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第十二章
盗聴
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「Pちゃん?」
『私は、ご主人様の翻訳ディバイスとリンクして話しております。それと私は今、ポケットの中にはいません』
「じゃあ、どこに?」
『テーブルの下です』
ベッドから身を乗り出して、テーブルの下を覗いた。
最初に目に入ったのは、僕のリュックサック。
そこから引っ張り出されたと思われるタブレットPCと、Pちゃんの頭がケーブルでつながっていた。別のケーブルがPCから伸びて、盗聴器用のアンテナとつながっている。
『ご主人様。ミールさん。盗聴器の電波を受信しました。今から、お二人の翻訳ディバイスに送ります』
イヤホンから聞こえてきたのは、木の床を踏みしめる足音。船長はどこかの建物内の廊下を歩いているようだ。
足音が複数聞こえる。三人~五人くらいかな?
『あの……なぜ、提督とはお会いできないのですか?』
女の声……これは町長だな。
船長の声がこれに答える。
『もう、今さら隠すまでもないから話しておこう。提督のオルゲルト・バイルシュタイン中将は戦死された。おまえ達がこれからお会いするのは提督代理だ』
バイルシュタインの戦死は伏せられていたようだな。
やがて、若い男の声が聞こえてきた。
この若い男が提督代理のようだ。
しばらく話し合いが続いた後、提督代理は『検討しておく』と言って町長らを帰した。
その後……
『おい。すぐに日本人達を呼べ』
成瀬真須美達に、なんの用だろう?
程なくして、扉の開く音が聞こえた。
『お呼びですか?』
女の声……これは成瀬真須美だな。
『ナルセか。この町で、これ以上の奴隷調達は打ち切る事にした』
なに?
『漕ぎ手のいない船が四隻残っている。済まないが、今夜にでも艦隊は出発するから、もうしばらく《アクラ》で曳航していてくれ』
なんだって!? こいつ逃げる気か?
『私はかまいませんけど、なにがあったのですか?』
『盗賊団だ。盗賊団がこの町に迫っている。ロータスの町はそれと戦うために戦闘奴隷を集めているのだ。その為に奴隷の調達が難しくなっている』
おい! おまえらが盗賊団を討伐すれば回してくれるという話だろ。
『盗賊団? では、帝国軍の戦力で討伐すれば……』
『戦力が残っていると思っているのか?』
『ないのですか? カルカでかなりの戦死者は出ましたが、盗賊を討伐するぐらいの人数は……』
『人数はともかく、もう弾薬がないのだ。ロータスの町で硝石と木炭を買い付けたが、硫黄が入手できないので弾薬を調合できない。残っている弾薬だけでは、まともに戦えない』
『だから逃げると?』
『無駄な戦いで、これ以上戦死者を出せるか』
『では、私達のロボットスーツとドローンで爆撃して、盗賊団の戦力を削いで……』
『話は最後まで聞け。この町にファースト・エラがいるという話は聞いているか?』
『ええ。最初に再生されたエラ・アレンスキーですよね。よりによって、この町に現れたとか……』
『そうだ。軍法会議にかけられる前に脱走した後、行方不明になっていた奴だ。しかも、今分かった事だが、奴は盗賊団に加わっていたらしい。盗賊団を討伐するとなるとエラとも戦う事になる』
『あの……提督代理』
船長がおずおずと口を挟んだ。
『どういう事です? エラ・アレンスキーが軍法会議にかけられたとか……最初に再生されたとか……』
『ち! おまえは知らなかったのだな』
スラ!
サヤから刃物を抜く音?
『て……提督代理! なにを……』
『この場で誓え。ここで聞いた事は絶対に口外するな』
『誓います! 誓いますから、剣を納めて下さい』
『いいだろう。だが、艦隊内でこの噂が広まった時は真っ先に貴様を殺す。たとえ、貴様が情報漏洩に関わっていなくてもな』
『そんな無茶な』
『情報が漏れなければ済む事だ。分かったら、おまえも情報が漏れないように気を配れ』
この提督代理、バイルなんたらより冷酷だな……
『ついでだから、教えておいてやる。エラ・アレンスキーは帝国がその存在を否定しているコピー人間だ。しかも、三十年前に禁忌を破って八人作られた』
『なんですと!?』
『それをやったのは、亡くなったオルゲルト・バイルシュタイン中将と、その兄である俺の父だ』
冷酷だと思ったら、あいつの甥だったのか。
『父は今、国防大臣の職にあるが、いずれは帝国の実権を握る予定だ。そんな時に、過去の不祥事が明るみになると色々とやっかいなのだよ』
『さ……さようで……』
『さて、ここまで知った以上、貴様も仲間になってもらうぞ』
『は?』
『嫌か? 嫌なら仕方ない』
『いえ、なります。仲間にして下さい』
『いいだろう。さて、ナルセ。邪魔が入ったな。どこまで話した?』
『ファースト・エラが盗賊団に入ったというところまでですが……』
『そうか。奴はどうやら、魔法回復薬の原料を求めてこの町に来たらしい。しかも、すでに入手したようだ』
何だって?
『私は、ご主人様の翻訳ディバイスとリンクして話しております。それと私は今、ポケットの中にはいません』
「じゃあ、どこに?」
『テーブルの下です』
ベッドから身を乗り出して、テーブルの下を覗いた。
最初に目に入ったのは、僕のリュックサック。
そこから引っ張り出されたと思われるタブレットPCと、Pちゃんの頭がケーブルでつながっていた。別のケーブルがPCから伸びて、盗聴器用のアンテナとつながっている。
『ご主人様。ミールさん。盗聴器の電波を受信しました。今から、お二人の翻訳ディバイスに送ります』
イヤホンから聞こえてきたのは、木の床を踏みしめる足音。船長はどこかの建物内の廊下を歩いているようだ。
足音が複数聞こえる。三人~五人くらいかな?
『あの……なぜ、提督とはお会いできないのですか?』
女の声……これは町長だな。
船長の声がこれに答える。
『もう、今さら隠すまでもないから話しておこう。提督のオルゲルト・バイルシュタイン中将は戦死された。おまえ達がこれからお会いするのは提督代理だ』
バイルシュタインの戦死は伏せられていたようだな。
やがて、若い男の声が聞こえてきた。
この若い男が提督代理のようだ。
しばらく話し合いが続いた後、提督代理は『検討しておく』と言って町長らを帰した。
その後……
『おい。すぐに日本人達を呼べ』
成瀬真須美達に、なんの用だろう?
程なくして、扉の開く音が聞こえた。
『お呼びですか?』
女の声……これは成瀬真須美だな。
『ナルセか。この町で、これ以上の奴隷調達は打ち切る事にした』
なに?
『漕ぎ手のいない船が四隻残っている。済まないが、今夜にでも艦隊は出発するから、もうしばらく《アクラ》で曳航していてくれ』
なんだって!? こいつ逃げる気か?
『私はかまいませんけど、なにがあったのですか?』
『盗賊団だ。盗賊団がこの町に迫っている。ロータスの町はそれと戦うために戦闘奴隷を集めているのだ。その為に奴隷の調達が難しくなっている』
おい! おまえらが盗賊団を討伐すれば回してくれるという話だろ。
『盗賊団? では、帝国軍の戦力で討伐すれば……』
『戦力が残っていると思っているのか?』
『ないのですか? カルカでかなりの戦死者は出ましたが、盗賊を討伐するぐらいの人数は……』
『人数はともかく、もう弾薬がないのだ。ロータスの町で硝石と木炭を買い付けたが、硫黄が入手できないので弾薬を調合できない。残っている弾薬だけでは、まともに戦えない』
『だから逃げると?』
『無駄な戦いで、これ以上戦死者を出せるか』
『では、私達のロボットスーツとドローンで爆撃して、盗賊団の戦力を削いで……』
『話は最後まで聞け。この町にファースト・エラがいるという話は聞いているか?』
『ええ。最初に再生されたエラ・アレンスキーですよね。よりによって、この町に現れたとか……』
『そうだ。軍法会議にかけられる前に脱走した後、行方不明になっていた奴だ。しかも、今分かった事だが、奴は盗賊団に加わっていたらしい。盗賊団を討伐するとなるとエラとも戦う事になる』
『あの……提督代理』
船長がおずおずと口を挟んだ。
『どういう事です? エラ・アレンスキーが軍法会議にかけられたとか……最初に再生されたとか……』
『ち! おまえは知らなかったのだな』
スラ!
サヤから刃物を抜く音?
『て……提督代理! なにを……』
『この場で誓え。ここで聞いた事は絶対に口外するな』
『誓います! 誓いますから、剣を納めて下さい』
『いいだろう。だが、艦隊内でこの噂が広まった時は真っ先に貴様を殺す。たとえ、貴様が情報漏洩に関わっていなくてもな』
『そんな無茶な』
『情報が漏れなければ済む事だ。分かったら、おまえも情報が漏れないように気を配れ』
この提督代理、バイルなんたらより冷酷だな……
『ついでだから、教えておいてやる。エラ・アレンスキーは帝国がその存在を否定しているコピー人間だ。しかも、三十年前に禁忌を破って八人作られた』
『なんですと!?』
『それをやったのは、亡くなったオルゲルト・バイルシュタイン中将と、その兄である俺の父だ』
冷酷だと思ったら、あいつの甥だったのか。
『父は今、国防大臣の職にあるが、いずれは帝国の実権を握る予定だ。そんな時に、過去の不祥事が明るみになると色々とやっかいなのだよ』
『さ……さようで……』
『さて、ここまで知った以上、貴様も仲間になってもらうぞ』
『は?』
『嫌か? 嫌なら仕方ない』
『いえ、なります。仲間にして下さい』
『いいだろう。さて、ナルセ。邪魔が入ったな。どこまで話した?』
『ファースト・エラが盗賊団に入ったというところまでですが……』
『そうか。奴はどうやら、魔法回復薬の原料を求めてこの町に来たらしい。しかも、すでに入手したようだ』
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