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第十二章

過去の経緯 2

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 アーニャ・マレンコフはさらに話を続けた。

「レムのコンピューターセンターの残り五つは孤島に作られていました」
「孤島? それで潜水艦隊を……」
「ええ。五つの孤島のうち、四つは大洋、一つは内海の孤島です」
「内海の孤島って、まさか?」
「帝国がベイス島と呼んでいる島です」

 ベイス島! それって、カートリッジが運び込まれた島?

「帝国が今でも使っているという事は、ベイス島の破壊には、失敗したのですか?」
「いいえ。私達はベイス島のコンピューターに、電磁パルスEMP攻撃をかけて破壊しました。ただコンピューターは破壊したのですが、建造物や地下施設は丸ごと残ってしまったのです。カートリッジはその施設に運び込まれたのでしょう」

 なるほど、コンピューターは壊れてしまったが、箱物は残っているからそのまま使っておこうということか。

「大洋にある四つのコンピューターセンターのうち、三つまでは破壊しました。しかし、一つだけまだ残っているのです」

 その最後に残った一つから、レムは帝国人をコントロールしているというのか。

「最後の一つは、惑星の反対側にあって《水龍》《海龍》《光龍》の航続距離ではたどり着けません。そこで、補給基地を作っていたのですが、その途中でカルカが核攻撃を受けたのです。その時、建設中の補給基地に私は取り残されてしまいました。カルカに戻って来られたのは十年後になります」

 という事は……帰ってきたら章 白龍は楊 美雨と結婚していたという事か……

 その当たりの事情は、ちょっと聞きにくいな……

「アーニャさん。白龍君とは付き合ってなかったのですか?」

 うわわわ! ミクの奴聞きにくいことを……

 しかし、アーニャは微笑みを浮かべて答えた。

「あなたがミクちゃんね。白龍君から、何度も写真を見せてもらったわ」
「え? そうなの?」
「正直、あの時は自分の気持ちがよく分からなかった。あの時私は、白龍君に恋をしていたのかもしれない。でも、彼の心にはずっとあなたがいたの。だから、私も諦めていたのだけどね。だけど、カルカに戻ったら楊さんと結婚しているじゃない。ちょっと、納得いかなかったな」
「そうだよね。白龍君も、もう少し待っていてあげればよかったのに」
「仕方ないわ。カルカでは、私は死んだと思われていたのよ」

 そう言って、彼女は僕が焼いた肉を口に入れた。

「あら? これレッドドラゴンじゃないの? 珍しい」
「僕がこの惑星に降りた時に、仕留めた奴です。その時は、希少種になっていたとは知らなくて」

 ミールにも聞いてはいたが、レッドドラゴンはかなり数が減っているらしい。

「気にすることはないわよ。レットドラゴンは別にワシントン条約で保護されているわけじゃないし、激減したのは地球人を恐れてニャトラス大陸から逃げ出したからよ。他の大陸では繁殖しているらしいわ」
「そうだったのですか?」
「まあ、プシダー族の探検家の報告だけどね」

 不意にミールが身を乗り出してきた。

「それ本当ですか? あたしも初耳ですけど」
「ああ。そうね。これはリトル東京で仕入れた知識だから」
「そうでしたか。レッドドラゴンがいなくなったら、回復薬が作れなくて困った事になるところでした」

 いなくなってくれた方が、エシャー達ベジドラゴンは助かるのだけどね。
 そういえば、エシャー達とはカルカの町を離れてから会ってないな。
 今頃どうしているかな?
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