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第十七章
じゃあバカだ
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リトル東京から僕宛の連絡が《はくげい》に届いたのは、ミクの式神を要塞に送り込んでから三十分ほど経過してからのこと。
発令所で仮眠を取っている時だった。
内容はワームホールが閉じたとの事。
先ほどの戦いで、閉じることができなくなっていたワームホールを監視していたドローンからの報告だ。
「やっかいな事になりましたね」
芽依ちゃんの言う通り、やっかいな事態だ。
ワームホールが閉じたという事は、地下施設の修復が終わったという事になる。
つまり、こっちにいつワームホールが開いてもおかしくない状況だ。
しかし、そうと分かってしまえば対策はいくらでも立てられる。
僕は古淵の方を向いた。
「敵がワームホールを開くとしたら、どんなタイミングだと思う?」
「前回は、私と矢部さんが要塞へ向かったタイミングで、背後から攻撃を受けました。今回もそうしてくるかと思われます」
「なるほど。それで君が敵の立場なら、そうするかい?」
すると古淵は首を横にふる。
「私なら、一度使った奇襲攻撃がもう一度通用するとは思いません。敵がどの程度こちらの情報を把握しているのか分かりませんが、私なら地下施設の修理が終わったら、真っ先に要塞にワームホールを繋いでカルル・エステス氏を連れ出します」
「当然だな。僕もそうする。そうなるとすでにあの要塞には、カルルはいないという事になるが……」
「はい。常識なら、とっくに連れ出されているはずです。そして、私ならその後で要塞に大量の物資と人員を送り込み戦力を増強します」
そこで僕は艦長に視線を向けた。
「要塞の戦力が、増強されているという様子はありますか?」
「ドローン部隊が見張っているのですが、そんな兆候は見られません」
「なるほど、増強している様子はない。これでもし、カルル・エステスが今でもあの要塞にいるとしたら、要塞の司令官はよほどのバカという事になるな」
「そうですね。しかし、これまでの戦いから見て帝国軍にはあまり優秀な人材がいません。同じ戦法を繰り返してくる傾向があります」
ううむ、どうなのだろう?
帝国の母国も、人材をやたら損耗するバカな戦法を地球で繰り返し使っていたからなあ。
「ねえ。要塞の司令官ってバカなの?」
突然、ミクが会話に割り込んできた。
「いや……バカかもしれないと言っただけだ。せっかくワームホールを使えるようになったのに、要塞からカルルを連れ出していないとしたらという事だよ」
「つまり、要塞にカルルがいたら、司令官はバカなのね?」
「そういう事になる」
「じゃあバカだ。だって、要塞にカルルいるもん」
なに!?
「式神が、カルルを見つけたのか?」
「うん。地下にいたよ」
続いてミクは、メインモニターに表示されている要塞の図面にレーザーポインタを向けた。
図面の一カ所にレーザーが当たる。
「そこに、カルルがいるのか?」
「うん。イリーナって女と一緒に」
「なに? 女と……」
「うん、カルルは女と一緒。だけど、今お兄ちゃんが想像したようなエッチな事はやっていなかったから」
「そんな想像はしていない!」
いや、本当はしていたけど……
「とにかく、カルルは要塞の地下二階にいる事が分かった。これを元に、救出プランを立てよう」
発令所で仮眠を取っている時だった。
内容はワームホールが閉じたとの事。
先ほどの戦いで、閉じることができなくなっていたワームホールを監視していたドローンからの報告だ。
「やっかいな事になりましたね」
芽依ちゃんの言う通り、やっかいな事態だ。
ワームホールが閉じたという事は、地下施設の修復が終わったという事になる。
つまり、こっちにいつワームホールが開いてもおかしくない状況だ。
しかし、そうと分かってしまえば対策はいくらでも立てられる。
僕は古淵の方を向いた。
「敵がワームホールを開くとしたら、どんなタイミングだと思う?」
「前回は、私と矢部さんが要塞へ向かったタイミングで、背後から攻撃を受けました。今回もそうしてくるかと思われます」
「なるほど。それで君が敵の立場なら、そうするかい?」
すると古淵は首を横にふる。
「私なら、一度使った奇襲攻撃がもう一度通用するとは思いません。敵がどの程度こちらの情報を把握しているのか分かりませんが、私なら地下施設の修理が終わったら、真っ先に要塞にワームホールを繋いでカルル・エステス氏を連れ出します」
「当然だな。僕もそうする。そうなるとすでにあの要塞には、カルルはいないという事になるが……」
「はい。常識なら、とっくに連れ出されているはずです。そして、私ならその後で要塞に大量の物資と人員を送り込み戦力を増強します」
そこで僕は艦長に視線を向けた。
「要塞の戦力が、増強されているという様子はありますか?」
「ドローン部隊が見張っているのですが、そんな兆候は見られません」
「なるほど、増強している様子はない。これでもし、カルル・エステスが今でもあの要塞にいるとしたら、要塞の司令官はよほどのバカという事になるな」
「そうですね。しかし、これまでの戦いから見て帝国軍にはあまり優秀な人材がいません。同じ戦法を繰り返してくる傾向があります」
ううむ、どうなのだろう?
帝国の母国も、人材をやたら損耗するバカな戦法を地球で繰り返し使っていたからなあ。
「ねえ。要塞の司令官ってバカなの?」
突然、ミクが会話に割り込んできた。
「いや……バカかもしれないと言っただけだ。せっかくワームホールを使えるようになったのに、要塞からカルルを連れ出していないとしたらという事だよ」
「つまり、要塞にカルルがいたら、司令官はバカなのね?」
「そういう事になる」
「じゃあバカだ。だって、要塞にカルルいるもん」
なに!?
「式神が、カルルを見つけたのか?」
「うん。地下にいたよ」
続いてミクは、メインモニターに表示されている要塞の図面にレーザーポインタを向けた。
図面の一カ所にレーザーが当たる。
「そこに、カルルがいるのか?」
「うん。イリーナって女と一緒に」
「なに? 女と……」
「うん、カルルは女と一緒。だけど、今お兄ちゃんが想像したようなエッチな事はやっていなかったから」
「そんな想像はしていない!」
いや、本当はしていたけど……
「とにかく、カルルは要塞の地下二階にいる事が分かった。これを元に、救出プランを立てよう」
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