宇宙桜

津嶋朋靖(つしまともやす)

文字の大きさ
上 下
4 / 19

しおりを挟む
 一週間後、町内の公園に付近の住人が集まり宴会が行われていた。
 その中心では、高さ二メートルほどの桜が満開になっている。
「いやあ、見事な桜ですな」
「実に」
 一見すると普通の花見のようである。
 だが、普通の花見とは一つだけ違う点があった。
 桜の根元にはすっかり痩せ細った正の姿があったのだ。
「よお! 桜の兄ちゃんも一杯やりなよ」
 一升瓶を持ったおっさんが正の持っている杯に並々と酒を注ぐ。
「はあ……どうも」
 正は酒を一気に煽った。
 正の頭の動きに合わせて桜の木が揺れて花弁が舞い散る。
「おお! 桜吹雪じゃ!!」
「景気ええのお!!」
 正の顔はかなり不景気であったが……
 町内会役員のおばさんが小さな封筒を差し出す。
「頭山さん。拝観料です」 
「ああ、どうも」 
 正は、封筒の中のお札を数えて懐にしまう。 
「なんか疲れていませんか?」 
「はあ、首が重いのです」 
「大変ですね。それ抜けないのですか?」 
「頭皮にびっしり根を張っているので。今、会社の方で対策を考えてくれているそうですが、当てになるものやら」
「会社? そういえば頭山さんの会社ってどこでしたっけ?」
「コスモ製薬です」
 頭の木か小さいうちに出社したとき、会社の研究開発室の者たちが正の桜から細胞サンプルを採って、枯らす方法が見つかるまで会社へは来るなと言われたのだ。
 もっとも、行きたくても木がこんなに大きくなっては電車もバスも乗れないが。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...