724 / 842
第十六章
ジジイ一人だし問題ないよね
しおりを挟む
補給ロボットのトランクから出てきたのは、刃渡り十五センチのナイフ二丁。
ナイフのグリップ部分内部には超伝導バッテリーとモーターが入っていて、スイッチを入れると超高速で振動して物体を切断できる高周波カッターというナイフだそうだ。
カッターというだけあって、替え刃も用意してある。
これを僕と芽依ちゃんで一丁ずつ装備することにした。
橋本晶はすでに《雷神丸》と、脇差し《風神丸》があるので、それはいらないらしい。
「さて、作戦を説明しよう。Pちゃん、第六層の図面を出して」
「はい。ご主人様」
傾斜路の壁に、プロジェクションマッピングによって第六層の図面が表示される。
総面積は第四層、第五層と大差ないが、その構造は今までと少し違っていた。
時空穿孔機のある中央広場を中心に、放射状に八方向へ延びていく通路と、やはり中央広場を中心にした三つの同心円状の環状通路が交差する構造になっている。
僕らが今いる第五層への傾斜路と、カルル・エステスが待ちかまえている第七層への傾斜路の間には中央通路があるが、真ん中にある時空穿孔機の台座が邪魔で反対側の傾斜路の様子は見えない。
僕らがいる傾斜路入り口から、環状通路を右方向へ九十度行った先に、直径三十メートルの円形広場があり、そこに外部への通路があった。
今、その広場には帝国軍一個中隊が布陣している。
僕はレーザーポインターで、第七層への傾斜路入り口を示した。
「知っての通り、僕たちの攻撃目標はここだ。しかし、真っ正直に中央通路から行くと、中央広場から先は僕たちの姿は丸見えとなり狙撃される」
レーザーポインターを中央広場に当てた。
「そこでまず、中央広場にある時空穿孔機の台座に陣地を築く。そこから、ミールに分身体を作ってもらい、中央広場から傾斜路へ攻撃に向かってもらう。もちろん、ミール本人は陣地内に待機。キラとミクには陣地防衛を担当してもらう」
レーザーポインターを、中央広場から延びている放射状通路に当てた。
「その間に、僕と芽依ちゃん、橋本君で、この放射状通路を通って最も外側の環状通路へ移動して、そこから傾斜路へ向かいカルル・エステスの部隊を側面から攻撃。制圧する」
「隊長。質問よろしいですか?」
橋本晶が手を上げていた。
「カルル・エステスの部隊はそれでいいですが、外部通路入り口で待機している帝国軍はどういたします? あれを放置しておくと、我々がカルル・エステスと対峙している時に背後から攻撃されます」
「もちろんだ。それは考えてある。キラ、ポスターは用意できたかい?」
「ああ。もう書いてある」
そう言って、キラはB1サイズの白い紙を広げた。
それには『これより先地雷原』と帝国文字で書かれている。
「つまり、地雷原で敵を分断すると?」
「そうだ。すでにジジイには点検用トンネルを通って、帝国軍とカルル・エステスの部隊を繋いでいる環状通路に地雷原を構築してもらっている。もちろん帝国軍のいる広場から中央広場へ繋がる通路と、今僕たちがいる傾斜路へ繋がる環状通路にも作戦前に地雷原を構築する。これは僕らの手で行う。後は三カ所の地雷原の前に、このポスターを貼るだけだ」
ミクが手を上げた。
「お兄ちゃん、なんで地雷がある事をわざわざポスターで教えちゃうの? そのまま突入させちゃえばいいじゃない」
「正直、地雷原と言っても、そんな大量の地雷が用意できたわけではない。犠牲を厭わないで突入されたら、容易に突破される程度の地雷しかないのだよ。だから『ここに地雷があるぞ』とポスターで知らせておくのさ。そうすれば帝国軍も入って来ない。要は足止めできればいいのさ。僕らの作戦が終わるまで」
「ふうん。そっかあ……」
橋本晶が再び手を上げた。
「地雷原を構築するのは分かりましたが、一番危険な場所をルスラン・クラスノフ博士一人に任せて大丈夫でしょうか?」
「ドローンもつけてある」
「しかし、危険では……博士が帝国兵に見つかったりしたら……」
「大丈夫だ。もし見つかったとしても、ジジイの妖怪じみた動きに帝国軍は対応できない」
万が一失敗したとしても、死ぬのはジジイ一人だし問題ないよね……という事は言わないでおこう。
死にそうもないけど……
ナイフのグリップ部分内部には超伝導バッテリーとモーターが入っていて、スイッチを入れると超高速で振動して物体を切断できる高周波カッターというナイフだそうだ。
カッターというだけあって、替え刃も用意してある。
これを僕と芽依ちゃんで一丁ずつ装備することにした。
橋本晶はすでに《雷神丸》と、脇差し《風神丸》があるので、それはいらないらしい。
「さて、作戦を説明しよう。Pちゃん、第六層の図面を出して」
「はい。ご主人様」
傾斜路の壁に、プロジェクションマッピングによって第六層の図面が表示される。
総面積は第四層、第五層と大差ないが、その構造は今までと少し違っていた。
時空穿孔機のある中央広場を中心に、放射状に八方向へ延びていく通路と、やはり中央広場を中心にした三つの同心円状の環状通路が交差する構造になっている。
僕らが今いる第五層への傾斜路と、カルル・エステスが待ちかまえている第七層への傾斜路の間には中央通路があるが、真ん中にある時空穿孔機の台座が邪魔で反対側の傾斜路の様子は見えない。
僕らがいる傾斜路入り口から、環状通路を右方向へ九十度行った先に、直径三十メートルの円形広場があり、そこに外部への通路があった。
今、その広場には帝国軍一個中隊が布陣している。
僕はレーザーポインターで、第七層への傾斜路入り口を示した。
「知っての通り、僕たちの攻撃目標はここだ。しかし、真っ正直に中央通路から行くと、中央広場から先は僕たちの姿は丸見えとなり狙撃される」
レーザーポインターを中央広場に当てた。
「そこでまず、中央広場にある時空穿孔機の台座に陣地を築く。そこから、ミールに分身体を作ってもらい、中央広場から傾斜路へ攻撃に向かってもらう。もちろん、ミール本人は陣地内に待機。キラとミクには陣地防衛を担当してもらう」
レーザーポインターを、中央広場から延びている放射状通路に当てた。
「その間に、僕と芽依ちゃん、橋本君で、この放射状通路を通って最も外側の環状通路へ移動して、そこから傾斜路へ向かいカルル・エステスの部隊を側面から攻撃。制圧する」
「隊長。質問よろしいですか?」
橋本晶が手を上げていた。
「カルル・エステスの部隊はそれでいいですが、外部通路入り口で待機している帝国軍はどういたします? あれを放置しておくと、我々がカルル・エステスと対峙している時に背後から攻撃されます」
「もちろんだ。それは考えてある。キラ、ポスターは用意できたかい?」
「ああ。もう書いてある」
そう言って、キラはB1サイズの白い紙を広げた。
それには『これより先地雷原』と帝国文字で書かれている。
「つまり、地雷原で敵を分断すると?」
「そうだ。すでにジジイには点検用トンネルを通って、帝国軍とカルル・エステスの部隊を繋いでいる環状通路に地雷原を構築してもらっている。もちろん帝国軍のいる広場から中央広場へ繋がる通路と、今僕たちがいる傾斜路へ繋がる環状通路にも作戦前に地雷原を構築する。これは僕らの手で行う。後は三カ所の地雷原の前に、このポスターを貼るだけだ」
ミクが手を上げた。
「お兄ちゃん、なんで地雷がある事をわざわざポスターで教えちゃうの? そのまま突入させちゃえばいいじゃない」
「正直、地雷原と言っても、そんな大量の地雷が用意できたわけではない。犠牲を厭わないで突入されたら、容易に突破される程度の地雷しかないのだよ。だから『ここに地雷があるぞ』とポスターで知らせておくのさ。そうすれば帝国軍も入って来ない。要は足止めできればいいのさ。僕らの作戦が終わるまで」
「ふうん。そっかあ……」
橋本晶が再び手を上げた。
「地雷原を構築するのは分かりましたが、一番危険な場所をルスラン・クラスノフ博士一人に任せて大丈夫でしょうか?」
「ドローンもつけてある」
「しかし、危険では……博士が帝国兵に見つかったりしたら……」
「大丈夫だ。もし見つかったとしても、ジジイの妖怪じみた動きに帝国軍は対応できない」
万が一失敗したとしても、死ぬのはジジイ一人だし問題ないよね……という事は言わないでおこう。
死にそうもないけど……
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる