上 下
476 / 846
第十三章

空飛ぶ円盤?

しおりを挟む
 予定通り十時には、六機のジェットドローンすべてが《アクラ》を戦闘行動半径の内側に捕らえた。

 これに対して《アクラ》からは、なんの反応もなし。《アクラ》は探知される事を警戒してレーダーを止めているが、こっちのドローン部隊はレーダーを使いまくっている。

 こっちのレーダー波を逆探知していないはずがない。

 それなのに、発令所のメインモニターに表示されているドローンから送られてきたレーダー画像には《アクロ》から飛び立つ飛行体は現れない。

 向こうも様子を見ようという意図か?

 ならば……

 左を向くと、Pちゃんがシートに腰掛け、頭のアンテナをピコピコと動かしている。

 今、すべてのドローンは彼女が動かしているのだ。

「Pちゃん。菊花一号から六号の中で、損傷がもっとも大きいのはどれ?」
「ご主人様。しばしお待ちを……」

 Pちゃんの目で光が点滅する。

「六号機の損傷がもっとも大きいです。正直、なんとか飛べる状態で、今回の作戦が終わったら廃棄するしかないでしょう」

 六号機の記録を見ると、シーバ城でカルル・エステスと戦った時から使っている機体だ。

 その後、砂漠で矢納課長と戦った時も生き残っている。

 歴戦の勇者だな。

 できれば記念に取っておきたいところだが……最後の任務についてもらおう。 

「六号機だけを発進させてくれ。他の機体は待機」
「了解しました」

 一機だけ先行させて、敵の出方を見よう。

 敵が何もして来なければ《アクラ》の状況を偵察してくればいい。

 シャ! 
 
 背後で扉の開く音。

「プリンをお持ちしました」

 ミーチャの声だな。十時のおやつを持ってきてくれたのか。

「ワーイ! プリン! プリン!」

 ミクが席を立って後ろへ向かう。

 何気なく、その動きを目で追って振り向いた。

 ……!?

「プリン! プリン!」

 プリンを持って自席に引き返してくるミクが僕のそばを通った時、むんずとミクの襟首を掴む。

「なあに、お兄ちゃん? お兄ちゃんのプリンもちゃんとあるよ」
「ミク。怒らないから言ってごらん」
「お兄ちゃん。その顔は怒っている」
「ミーチャは、なぜあんな格好をしているのかな?」

 あんな格好……黒いワンピースの上にフリルのいっぱいついた白いエプロン姿。ようするに、メイド服をミーチャは着ていたのだ。

「あたしが着せたんじゃないよ。ミーチャが自分から着たんだよ」

 では、なぜ僕から視線をそらす。

 とりあえず、ミクの襟首を手放してから、ミーチャの方を向いた。

「ミーチャ。ミクの言っている事は本当か?」

 ミーチャは困ったような顔をした。

「ええっと……カイトさんに恩返ししたいと思って……ミクさんに聞いたら『メイド服を着たら喜ぶ』と……」

 忖度させたのか。ミク、三時のオヤツは抜きだな。

「ご主人様」

 Pちゃんの声に振り向く。

「《アクラ》から飛行体が飛び出しました」

 やっと出て来たか。

「飛行物体の数は一。速度は現在時速二百キロ。なおも加速中です」

 レーダー画面を見ると、飛行物体はまっすぐ菊花六号を目指している。

「Pちゃん。映像を出して」
「はい。ご主人様」

 メインモニターに菊花六号から送られてきた映像が現れた。

 これは!

空飛ぶ円盤フライングソーサー?」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

乾坤一擲

響 恭也
SF
織田信長には片腕と頼む弟がいた。喜六郎秀隆である。事故死したはずの弟が目覚めたとき、この世にありえぬ知識も同時によみがえっていたのである。 これは兄弟二人が手を取り合って戦国の世を綱渡りのように歩いてゆく物語である。 思い付きのため不定期連載です。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

貴妃エレーナ

無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」 後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。 「急に、どうされたのですか?」 「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」 「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」 そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。 どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。 けれど、もう安心してほしい。 私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。 だから… 「陛下…!大変です、内乱が…」 え…? ーーーーーーーーーーーーー ここは、どこ? さっきまで内乱が… 「エレーナ?」 陛下…? でも若いわ。 バッと自分の顔を触る。 するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。 懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...