810 / 842
第十七章
恐ろしい事
しおりを挟む
「ミーチャ。こんな時間にどうしたのだ?」
ミルクパンにミルクを注いでいると、物音を聞きつけたキラがキッチンに入ってきた。
「お姉ちゃん。あのねえ……」
ちなみにこの家で暮らすようになってから、ミーチャはキラをお姉ちゃんと呼ぶようになっていた。
「怖い夢を見たのか?」
「怖いというより、不思議な夢なんだよ。夢の中で僕はレム・ベルキナになっていたんだ」
「なんでミーチャがそんな悪党に!」
「お姉ちゃん。レム・ベルキナは、悪い人じゃないんだよ。かわいそうな人なんだ」
「かわいそう? まあ、戦災で両親を失った事は同情するが……しかし、レム神を生み出してしまったのはあいつではないか」
「それはそうだけど……」
それでも、ミーチャにはレム・ベルキナを悪く思うことはできなかった。
「それで、ミーチャ。夢の中でレム・ベルキナは何をしていたのだ?」
「あのね……戦争を起こした元大統領に会いに行くんだよ」
「会いに……復讐しに行ったのか?」
ミーチャは頷く。
「殺したのか?」
「ううん。レム・ベルキナは、殺すだけじゃ許せなかったんだ。だから、元大統領がもっとも嫌がる事をしてやりに行ったんだよ」
「嫌がること?」
「ベル・ベルキナは、人間の記憶を読みとる機械を使って、元大統領の記憶をすべて読み取ったんだ」
「それは……復讐になるのか?」
「元大統領は、嘘つきなんだ。そんな機械を使われたら、今まで自分がついていた嘘や隠し事がすべてばれてしまう。元大統領はそれがすごく嫌だったんだ」
「まあ……それは、確かに隠し事がばれるのは嫌だな」
キラのこめかみにツーと冷や汗が流れたが、ミーチャは気が付かない。
「復讐はそれだけじゃないんだ。元大統領は、機械にかけられた後、ボケ老人になってしまったんだよ」
「それは……死よりも恐ろしいな」
「でも、その後で……」
「ん?」
「その後、レム・ベルキナの身に、恐ろしい事があったんだ」
「恐ろしいこと? 何があったのだ?」
ミーチャは首を横にふる。
「それが、思い出せないんだ」
「思い出せない?」
「何か恐ろしい事があったのだけど、何があったのか思い出せないんだよ」
キラはミーチャを優しく抱きしめて言う。
「大丈夫。ただの夢だ。おまえを苦しめたレム神は、もうすぐ海斗殿が成敗してくれる」
とは言ったものの、キラもミーチャの夢のことが気になり、翌朝この事を香子に相談した。
ミルクパンにミルクを注いでいると、物音を聞きつけたキラがキッチンに入ってきた。
「お姉ちゃん。あのねえ……」
ちなみにこの家で暮らすようになってから、ミーチャはキラをお姉ちゃんと呼ぶようになっていた。
「怖い夢を見たのか?」
「怖いというより、不思議な夢なんだよ。夢の中で僕はレム・ベルキナになっていたんだ」
「なんでミーチャがそんな悪党に!」
「お姉ちゃん。レム・ベルキナは、悪い人じゃないんだよ。かわいそうな人なんだ」
「かわいそう? まあ、戦災で両親を失った事は同情するが……しかし、レム神を生み出してしまったのはあいつではないか」
「それはそうだけど……」
それでも、ミーチャにはレム・ベルキナを悪く思うことはできなかった。
「それで、ミーチャ。夢の中でレム・ベルキナは何をしていたのだ?」
「あのね……戦争を起こした元大統領に会いに行くんだよ」
「会いに……復讐しに行ったのか?」
ミーチャは頷く。
「殺したのか?」
「ううん。レム・ベルキナは、殺すだけじゃ許せなかったんだ。だから、元大統領がもっとも嫌がる事をしてやりに行ったんだよ」
「嫌がること?」
「ベル・ベルキナは、人間の記憶を読みとる機械を使って、元大統領の記憶をすべて読み取ったんだ」
「それは……復讐になるのか?」
「元大統領は、嘘つきなんだ。そんな機械を使われたら、今まで自分がついていた嘘や隠し事がすべてばれてしまう。元大統領はそれがすごく嫌だったんだ」
「まあ……それは、確かに隠し事がばれるのは嫌だな」
キラのこめかみにツーと冷や汗が流れたが、ミーチャは気が付かない。
「復讐はそれだけじゃないんだ。元大統領は、機械にかけられた後、ボケ老人になってしまったんだよ」
「それは……死よりも恐ろしいな」
「でも、その後で……」
「ん?」
「その後、レム・ベルキナの身に、恐ろしい事があったんだ」
「恐ろしいこと? 何があったのだ?」
ミーチャは首を横にふる。
「それが、思い出せないんだ」
「思い出せない?」
「何か恐ろしい事があったのだけど、何があったのか思い出せないんだよ」
キラはミーチャを優しく抱きしめて言う。
「大丈夫。ただの夢だ。おまえを苦しめたレム神は、もうすぐ海斗殿が成敗してくれる」
とは言ったものの、キラもミーチャの夢のことが気になり、翌朝この事を香子に相談した。
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる