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第一章

「喋れる理由は国家機密なので教えられない」

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「ところで君の名前を聞いてなかったわね。首輪にリアルって書いてあったけど」
「それ俺の名前」
「じゃあリアル君って言うんだ。あたしは美樹本瑠璃華。瑠璃華って呼んでね」
「わかった。瑠璃華。ところでご飯まだ?」
「はいはい。今上げるわよ。ところで、なんであんなところで倒れていたの?」
「お腹空いて動けなくなってた」
 あたしはビニール袋から猫皿を取り出す。
「それは分かるよ。獣医さんもそう言ってたし。でも、そんなお腹空いてるなら、ネズミでも捕まえて食べるぐらいすれば……」
「にゃ!! ネズミを食べるだと!! そんな可哀そうな事できるか!!」
 猫のくせにネズミが可哀そうなんて、変わった奴。
「だってネズミって、ハムスターの仲間だろ。それを殺すなんて」
 そりゃハムちゃんは可愛いけど……
「リアルがネズミを殺せない人道……じゃなくてにゃん道主義というのはわかったけど」
 あたしは猫皿にカリカリを盛った。
「なんであんなところにいたの?」
「追手に追われて道に迷って行き倒れた」
「追手?」
「うにゃ……それは」
 リアルは不意にそっぽを向く。
 じゃあ質問を変えて……
「なんで君は人の言葉が喋れるの?」
「それは言えない」
「言えないの?」
「国家機密に関する事なので」
「こ……国家機密なの?」
「国家機密だ」
 大げさに言ってるのかな?
 あたしは机の上のノートパソコンを床に下ろして操作した。
「なにしてるの?」
 リアルの質問を無視して、あたしは相談サイトを呼び出して書き込み始める。
 何を書いてるかわかるように声をあげて……
「ええっと。喋る猫があたしの家にいます。なんで喋れるのか聞いたんだけど『国家機密』だと言って教えてくれません。どうすれば教えてくれると思いますか?」
「にゃああ!!」
 さっきまでふらふらだったとは思えないような勢いでリアルはパソコンに飛びつき、パックスペースキーに前足を置いた。
 あたしの書き込みが消されていく。
 にしても器用な。喋るだけでなく、パソコンも使えるなんて……
「にゃにをする気だった!?」
「何って、ヤッホー知恵袋に質問を……」
「国家機密つってるだろ!!」
「あたし公務員じゃないもん。国家機密なんて関係なーい」
 いや、だからって別に無政府主義アナーキストってわけでもないけどね。
 オリンピック見ながら『日本がんばれ!!』と声援上げたり、外国人が日本の島に不法上陸してるのを見てムカつくぐらいの愛国心は持ってるつもり。
 だけど……
「だいたい国が納税者に、隠し事はよくないと思うな」
「税金なんて払ったことないくせに」
「払ったことあるもん。いつも買い物するとき消費税盗られて……いや、納めてるもん」
「それ、瑠璃華が稼いだ金?」
「う……」
「まあいいや、ネットに書き込まれちゃかなわないから、差しさわりの無い程度に話すよ」
 まあ、あたしも本気でネットに書き込む気なんてなかったけどね。
 あたしが猫皿を床に置くとリアルは猛然と食べ始めた。
「ひへんひふぉーふあによって」
「食べるか、喋るかどっちかにして」
 リアルは口いっぱいの食物をごっくんと飲み込む。
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