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第一章
誰よ? こんないい人イジメる極悪非道人は?
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結局、そのまま授業が始まってしまい、昨日の礼を言うチャンスが無かった。
それなら授業と授業の合間にと思ったけど、彼の机の周りにクラスメートが集まってしまい、とても話しかける暇などなかった。
しょうがない。給食時間になったら話しかけてみよう。
と、思っていたのに昼休みになると、彼は給食も食べないでどっかへ行ってしまった。
教室内を見回すと他にも男子が三人ほどいなかった。その中の一人が石動。
悪い予感。
糸魚川君が戻ってきたのは午後の授業が始まる少し前の事。
それはいいんだけど、どうしたんだろう? 微かだけど制服が汚れている。しかも、袖のボタンもとれかかっていた。
新品の制服なのに……
彼はそのまま席につく。
クラスメート達もいい加減飽きたのか、あるいは彼が戻ったのに気がつかなかったのか、誰も寄ってこない。話しかけるチャンス。
「糸魚川君」
「ん? 君は……ごめん、まだ名前覚えてなくて」
「美樹本です」
「ああ、美樹本さんか。覚えておくよ。それで、なにか?」
「昨日はありがとう」
「え? 昨日、君と会ったっけ?」
「わからないの?」
ううん……あたしの顔ってそんなに印象薄いかな? ん? 急に彼の顔がひきつった。
どうしたんだろう?
今度は右手の人差し指を鼻に当てて「シー」のポーズをしてる。
次にメモ帳に何かを書いて差し出してきた。
『頼む。昨日の事は誰にも言わないで』
え?
『なんで?』
あたしは紙の裏に書いて返した。
『理由は言えないが、昨日あの場所にいたことが知られたら困るんだ』
『わかった。言わない。恩人を困らせるような事はしないわ』
『ありがとう』
そして糸魚川君は証拠の紙を処分した。
それにしてもなんで困るのかな?
塾かなんかをさぼっていて、あの当たりをうろついていたのを親に知られたら困るというところかな?
「ところで、それどうしたの?」
あたしは糸魚川君の左腕を指さした。袖のボタンが取れかかっている。
「え? ああ、これは……転んだんだよ」
『転んだ』って、それは虐められっ子が虐められた事を誤魔化すための常套のセリフ。
それに微かだけど背中に足形のような汚れがついてる。転んだだけでこうはならない。
きっと昼休みに校舎裏かどっかに呼び出されて、リンチされたのよ。
誰よ? こんないい人イジメる極悪非道人は?
いや、そんな奴はこのクラスにあいつしかいない。
あたしは背後を振り返った。
石動がニヤニヤとこっちを見ている。
やはり、あいつか。
それなら授業と授業の合間にと思ったけど、彼の机の周りにクラスメートが集まってしまい、とても話しかける暇などなかった。
しょうがない。給食時間になったら話しかけてみよう。
と、思っていたのに昼休みになると、彼は給食も食べないでどっかへ行ってしまった。
教室内を見回すと他にも男子が三人ほどいなかった。その中の一人が石動。
悪い予感。
糸魚川君が戻ってきたのは午後の授業が始まる少し前の事。
それはいいんだけど、どうしたんだろう? 微かだけど制服が汚れている。しかも、袖のボタンもとれかかっていた。
新品の制服なのに……
彼はそのまま席につく。
クラスメート達もいい加減飽きたのか、あるいは彼が戻ったのに気がつかなかったのか、誰も寄ってこない。話しかけるチャンス。
「糸魚川君」
「ん? 君は……ごめん、まだ名前覚えてなくて」
「美樹本です」
「ああ、美樹本さんか。覚えておくよ。それで、なにか?」
「昨日はありがとう」
「え? 昨日、君と会ったっけ?」
「わからないの?」
ううん……あたしの顔ってそんなに印象薄いかな? ん? 急に彼の顔がひきつった。
どうしたんだろう?
今度は右手の人差し指を鼻に当てて「シー」のポーズをしてる。
次にメモ帳に何かを書いて差し出してきた。
『頼む。昨日の事は誰にも言わないで』
え?
『なんで?』
あたしは紙の裏に書いて返した。
『理由は言えないが、昨日あの場所にいたことが知られたら困るんだ』
『わかった。言わない。恩人を困らせるような事はしないわ』
『ありがとう』
そして糸魚川君は証拠の紙を処分した。
それにしてもなんで困るのかな?
塾かなんかをさぼっていて、あの当たりをうろついていたのを親に知られたら困るというところかな?
「ところで、それどうしたの?」
あたしは糸魚川君の左腕を指さした。袖のボタンが取れかかっている。
「え? ああ、これは……転んだんだよ」
『転んだ』って、それは虐められっ子が虐められた事を誤魔化すための常套のセリフ。
それに微かだけど背中に足形のような汚れがついてる。転んだだけでこうはならない。
きっと昼休みに校舎裏かどっかに呼び出されて、リンチされたのよ。
誰よ? こんないい人イジメる極悪非道人は?
いや、そんな奴はこのクラスにあいつしかいない。
あたしは背後を振り返った。
石動がニヤニヤとこっちを見ている。
やはり、あいつか。
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