709 / 846
第十六章
ワイヤー陣
しおりを挟む
扉の向こうに、敵がいる事は分かった。
しかし、ここでテントウムシを止める事はできない。
確かにテントウムシの装甲なら動物たちの体当たりに耐えられるが、テントウムシの機体重量はきわめて軽い。
集団暴走の勢いに押し出されたら、簡単に傾斜路に押し込まれてしまう。
「芽依ちゃん。橋本君。集団暴走は僕が食い止める。その間に扉の向こうを制圧してくれ。方法は任せる」
「「了解!」」
僕は一度地上に降りると、抱いていたミールを降ろした。
「ミール。済まないが、小部屋に隠れていてくれ」
「はーい」
ミールが通路横の小部屋に入ったのを確認すると、僕は迫ってくる集団暴走に向き直った。
「ワイヤーガンセット! ファイヤー!」
左腕、右腕のワイヤーガンを左右の壁に撃ちこむ。
「ワイヤーパージ!」
僕の腕から、ワイヤーが外れた。
左右の壁に突き刺さったワイヤーをジョイントでつなぎ合わせ、通路上数十センチの高さでピンと張りつめる。
同じようなワイヤーをさらに二本張った。
そのワイヤー陣へ集団暴走が突っ込んでくる寸前、僕は空中へ逃れた。
集団の先頭を走っていたヒツジやヤギが、ワイヤーに引っかかり次々と転倒していく。
続いて後続のヒツジやヤギも、倒れた仲間の体にぶつかって転倒していった。
瞬く間に動物の壁ができあがり、集団暴走はなんとか止まる。
「ミール! もう出てきていいよ」
「はーい」
扉が開き、十三人のミールが出てきた。
小部屋の中で待っている間に、分身体を作っていたのか。
十三人のうち、十二人はビキニアーマー姿に……
すでに戦闘モードになっている。
「カイトさん! あたしはこのまま傾斜路へ向かい、メイさんたちに加勢します」
「頼む」
傾斜路へ向かうミールを見送ってから、後を振り向くと、跳躍力のあるヤギが動物の壁を飛び越えてきていた。
仕方ない。
「ごめん」
飛び越えて来たヤギに向かって、ショットガンを撃った。
「メエエエエ!」
血飛沫をまき散らし、ヤギは躯(むくろ)と化す。
不憫(ふびん)なヤギを哀れむ暇もなく、後から続々と飛び越してくるヤギを僕は撃ち続けた。
今夜見るであろう悪夢の出演者に、ヤギが加わる事になりそうだな。
通信が入ったのは、ショットガンのマガジンを交換した時……
『北村さん。傾斜路を制圧しました』
芽依ちゃんの声だった。
「了解」
そのまま僕は加速機能を発動して、傾斜路に駆け込む。その後から、数頭のヤギが追いかけてくるが、かまわず僕は傾斜路に駆け込んだ。
僕が駆け込むと同時に、芽依ちゃんと橋本晶は扉を押さえつけて溶接する。
ドン! ドン! ドン!
溶接した扉に、動物たちが体当たりする音が響く。
「溶接だけでもつでしょうか?」
「ワイヤーで補強しよう」
補強作業を終えてから、傾斜路内を見回すと帝国兵の遺体があちこちに転がっていた。
「芽依ちゃん。状況説明を頼む」
「はい。最初に私は、扉の向こうに閃光手榴弾を投げ込んでから、ドローンを送り込みました。続いてキラさんが分身体を送り込みましたが、ここで問題が発生したのです」
問題?
「キラさんの分身体が傾斜路内に突入して扉を閉じたとたんに、動かなくなってしまったのです」
なに?
「おそらく、扉にプシトロンパルスを遮る物質が使われていると思われます。そこで私と橋本さんが突入し、傾斜路内にいた敵一個小隊を制圧してからキラさんに入ってもらうと、分身体は問題なく動くようになりました」
ここの扉は、今までとは違ってプシトロンパルスを遮れる。だから、敵はここで待ちかまえていたのか。
ここで術者と分断すれば分身体や式神を無力化できて、こっちの戦力を半減できると考えたのだろうな。
「その後、傾斜路の奥から、敵一個小隊が上がって来ましたが、同時にミールさんの分身体が駆けつけてくれたので難なく制圧できました」
「そうか。よくやってくれた」
その時、橋本晶が二人の敵兵士を引きずってきた。
「隊長。捕虜を二人確保しました」
また、峰打ちで倒したのか。
「ミール。分身体を頼む」
「はーい」
床に横たわっている捕虜の胸に木札を置くと、ミールはその横に座り呪文を唱えた。
だが、いつまで立っても、分身体は起きあがらない。
ミールは呪文を唱えるのをやめて僕の方を向いた。
「カイトさん。ダメです」
「ダメ? どうことだい?」
「この二人、すでに死んでいます」
なに?
しかし、ここでテントウムシを止める事はできない。
確かにテントウムシの装甲なら動物たちの体当たりに耐えられるが、テントウムシの機体重量はきわめて軽い。
集団暴走の勢いに押し出されたら、簡単に傾斜路に押し込まれてしまう。
「芽依ちゃん。橋本君。集団暴走は僕が食い止める。その間に扉の向こうを制圧してくれ。方法は任せる」
「「了解!」」
僕は一度地上に降りると、抱いていたミールを降ろした。
「ミール。済まないが、小部屋に隠れていてくれ」
「はーい」
ミールが通路横の小部屋に入ったのを確認すると、僕は迫ってくる集団暴走に向き直った。
「ワイヤーガンセット! ファイヤー!」
左腕、右腕のワイヤーガンを左右の壁に撃ちこむ。
「ワイヤーパージ!」
僕の腕から、ワイヤーが外れた。
左右の壁に突き刺さったワイヤーをジョイントでつなぎ合わせ、通路上数十センチの高さでピンと張りつめる。
同じようなワイヤーをさらに二本張った。
そのワイヤー陣へ集団暴走が突っ込んでくる寸前、僕は空中へ逃れた。
集団の先頭を走っていたヒツジやヤギが、ワイヤーに引っかかり次々と転倒していく。
続いて後続のヒツジやヤギも、倒れた仲間の体にぶつかって転倒していった。
瞬く間に動物の壁ができあがり、集団暴走はなんとか止まる。
「ミール! もう出てきていいよ」
「はーい」
扉が開き、十三人のミールが出てきた。
小部屋の中で待っている間に、分身体を作っていたのか。
十三人のうち、十二人はビキニアーマー姿に……
すでに戦闘モードになっている。
「カイトさん! あたしはこのまま傾斜路へ向かい、メイさんたちに加勢します」
「頼む」
傾斜路へ向かうミールを見送ってから、後を振り向くと、跳躍力のあるヤギが動物の壁を飛び越えてきていた。
仕方ない。
「ごめん」
飛び越えて来たヤギに向かって、ショットガンを撃った。
「メエエエエ!」
血飛沫をまき散らし、ヤギは躯(むくろ)と化す。
不憫(ふびん)なヤギを哀れむ暇もなく、後から続々と飛び越してくるヤギを僕は撃ち続けた。
今夜見るであろう悪夢の出演者に、ヤギが加わる事になりそうだな。
通信が入ったのは、ショットガンのマガジンを交換した時……
『北村さん。傾斜路を制圧しました』
芽依ちゃんの声だった。
「了解」
そのまま僕は加速機能を発動して、傾斜路に駆け込む。その後から、数頭のヤギが追いかけてくるが、かまわず僕は傾斜路に駆け込んだ。
僕が駆け込むと同時に、芽依ちゃんと橋本晶は扉を押さえつけて溶接する。
ドン! ドン! ドン!
溶接した扉に、動物たちが体当たりする音が響く。
「溶接だけでもつでしょうか?」
「ワイヤーで補強しよう」
補強作業を終えてから、傾斜路内を見回すと帝国兵の遺体があちこちに転がっていた。
「芽依ちゃん。状況説明を頼む」
「はい。最初に私は、扉の向こうに閃光手榴弾を投げ込んでから、ドローンを送り込みました。続いてキラさんが分身体を送り込みましたが、ここで問題が発生したのです」
問題?
「キラさんの分身体が傾斜路内に突入して扉を閉じたとたんに、動かなくなってしまったのです」
なに?
「おそらく、扉にプシトロンパルスを遮る物質が使われていると思われます。そこで私と橋本さんが突入し、傾斜路内にいた敵一個小隊を制圧してからキラさんに入ってもらうと、分身体は問題なく動くようになりました」
ここの扉は、今までとは違ってプシトロンパルスを遮れる。だから、敵はここで待ちかまえていたのか。
ここで術者と分断すれば分身体や式神を無力化できて、こっちの戦力を半減できると考えたのだろうな。
「その後、傾斜路の奥から、敵一個小隊が上がって来ましたが、同時にミールさんの分身体が駆けつけてくれたので難なく制圧できました」
「そうか。よくやってくれた」
その時、橋本晶が二人の敵兵士を引きずってきた。
「隊長。捕虜を二人確保しました」
また、峰打ちで倒したのか。
「ミール。分身体を頼む」
「はーい」
床に横たわっている捕虜の胸に木札を置くと、ミールはその横に座り呪文を唱えた。
だが、いつまで立っても、分身体は起きあがらない。
ミールは呪文を唱えるのをやめて僕の方を向いた。
「カイトさん。ダメです」
「ダメ? どうことだい?」
「この二人、すでに死んでいます」
なに?
0
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
魔界建築家 井原 ”はじまお外伝”
どたぬき
ファンタジー
ある日乗っていた飛行機が事故にあり、死んだはずの井原は名もない世界に神によって召喚された。現代を生きていた井原は、そこで神に”ダンジョンマスター”になって欲しいと懇願された。自身も建物を建てたい思いもあり、二つ返事で頷いた…。そんなダンジョンマスターの”はじまお”本編とは全くテイストの違う”普通のダンジョンマスター物”です。タグは書いていくうちに足していきます。
なろうさんに、これの本編である”はじまりのまおう”があります。そちらも一緒にご覧ください。こちらもあちらも、一日一話を目標に書いています。
盤上の兵たちは最強を誇るドラゴン種…なんだけどさ
ひるま(マテチ)
SF
空色の髪をなびかせる玉虫色の騎士。
それは王位継承戦に持ち出されたチェスゲームの中で、駒が取られると同事に現れたモンスターをモチーフとしたロボット兵”盤上戦騎”またの名を”ディザスター”と呼ばれる者。
彼ら盤上戦騎たちはレーダーにもカメラにも映らない、さらに人の記憶からもすぐさま消え去ってしまう、もはや反則レベル。
チェスの駒のマスターを望まれた“鈴木くれは”だったが、彼女は戦わずにただ傍観するのみ。
だけど、兵士の駒"ベルタ”のマスターとなり戦場へと赴いたのは、彼女の想い人であり幼馴染みの高砂・飛遊午。
異世界から来た連中のために戦えないくれは。
一方、戦う飛遊午。
ふたりの、それぞれの想いは交錯するのか・・・。
*この作品は、「小説家になろう」でも同時連載しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
妹にお兄ちゃんって言わせたい!
Seraphim
ファンタジー
「あのっ……!私のこと、ここにおいてくれませんかっ……?!」
数ヶ月前に唯一の肉親である母親を亡くし、一人暮らしを始めた主人公『霜方 風真(しもかた ふうま)』。
彼のところに、碧眼の白髪猫耳少女『凪(ナギ)』が現れる。
普段なら間違いなくドアにチェーンをかけて拒絶しているところだが、人肌恋しさから彼女を居候として受け入れ周囲には義理の妹として取り繕うことにした。時間が経つにつれて、社交的でパワフルな凪とそれを支える風真のコンビは周囲から『風凪兄妹』として親しまれる存在に。凪も自らを『風真の妹』と名乗るようになり、自他ともに認める本当の兄妹のような関係性になったと思っていた。
しかし、凪はそのような関係性にも関わらず風真のことを名前で呼び続ける。まるで本当は『兄妹』であることを認めていないかのように。風真の中にくすぶるその疑問は、その後の二人の関係性を徐々に変化させていく。互いの真意に気づかぬまま、正反対な二人の奇妙な日常は思わぬ方向に進んでいく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる