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第八章

再会

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 ダサエフを地面に降ろし、銃を突きつけた。

「こ……殺さないと約束したじゃないか!」
「それは、おまえの態度次第だ。他に伏兵はいないか? 答えろ」
「そんなものはいない」
「嘘だったら、命はないぞ」
「本当だ! 信じてくれ」

 念のため、ミールにダサエフの分身体を作ってもらい、他に伏兵がいないか聞き出してみた。

「ドームの入り口付近に爆薬を埋めてあります。導火線に点火するための兵士を、地中に潜ませました」
 
 やはり、罠があったか。

 地中に隠れていた兵士を引きずり出し、爆薬を処分した。

「さて」
 
 再び、ダサエフに銃を突きつけた。

「嘘だったら、命はないと言ったな」
「ひいいい!」
 
 引き金を引く。轟音が轟き、ダサエフは倒れた。
 ミールが駆け寄ってきた。

「カイトさん。殺したのですか?」
「いや、空砲だよ。嫌な奴だけど、さすがに捕虜を殺すのは気が引けるからね。それに、司令官の捕虜はいろいろと役に立ちそうだし」

 安全を確保してから芽衣ちゃんを呼び出した。程なくして、芽衣ちゃんの運転する車がドーム前までやってくる。
 
「北村さん」

 芽衣ちゃんが運転席から降りてきた。

「私のスーツ、修理が終わりましたので、交代しましょう」
「え?」
「ドームに入る前に、北村さんには素顔を晒していて欲しいのです」
「なんで?」

 僕の質問に答えず、芽衣ちゃんはトレーラーから着脱装置を引き出して桜色のロボットスーツを装着した。僕は言われるがままに、ロボットスーツを装置に戻す。
 三十秒経過して、ロボットスーツが脱げた時には、ドームの入り口が開いていた。
 出入口に一人の女が立っている。

 あれは!?

 歳の頃は、二十代後半から三十代くらい。
 顔は青白く、かなりやつれていた。
 腰まである長い髪は、まったく手入れがされてなくボサボサだ。
 しかし、どこか香子に似ている。

 いや……香子では?

「カトリさん?」

 ミールがその女に駆け寄る。知り合いだったのか?
 では、香子ではないのか?

「あなたは? ミールさん?」
「そうです。あたしです。カ・モ・ミールです。あなたカトリさんですよね? いつも、シーバ城に物資を届けてくれていた?」

 カトリ!? 鹿取かとり! 鹿取かとり香子きょうこ!? そうか! 香子は、プリンターで生み出されて五年以上経過しているから……

「香子!」
 
 僕は香子に駆け寄る。
 香子は僕の顔を見て驚愕の表情を浮かべた。

「海斗!」

 香子はヨロヨロと僕に歩みより、僕の手を握りしめる。
 その手は、骨ばっていた。

 こんなに……やつれて……僕が死んだことがそんなに……

「え? カイトさん。カトリさんを知っているのですか?」

 キョトンとした顔でミール尋ねてきた。
 そういえば、ミールに香子のフルネームを言ったことがなかったな。
 香子も、ミールに下の名前を教えていなかったのだろう。

「ミール。彼女のフルネームは鹿取香子。僕は彼女に会うために、今まで旅をしてきた」
「え? キョウコ? じゃあ、カイトさんの幼馴染で……前のカイトさんの婚約者って、カトリさんのことだったのですか?」

 僕はミールに無言で頷いた。

「いや……考えみれば当然ですね。城に来ていた地球人の若い女ってそんなにいなかったはずだし……でも、キョウコさんって、別の人かと思っていました」
「他にも、地球人の女がいたのか?」
「いました。名前は聞いていなかったけど……カトリさんは仲が悪かったです。てっきり、キョウコさんはそっちの人かと……」

 まさか……

「相模原さんよ。私と仲が悪かった女と言うのは……」

 やはり、相模原月菜か……彼女も来ていたのか。

「海斗……驚いたでしょ。幼馴染が、五歳も年上になっていて、こんなやつれていて……」
「いや……その……」
「一応言っておくけど、海斗の再生をお願いしたのは私じゃないわ」
「え?」
「海斗を失って、いつまでも落ち込んでいた私がいけなかったのね。私を、励まそうとして芽衣ちゃんが頼んでしまったの。私もはっきり断るべきだったのだけど、五歳年下でもいいから、海斗に会いたいという気持ちもあって断れなかった。そのために、海斗には辛い思いをさせてしまったかしら?」
「いや……そんな事は……」
「無理しなくていいわよ。サイバースペースの海斗ならともかく、生データの海斗じゃ大変だったでしょ。事情も知らないまま二十一世紀の日本から、こんな惑星に連れて来られて」
「それは……」

 最初……塩湖の上で途方に暮れていた時は……文句の一つも言いたかった。
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