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第五章

な……なんか、数が増えてるんですけど……

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 大きな火の近くまで戻ってくると、二人の帝国兵がナーモ族の老人を殴っているところだった。
「何をしている?」
 二人の帝国兵は、ナーモ族を手放して敬礼する。
「ドロノフ曹長。さきほど、我々がここを通りがかったところ、十五名の兵士が死亡しており、この者達が逃亡を謀っておりました。そこで何があったのか、自分達はこの者を問いただしていたのであります」
「やめよ。その者は、何も知らぬ」
「は?」
「兵士達が、どのように死んだかというのだろう」
 ドロノフは、もう一人の兵士の顔を指さす。
「あの……曹長殿……いったい?」
 突然、兵士の額に赤い穴が開いた。
 そのまま、兵士は後に倒れる。
「ここの兵士達は、皆このように死んだのだ。ナーモ族に責任はない」
 もう一人の兵士は、倒れた同僚に驚愕の視線を向けた後、ドロノフに視線を戻す。
「おまえ……ドロノフ曹長ではないな!」
「やっと気がついたか。だが遅い」

 僕は、兵士の眉間に狙いをつけてトリガーボタンを押した。
 よし。周辺には、もう赤外線源はない。
「ミール。ドロノフにドローンを降ろさせて」
「はーい」
 ドローンの高度が十分に下がったところで、ミールがマイクを取った。
「お爺ちゃん。お爺ちゃん」
 地面に横たわっていたナーモ族が起きあがった。
『その声はミールか? おまえまで捕まったのか?』
「違う。あたしは安全なところにいるわ。この男は、あたしの魔法で作った分身」
『そうだったのか。しかし、なぜ帝国兵が死んでいる? これも、おまえの魔法か?』
「これは、日本人がやったの」
『日本人? しかし、ここは遠すぎるぞ』
「ベジドラコン達が噂していたでしょ。塩湖に降りてきた人よ」
『おお! レッドドラゴン一万頭を殲滅したとかいう』
 な……なんか、数が増えてるんですけど……
 僕が殺したのは一頭だけだって……
「それは嘘だって。当の本人が聞いて驚いていたわ」
『嘘なのか?』
「それより、これはどういう事? みんな逃げられたんじゃなかったの?」
『隠れていた鍾乳洞が、奴らに見つけられてしまったんだ。まさか、こんなに簡単に見つかるとは……』
 つけられたのか?
「とにかく、今後こそ、みんなを安全なところへ逃がすわ。今から生き残っているみんなを集めてちょうだい」
 しばらくして、ナーモ族たちが集まってきた。
 しかし……
「これだけ?」
 集まって来れたの七人だけ。
『まだ、生きてる者もいるが、鎖が外せなかったり、立ち上がる気力もないほど衰弱しておる。わしらも、自分一人動くのがやっとで、とても担いでは……』
「そんな……」
「逃げるのは、よそう」
「え?」
 ミールは僕の方を振り返った。
「ここは、君たちの村だ。取り返せばいい」
「でも……」
「赤外線源を見たところ、帝国兵の残りは八十人。皆殺しにすればいい」
 自分で言ってゾッとした。
 僕は、人を殺すことへの抵抗が、無くなってきているようだ。
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