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第一章
ヒーロー登場? ……じゃなかった。
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「きゃ!!」
ドン!!
あたしは背中から何かに衝突した。
ブロック塀かと思ったけど、それにしては柔らかい。
「大丈夫!? 君」
「え?」
振り向くとそこにいたのは、あたしと同じぐらいの歳の大きなメガネをした男の子。
「助けて!! あたしの猫がさらわれちゃう!!」
思わず助けを求めてしまったけど無理かな?
男の子の身長はあたしより頭一つ分大きいけど、柔和な顔に華奢に身体つきの秀才タイプ。荒っぽいことに向きそうにない。
「おまえ達!! 女の子になんて事するんだ!!」
え? 意外とたのもしい。
男の一人が振り返った。
「だまれ!! ガキはすっこんでろ!!」
「あたしの猫を虐めないで」
「ちょっと調べるだけだ」
やっぱり、内調だ。
でも、まだリアルかわかってないのね。
もっとも、男達も逃げ回る猫をなかなか捕まえられないでいる。
男の子の方はその間スマホを操作していた。操作が終わると男達の方に向き直る。
「お前達!! 警察を呼んだぞ」
男の一人が振り向く。何か細長いものを取り出した。
「ヤバ。ネットランチャーだ。これお願い」
「え?」
男の子はあたしにスマホを持たせると、男達に向かっていった。
だめよ。相手はただ者じゃ……
は! もしかすると、彼は、ああ見えて実は武道の達人……
「どけ!!」
……じゃなかったか。
男の一人にあっさりと吹っ飛ばされて男の子は路面に転がった。
それと同時に男の持っていた道具から何かが発射される。
それは空中で広がり網になった。
あんなもの使われたら、猫だって捕まっちゃう。
でも、リアルはかろうじて網をよけた。
パトカーのサイレンが聞こえてきたのはそのとき。
「くそ!! 引き上げだ」
男達は車に乗り込み逃げていく。でも、危なかった。
パトカーのサイレンが、あたしが持っているスマホから鳴っている事がばれてたら……
にしても、こんな着信音どこからダウンロードしたんだろう?
「にゃー!!」
リアルがあたしの足下へかけてくる。
「大丈夫だった?」
「にゃー」
人前なので、言葉は話せないけど、たぶん『どうって事ないさ』と言ってるんだと思う。
そうだ!! 男の子は?
アスファルトの上で伸びていた。
「大丈夫!? しっかりして」
少し揺さぶる。
同時にリアルも男の子の頬にペチペチと猫パンチをする。
程なくして男の子は目を覚ました。
「あれ? 僕はここで……ああそっか。あいつらは?」
「逃げてった」
「よかった。おっと。もうそれ止めないと」
彼はあたしの持ってるスマホを受け取り、サイレンを止めた。
「馬鹿!! こんなの用意しているなら、なんで飛びかかったりしたのよ」
「いやあ、女の子の前でかっこ付けてみようかなって思って」
「そんな事で怪我したらどうすんのよ!! 死んだらどうんすんのよ!!」
「そんな大げさな」
「大げさじゃない!!」
君は何も知らないからそんな事言えるのよ。
あれ? あたし震えている。今頃になって怖くなってきたんだ。
「あの、君。何も泣かなくても」
「泣いてなんかない」
言ってから気がついた。
あたし、涙を流している。
「ああ!! もうこんな時間!! ごめん。僕もう行かないと」
「あ!! 待って」
男の子は走り去っていった。
名前を聞く暇もなく。
ドン!!
あたしは背中から何かに衝突した。
ブロック塀かと思ったけど、それにしては柔らかい。
「大丈夫!? 君」
「え?」
振り向くとそこにいたのは、あたしと同じぐらいの歳の大きなメガネをした男の子。
「助けて!! あたしの猫がさらわれちゃう!!」
思わず助けを求めてしまったけど無理かな?
男の子の身長はあたしより頭一つ分大きいけど、柔和な顔に華奢に身体つきの秀才タイプ。荒っぽいことに向きそうにない。
「おまえ達!! 女の子になんて事するんだ!!」
え? 意外とたのもしい。
男の一人が振り返った。
「だまれ!! ガキはすっこんでろ!!」
「あたしの猫を虐めないで」
「ちょっと調べるだけだ」
やっぱり、内調だ。
でも、まだリアルかわかってないのね。
もっとも、男達も逃げ回る猫をなかなか捕まえられないでいる。
男の子の方はその間スマホを操作していた。操作が終わると男達の方に向き直る。
「お前達!! 警察を呼んだぞ」
男の一人が振り向く。何か細長いものを取り出した。
「ヤバ。ネットランチャーだ。これお願い」
「え?」
男の子はあたしにスマホを持たせると、男達に向かっていった。
だめよ。相手はただ者じゃ……
は! もしかすると、彼は、ああ見えて実は武道の達人……
「どけ!!」
……じゃなかったか。
男の一人にあっさりと吹っ飛ばされて男の子は路面に転がった。
それと同時に男の持っていた道具から何かが発射される。
それは空中で広がり網になった。
あんなもの使われたら、猫だって捕まっちゃう。
でも、リアルはかろうじて網をよけた。
パトカーのサイレンが聞こえてきたのはそのとき。
「くそ!! 引き上げだ」
男達は車に乗り込み逃げていく。でも、危なかった。
パトカーのサイレンが、あたしが持っているスマホから鳴っている事がばれてたら……
にしても、こんな着信音どこからダウンロードしたんだろう?
「にゃー!!」
リアルがあたしの足下へかけてくる。
「大丈夫だった?」
「にゃー」
人前なので、言葉は話せないけど、たぶん『どうって事ないさ』と言ってるんだと思う。
そうだ!! 男の子は?
アスファルトの上で伸びていた。
「大丈夫!? しっかりして」
少し揺さぶる。
同時にリアルも男の子の頬にペチペチと猫パンチをする。
程なくして男の子は目を覚ました。
「あれ? 僕はここで……ああそっか。あいつらは?」
「逃げてった」
「よかった。おっと。もうそれ止めないと」
彼はあたしの持ってるスマホを受け取り、サイレンを止めた。
「馬鹿!! こんなの用意しているなら、なんで飛びかかったりしたのよ」
「いやあ、女の子の前でかっこ付けてみようかなって思って」
「そんな事で怪我したらどうすんのよ!! 死んだらどうんすんのよ!!」
「そんな大げさな」
「大げさじゃない!!」
君は何も知らないからそんな事言えるのよ。
あれ? あたし震えている。今頃になって怖くなってきたんだ。
「あの、君。何も泣かなくても」
「泣いてなんかない」
言ってから気がついた。
あたし、涙を流している。
「ああ!! もうこんな時間!! ごめん。僕もう行かないと」
「あ!! 待って」
男の子は走り去っていった。
名前を聞く暇もなく。
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