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第十二章

ラ・バン・サラ

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 サラは特大ハンマーを構えて僕に向かってきた。

「サラ! やめろと言っているだろう」

 エラがプラズマボールを放ち、サラの分身体を消し去った。

「う!」

 突然、エラの顔がひきつる。

「身体が……痺れる」

 見ると、エラの首に小さな矢のような物が刺さっていた。

「エラ、すまないが、しばらくは大人しくしていてもらうぞ」

 声の方に視線を向けると、吹き矢筒を構えたサラの分身体が立っていた。
 
「痺れは十分ほどで取れるから心配するな。その間に私が、この男を成敗してやる」
「ちょっと待て! 僕は成敗されるような事はしていないぞ」
「とぼけるな! 何人もの女に手を出しておきながら……」
「そんな事はしていない」
「ええ? 違うの?」

 こら! ミク! 意外そうな顔してそういう事言うな!

「止めてください! お姉さま!」

 役所の中からミールが駆け出してきたのはその時……

 分身体ではなく本体のようだ。

 ミールは僕を庇うようにサラの前に立ちはだかった。

「ミール。そこをどいて。そいつ殺せない」
「そんな事はさせません」
「なぜだ? そいつは、お前をたぶらかした極悪人だぞ」
「カイトさんは、そんな事していません」
「そうです! 北村さんはミールさんをたぶらかしたりなんかしていません」

 そう言って、芽衣ちゃんもサラの前に立ちはだかる。ロボットスーツの機能が回復したようだ。

「ミールさんが、北村さんをたぶらかしているのです」

 おい……

「メイさん。ひょっとして、あたしにケンカを売っていますか?」
「滅相もありません。ミールさんにケンカを売るなんて……」

 二人が内輪もめしている間に、サラの分身体がもう一体出てきた。

 今度の分身体は槍を手にしている。

 ミールと芽衣ちゃんが立ちはだかっている反対側から回り込もうするが……

「させないよ」

 ミクを肩に載せたアクロが、その前に立ち塞がった。さらにその横には空を舞っていたエシャーも降りてきてサラの前に立ちはだかる。

「カイトニ、ヒドイ事シナイデ。カイトハ、アタシトアタシノ家族ヲ助ケテクレタ良イ人」

 それを見たサラは、驚愕の表情を浮かべて僕を指差した。

「おまえ……こんな幼女や、ベジドラゴンのメスにまで手を出したのか!? この変態め!」

 ちっがーう!

「誰か幼女よ! このオバン!」
「オバンだと? 私はピチピチの二十歳はたちだ! この胸無しが」

 胸無しと言われてミクは傷ついたのか押し黙る。

 不意にミールが振り返ってミクに言った。

「ミクちゃん。もう少し時間を稼いで。ちなみに、サラお姉さまの本当の歳は二十八よ」
「うん。分かった」

 ミクは再びサラに向き直った。

「胸が何よ! そんなのすぐ大きくなるもん。あんたこそ、この先は垂れる一方じゃない」
「なんだと! このガキ!」

 しばらく、ミクとサラの舌戦が続く。

「う!」

 突然サラの分身体が硬直した。

 次の瞬間、分身体は光の粒子となって消滅。

 後に残った憑代がポトリと地面に落ちた。

 ミールが僕の方をふり向く。

「Pちゃんがやってくれたようです」

 そうか。こっちで注意を引いている間に、サラの本体をPちゃんが叩いたのか。
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