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第十四章

前線基地1

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 舟を降りて原生林の中をしばらく歩くと、洞窟の入り口が見えてきた。

「こちらです」

 ライサが洞窟の入り口を指さしたところを見ると、どうやらここが前線基地らしい。

 天然の洞窟を偽装しているのか、元々天然洞窟なのかは分からんが……

 中に入ってしばらく歩くと、木の壁で塞がっている。

 壁の一カ所にドアがあり、そこから中に入るとLEDの明かりが灯った。

 どこから電気を引いているのだ? 聞いてみたら、リトル東京から供与された、大容量超伝導バッテリーがあるらしい。

 Pちゃんにバッテリーを調べてもらったところ、Pちゃんの本体が十年間活動できるだけの電力が蓄えられていた。

 他に、ここには食料や医薬品。舟が隠してあった。

 それと、村との連絡を取るための通信機も……

「アーリャさん。ライサです。全員無事に前線基地に到着しました」

 ライサが通信機のマイクに向かって話すと、スピーカーからアーリャさんの音声で返事が返ってくる。

『了解。けっして無理はしないようにね』

 それにしても、ここで無線を使って大丈夫なのだろうか?

 以前、ネクラーソフと戦っていたころの帝国軍なら、通信機を持っていなかったので無線を使っても問題なかったが、ここの帝国軍は当然無線を持っている。

 だから、僕らは厳重な無線管制をしていた。

 ミニPちゃんも、《海龍》にいる本体との交信がなくても行動できる自立型だ。本体との情報交換も定期的に衛星を介して行っていた。

 ここでのPちゃん同士の通信も、数十メートルしか届かない短距離通信を使っている。

 それなのに、ライサは当たり前のように通信機を使っていた。

 傍受される事を考えていない、うっかりさんには見えないが……

「なあ、ライサさん。ここで通信機なんか使って大丈夫なのかい?」

 ライサは最初、僕の言っている意味が分からないのか、きょとんとしていた。

「大丈夫って? 何がですか?」
「何がって……こんなところで無線なんか使って、帝国軍に傍受ぼうじゅされたら……」
「ああ! これは無線ではないです」

 無線ではない?

「森の中に、電話線を敷いているのですよ」
「電話線を? しかし、森の中は迷路で、爺さんしか道を知らないって」
「はい。だから爺さんにやってもらいました」
「爺さんに? して、報酬は?」
「美女との混浴を要求してきました」
「要求を飲んだのか?」
「はい。ただし成功報酬です。仕事が終わってから、村の婆さんたちと混浴したのです。爺さんは『詐欺だ!』って、怒っていましたが。昔の写真を見せて『元美女』だと言っておきました」

 なるほど。次に同じ手は使えないだろうな。

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