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第二章

ドキドキするんですけど……

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「急いで」
 糸魚川君に促され、あたしはリアルを抱いて走り続けた。
 後ろからエンジン音が迫ってくる。
「こっちへ」
 あたし達は河川敷に逃げ込んだところで、三台のバイクに追いつかれた。
「大人しく猫を渡せ」
 ライダーの一人がそう言うと、三台のバイクはあたし達の周りをグルグルと回り始める。
「美樹本さん。ちょっと力を抜いて」
「え? なになに?」
 糸魚川君はしゃがみこむとあたしをお姫様だっこの状態で抱き上げた。
 ちょっ……ちょっとドキドキするんですけど……
「しっかり捕まってて」
 糸魚川君の首にしっかり捕まったけど、どうするの?
 これから……
 その答えはすぐに出た。
 糸魚川君は、あたしとリアルを抱いたままジャンプしてライダー達の頭上を飛び越えたのだ。
 うそ!!
 人間業じゃない!!
「ここで待ってて」
 草むらにあたしを降ろすと、糸魚川君は抜刀して三台のバイクに向かっていく。
「でええい!!」
 糸魚川君はジャンプすると先頭のバイクのライダーを蹴落とした。
 乗り手を失ったバイクは惰性で滑っていき川に落ちる。
 盛大な水しぶきが上がった。
 その時には糸魚川君は二台目のバイクに向かっていた。
 今度はジャンプせず、姿勢を低くしてバイクに切りつける。
 前輪を切り落とされたバイクは転倒してライダーは投げ出された。
 だけど最後の一台が糸魚川君の背後から猛スピードで迫る。
 後ろからとは卑怯なりぃ!!
 でも糸魚川に通じなかった。
 糸魚川君はまるで背後が見えていたのようにバイクがぶつかる寸前にジャンプ。
 空中で一回転するとバイクの後ろに飛び乗っていた。
 いきなり無賃乗車されたライダーは慌てて振り落とそうするが、ヘッドロックをかけられ操縦不能になって転倒。
 バイクが倒れる寸前に糸魚川君は脱出。
 地面で苦痛にうごめいているライダー達を背中に糸魚川君はあたしの方へかけてくる。
「さあ、行こう」
 あたしたちは再び走り出した。
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