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第六章
魔法使いの弟子がやってはいけない事
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ミールは紹介状を広げて一読した。
「キラ・ガルキナさん。あなたを、あたしの弟子に迎えるには、ある条件を飲んでもらわなければなりません」
「え? その条件とやらを飲めば、魔法を教えてもらえるのか?」
「ミール。いいのかい?」
「カイトさん。魔力を持つ者は、魔法技術習得が義務付けられていると前に言いましたね。逆に教える側の魔法使いも、正当な理由がない限り、弟子入り志願者を拒めないのですよ。あたしが嫌っているからというのは、正当な理由にはなりません」
「そうなの?」
「弟子を拒める正当な理由は、高齢など健康上無理な場合、家族の反対、すでに弟子が五人以上いる、弟子が異性または同性愛者、言葉が通じないなどがあります。あたしに、これらの理由はありま……キラ・ガルキナさん。あなた同性愛などという事はないでしょうね?」
「私に、そんな趣味はない!」
「それなら、いいです。ただ、あたしには、あなたを拒める正当な理由が一つだけあります」
「それは?」
「所属する国家が敵対関係にある場合も、拒否する正当な理由になります」
「やはりだめなのか? 私が帝国民であるから……」
「あたしの条件は、技術習得が終わるまで、帝国を捨てる事です」
「帝国を……」
「国籍まで捨てろとはいいません。ただし、あたしの下にいる限りは、帝国とは一切連絡を取らない。もし、手紙の一通でも出したら、即刻破門にします。それでも、いいですか?」
「分かった! その条件を飲む」
「それと、もう一つ」
まだ、あるのか?
「カイトさん」
「なに?」
「キラ・ガルキナも、旅の仲間にしていいですか?」
「僕は、構わないけど」
「そう言ってくれると思いました。キラ・ガルキナさん。あたしは旅の途中です。あなたは、その旅に付いてこられますか? できないなら弟子にはできません」
「着いていく。どこへだって」
「いいでしょう。それでは、今からキラ・ガルキナをカ・モ・ミールの弟子と認めます。弟子となった以上、あたしの指示には従いなさい。逆らったら破門ですよ」
「分かった」
「それと、修行中は恋愛禁止です」
「元より恋愛など、興味ない」
「そんな事を言っている人ほど、一度恋に落ちると歯止めが効かなくなります。心得ておきなさい」
「分かった」
「殿方に、言い寄られても、断るのですよ」
「それは心配ない。私のようなブスに、言い寄る物好きな男いるわけないだろう」
「ブス?」
ミールは、怪訝な表情を浮かべる。
「彼女、自分が美女だという自覚がないんだ」
ミールの耳元で僕は小声で言った。
「そうなのですか?」
「この前、彼女の分身と戦った時に『君は綺麗だ』と言ったのだが、僕が騙そうとしていると思ったらしく、怒り出してしまったんだ」
「カイトさん。綺麗だと言ったのですか?」
「え? いや、口説こうとしたわけじゃないから……そんな、状況じゃなかっただろ。それに口説いたところで、僕に靡くわけないし……」
「は?」
「ある意味、騙そうとしたのは確かだ。彼女を煽てて、戦意喪失させようとしたのだから……」
「そうだったのですか」
「ミールは、もっと綺麗だから」
「ありがとうございます」
ミールはにっこり微笑んで、キラ・ガルキナに向き直った。
「それでも、恋は突然訪れるもの。でも、その想いは修業が終わるまで、心の内に秘めなさい。けっして、殿方に打ち明けてはいけません」
「私なんかに打ち明けられても、殿方は迷惑するだけだ」
「いるんだよな。本当は綺麗なのに、容姿に自信がない人って」
ボソっと小声でつぶやいたつもりだったのだが、ミールの耳には聞こえたみたいだ。
「カイトさんが、それ言いますか」
な……なんか、不味いこと言ったかな?
「世の中には、容姿に自信がなくても、身体で殿方を自分の物にしようとする、けしからん女もいます。だから、殿方を好きになっても……」
不意にミールは僕の左腕にしがみ付いてきた。
ちょ! 胸が当たってる。
「こういう事をしたり……」
そう言って、腕から離れた。
……と、思ったら今度は背中から抱き着いてくる!
「こういう事を、したらいけませんよ」
「いや……やるつもりも、ありませんが……」
キラ・ガルキナは、少し引いてるみたいだが……
「いい心がけです」
「ちょ……ミール……その……胸が当たってる」
「カイトさん。それは、違いますわ。当たってるのではなく、当ててるのです」
そう言って、ミールは僕から離れた。
危なかったあ……
「ましてや、こんな事は絶対にやってはいけません」
ミールは僕の首を押え、唇を近づけてきた。
「ミールさん。あなたも、やってはいけません」
いつの間にか、Pちゃんがミールを羽交い絞めにしていた。
「Pちゃん。あたしはただ、弟子にやっていけない事の実例を……」
キラ・ガルキナが心配そうに僕に小声で囁く。
「なあ、この人、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ……」……たぶん……
「キラ・ガルキナさん。あなたを、あたしの弟子に迎えるには、ある条件を飲んでもらわなければなりません」
「え? その条件とやらを飲めば、魔法を教えてもらえるのか?」
「ミール。いいのかい?」
「カイトさん。魔力を持つ者は、魔法技術習得が義務付けられていると前に言いましたね。逆に教える側の魔法使いも、正当な理由がない限り、弟子入り志願者を拒めないのですよ。あたしが嫌っているからというのは、正当な理由にはなりません」
「そうなの?」
「弟子を拒める正当な理由は、高齢など健康上無理な場合、家族の反対、すでに弟子が五人以上いる、弟子が異性または同性愛者、言葉が通じないなどがあります。あたしに、これらの理由はありま……キラ・ガルキナさん。あなた同性愛などという事はないでしょうね?」
「私に、そんな趣味はない!」
「それなら、いいです。ただ、あたしには、あなたを拒める正当な理由が一つだけあります」
「それは?」
「所属する国家が敵対関係にある場合も、拒否する正当な理由になります」
「やはりだめなのか? 私が帝国民であるから……」
「あたしの条件は、技術習得が終わるまで、帝国を捨てる事です」
「帝国を……」
「国籍まで捨てろとはいいません。ただし、あたしの下にいる限りは、帝国とは一切連絡を取らない。もし、手紙の一通でも出したら、即刻破門にします。それでも、いいですか?」
「分かった! その条件を飲む」
「それと、もう一つ」
まだ、あるのか?
「カイトさん」
「なに?」
「キラ・ガルキナも、旅の仲間にしていいですか?」
「僕は、構わないけど」
「そう言ってくれると思いました。キラ・ガルキナさん。あたしは旅の途中です。あなたは、その旅に付いてこられますか? できないなら弟子にはできません」
「着いていく。どこへだって」
「いいでしょう。それでは、今からキラ・ガルキナをカ・モ・ミールの弟子と認めます。弟子となった以上、あたしの指示には従いなさい。逆らったら破門ですよ」
「分かった」
「それと、修行中は恋愛禁止です」
「元より恋愛など、興味ない」
「そんな事を言っている人ほど、一度恋に落ちると歯止めが効かなくなります。心得ておきなさい」
「分かった」
「殿方に、言い寄られても、断るのですよ」
「それは心配ない。私のようなブスに、言い寄る物好きな男いるわけないだろう」
「ブス?」
ミールは、怪訝な表情を浮かべる。
「彼女、自分が美女だという自覚がないんだ」
ミールの耳元で僕は小声で言った。
「そうなのですか?」
「この前、彼女の分身と戦った時に『君は綺麗だ』と言ったのだが、僕が騙そうとしていると思ったらしく、怒り出してしまったんだ」
「カイトさん。綺麗だと言ったのですか?」
「え? いや、口説こうとしたわけじゃないから……そんな、状況じゃなかっただろ。それに口説いたところで、僕に靡くわけないし……」
「は?」
「ある意味、騙そうとしたのは確かだ。彼女を煽てて、戦意喪失させようとしたのだから……」
「そうだったのですか」
「ミールは、もっと綺麗だから」
「ありがとうございます」
ミールはにっこり微笑んで、キラ・ガルキナに向き直った。
「それでも、恋は突然訪れるもの。でも、その想いは修業が終わるまで、心の内に秘めなさい。けっして、殿方に打ち明けてはいけません」
「私なんかに打ち明けられても、殿方は迷惑するだけだ」
「いるんだよな。本当は綺麗なのに、容姿に自信がない人って」
ボソっと小声でつぶやいたつもりだったのだが、ミールの耳には聞こえたみたいだ。
「カイトさんが、それ言いますか」
な……なんか、不味いこと言ったかな?
「世の中には、容姿に自信がなくても、身体で殿方を自分の物にしようとする、けしからん女もいます。だから、殿方を好きになっても……」
不意にミールは僕の左腕にしがみ付いてきた。
ちょ! 胸が当たってる。
「こういう事をしたり……」
そう言って、腕から離れた。
……と、思ったら今度は背中から抱き着いてくる!
「こういう事を、したらいけませんよ」
「いや……やるつもりも、ありませんが……」
キラ・ガルキナは、少し引いてるみたいだが……
「いい心がけです」
「ちょ……ミール……その……胸が当たってる」
「カイトさん。それは、違いますわ。当たってるのではなく、当ててるのです」
そう言って、ミールは僕から離れた。
危なかったあ……
「ましてや、こんな事は絶対にやってはいけません」
ミールは僕の首を押え、唇を近づけてきた。
「ミールさん。あなたも、やってはいけません」
いつの間にか、Pちゃんがミールを羽交い絞めにしていた。
「Pちゃん。あたしはただ、弟子にやっていけない事の実例を……」
キラ・ガルキナが心配そうに僕に小声で囁く。
「なあ、この人、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ……」……たぶん……
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