガイア仮説って知ってるか?」
「ガイア仮説! ええ、知ってますけど」
惑星地球と、その表面に生息する生物は、相互に影響しあい環境を作り上げている一つの巨大な生命体ではないかという説は二十世紀からあった。その生命体はガイアと呼ばれている。
「彼女が言うには、ガイアには独自の意思があるそうだ。で、自分にはその声が聞こえると」
「そんな話を信じたんですか?」
「いや、電波な女の妄言と思っていた」
「電波な女が好みなんですか?」
「いや、どっちかというと苦手だ。ただ、身体だけはよかったから」
「ケダモノ」
女はボソっと呟く。
その声は男の耳に入ったが、男はあえて聞こえないふりをして話を続けた。
「最初は妄言だと思っていたが、最近はそれが本当のような気がしてな。もし、ガイアが本当に意思を持っているなら、俺たちの帰還を拒むかもしれない」
「なぜ、そう思うんですか?」
「俺だって、バカバカしい妄想だと思うよ。でもな、この一連の出来事がガイアの意思なら辻褄が合ってくるんだ」
「辻褄?」
「まず、ガイアにとって人類はすげーウザい存在だったはずだ」
「それは、その彼女さんが言ったんですか?」
「いや、俺の想像だ。もし俺がガイアだったら、これだけ環境を破壊しまくった人類はウザいと思う。滅ぼす動機は十分にある」
「ウザいだけで滅ぼされちゃたまりませんわ。それに人類を滅ぼしたのはウイルスですよ」
「エボラウイルスは、ガイアの不可侵領域を守っていた免疫抗体のようなものという説がある。それが本当だとするなら、ガイアはウイルスを操作できる事になる」
「目的と手段があったとして、なぜ今なんです? そんな事できるなら、とっくにやっていてもおかしくないじゃないですか?」
「それだよ。なぜ今になってガイアは人類を滅ぼしたかだ」
「今までお情けで生かしてやっていたけど、とうとう堪忍袋の尾が切れたってとこでしょうか?」
「情け? 違うな。彼女の話では人類もまたガイアが作り出したそうだ。ある目的のためにな」
「目的ってなんです?」
「俺たちだよ」
「え?」
「俺たちが今やっている仕事はなんだ?」
「なにって、地球を隕石から守って……まさか!?」
地球を巨大隕石の衝突から守るMDS(隕石防御システム)の必要性が叫ばれるようになったのは二十一世紀の前半。それが完成し稼働し始めたのは一年ほど前の事である。この二人は、その時から隕石を破壊するためのレーザー砲衛星に勤務していた。
未知のウイルスによる病気が蔓延する直前のことである。
「そうだよ。ガイアは宇宙からの災厄を防ぐために、宇宙へ行ける生物として人間を作り出したそうだ」
「宇宙からの災厄?」
「地球の生物史上、大量絶滅が五回起きている。その原因の一つはガンマ線バースト。一つは巨大隕石。五回のうち二回は宇宙からの災害だ。どれもガイアにとって大変な痛手だったのだろう。ガイアとしては、対策を立てるために宇宙へ行く必要があった」
「そのために、人間を作り出したというのですか?」
「ああ。だからガイアは、今までは人間がなにをやらかしても大目に見てくれていたんだろう。人間がいないと隕石から守る手段が作れない。だからMDSが完成するまで我慢していた。そして完成するのを見計らって、ウイルスを撒いたんだな」
「でも、ガイアに意思があるなら、警告を人間に伝える事だってできたのではないでしょうか?」
「最初から滅ぼそうとしている奴らに、そんな事するかよ」
男は黙り込んで機器の操作に戻った。
「そうでしょうか? ガイアだって最初から、人類を滅ぼす気なんかなかったんじゃないのかしら?」
「なぜだ?」
男は振り向きもしないで答える。そのため女が席を立った事に気が付かなかった。
「ガイアは地球を守るために、宇宙へ行ける生物が必要だった。だから、人類を作ったのに、まさか人類によってガイアが傷つけられるなんて、思ってもいなかったのではないでしょうか?」
「そうかな? そのぐらい予想できると思うが……」
「ガイアは悲しかったと思います。大量絶滅を防ぐために人類を生み出したのに、その人類の手によって環境を破壊され、多くの生物種が滅ぼされてしまった。ガイアは人間の手による大量絶滅を防ぐために、泣く泣く人類を滅ぼしたのだと思います」
「悲しい? バカ言うな。ガイアは自分勝手なんだよ。人類はガイアに都合よく利用されて捨てられたんだ」
「都合よく利用して捨てる? それは、あなたが、彼女さんに対してやったみたいに?」
「いや、俺はそんな事は……」
男は女の方を振り向いて絶句した。
いつの間にか女の手には、レーザー銃が握られていた。
「お……おい、冗談はよせ」
「あなたは思い違いをしています。ガイアは人類をウザいなんて思っていません」
「え? なんでおまえに、そんな事分かる?」
「さっき私は言いましたね。ガイアに意思があるなら、人間に警告を伝えればと」
「ああ」
「実際、伝えていたんですよ。ただ、ほとんどの人間はガイアの声が聞こえなかったのです。でも、彼女さんみたいに、ガイアの声を聞ける人間も稀にいるんですよ」
「なんでそんな事がわかる?」
「私もその一人だから」
「君も?」
「昔そういう人たちはシャーマンとか呼ばれていました。ガイアはシャーマンを通じて人類をコントロールしていたのです。でも人類が増えてくると、次第に人々はシャーマンの言うことを聞かないで、自分勝手に振る舞うようになりました」
「だからって人類を滅ぼさなくても……」
「滅びていませんよ。地球には、まだ私たちの仲間が残っています」
「私たちって? 他にもいるのか? ガイアの声を聞ける奴らが」
「ええ。ついでに言うと、月面基地にもかなり。でなかったら、私がレーザー銃なんて持ち込めるわけないでしょ」
「それ……玩具じゃないだろうな?」
女は、Gシートに向かって一発撃った。
Gシートの一部が焦げて、周囲に異臭が漂う。
「じゃあ、俺がさっき言った推測は本当だったのか?」
「少しだけ違いますね。ウイルスはガイアが直接作ったのではなく、ガイアの指示でシャーマン達が作ったのです」
「指示したなら同じだろ。だいたいよくそんな事できるな。ウイルスなんか撒いたら、お前たちだって死ぬんだぞ」
「大丈夫ですよ。ワクチンも同時に作りましたから」
「ワクチンがあるのか?」
「ええ。ガイアには人類を滅ぼす気は無かったんです。そもそも、滅ぼしてしまったら、せっかく作ったMDSもいずれダメになる。月面基地が自活できるようになったと言っても、いずれ限界が来ますから。システム維持に必要なだけの人口は残してあります」
「じゃあ、なぜ地球と連絡が取れなくなった?」
「月面基地住民の様子を見るためです。ガイアの意思に逆らいそうな人を排除してから、連絡を再開する予定です」
「俺はどうなんだ? 排除されるのか?」
「そうですよ」
「ま……待ってくれ。ガイアには逆らわない。だから命だけは助けてくれ」
「勘違いしないでください。排除すると言っても殺すわけじゃありません。地球に帰ることは許さないだけです。『排除』とは地球から排除という意味です。分かりにくい言い方してごめんなさいね」
「そうなのか。じゃあその物騒な物は引っ込めてくれ」
だが、彼女は首を横にふる。
「なぜだ!? 殺さないって言ったじゃないか」
「私が今からあなたを殺すのは、ガイアの意思ではありません。私の私的復讐です」
「復讐?」
「あなたに、都合よく利用されて捨てられたあげく、自殺した彼女さん。つまり私の姉の」
了
レーザー砲衛星は以前に書いた「懐いてしまった」に出てきたものとは似て非なるモノです。
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