26 / 31
決戦! グモブ公爵!
第26話 ドラゴンをサルベージしよう
しおりを挟むグモブ公爵に攻め込む名分を得るため、ドラゴンをサルベージすることになった。
十年前に海底に沈んだドラゴンだ。広大な海を探していたらいくら時間があっても足りない。
なので街の古参の住人から墜落した場所を聞き取って、大まかな目安をつけて捜索を始めた。
だがかなり前のことなのでみんなはっきりと覚えていない。
なので……記憶の読み取りの専門家に頼ることにした。
『あそこだ』
都市アルダの海岸にてサトリが海の特定箇所を指でしめした。
こいつに街の住人の心を読ませてドラゴンが落ちた時の情報を仕入れたのだ。
昔のことであまり覚えてないのなら、脳に眠る記憶を無理やり読み取ればいいじゃない。
「よし、クラーケン! そこら一帯を捜索してくれ!」
俺が海に向かって叫ぶとクラーケンが海面から触手でOKサインを出した。
そしてしばらく待っていると、八つの足で巨大なドラゴンの死体を引き上げて海岸へと放り投げてくれた。
まじでクソデカイな……全長十メートルくらいあるのでは?
横たわった死骸に恐る恐る近づくが……かなり綺麗で全く腐っていない。
死後まもないとしか思えなかった。
「腐ってないのか? 海を汚染するくらいだったのに」
「我が浄化したのだ。その時に腐は消えたに決まっている」
ユニコーンがぶるるといななきながら呟く。
なるほど、浄化の力は穢れだけじゃなくて腐れも消すのか。
肝心の目的を果たそう。ドラゴンに剣が刺さってないかを確認していく。
まずはドラゴンの背中側から見て確認するが後頭部や背中にはない。
なので正面のほうに移動して確認すると……あった。
巨大なバスターソードが心臓をえぐるように刺さっている。
しかもその剣も新品のような状態で、柄の部分にはグモブ公爵家の紋章が記されていた。
……海に十年沈んでいたのに錆びてすらいないぞ、この剣。確かに上等な剣だが素材は鉄にしか見えないが……。
あ、ユニコーンが錆びた金属も浄化したのか。海の汚染も消したのだから、無機物でも綺麗にできるはずだし。
…………ユニコーンの力でダメになった鉄を元に戻して儲けられないだろうか。
『鉄再生工場……これは儲かるな。どうやってユニコーンをその気にさせようか。処女数人プレゼントしたらいけるだろうか』
「断る。我が癒しの力を下賤な金儲けに利用するな」
「サトリ、心を読まないでくれ……」
即座に内心を暴かれるのでやはりサトリを使うのは諸刃の剣だ。
ま、まあこれでグモブ公爵家に攻める名分ができた。
後はどうやって勝つかだな。公爵家ともなればそれなりの軍を持っているだろう。
対してこちらは人間の兵士はいないので、魔物たちで戦わなければならない。
しかもあまり数を揃えることは出来ない。
召喚自体はいくらでもできる。だが後先考えずに呼んで養えなかったら俺が殺されかねないし。
かといって強力な魔物を呼び出すのも難しい。
強いやつはだいたい食費がかかるのだ。ドラゴンなら三日に一度くらい牛一頭求められる。
デュラハンなら数か月に一度、新品のフルプレートアーマーを要求される。
なので魔物の能力を活かした搦め手で敵軍に破壊工作を仕掛けたい。
そうして弱ったところを今まで召喚した魔物たちでぶっ飛ばす……やはりこれが理想だ。
都市アルダにいる魔物たちは数は少ないが粒揃い。うまく扱えば公爵家の軍隊相手でもしっかりと勝てるはず。
「さてと。じゃあ公爵家に攻め込むための作戦会議だ」
「それはよいがこのドラゴンの死骸はどうするのだ? こんなところで放置しておくのか?」
「いやドワーフがすぐ回収しに来るはずだ。こいつは公爵家に対する切り札なんだから」
そうして急いで屋敷の執務室に戻って作戦を練ることになった。
-------------------------------------------------------
ダーシュ港にあるグモブ公爵家の屋敷。
そこの豪華な一室でグモブ公爵は葉巻を吹かしていた。
そんな彼と同席しているのは、鋼鉄のように鍛え上げられた筋肉を持つ壮年の偉丈夫。
「ヴァーダル。其方に頼みたいことがある」
「ほう、なんでしょうか? 養われている身としては出来ることならやりますが」
「実はな、余は都市アルダに軍を差し向ける予定じゃ。とある者を大金で買い取ったのに引き渡してこないのでな。なんとその者はな、余が金を払った者を倒してしまったのじゃ」
「それはそれは……金を受け取っただから引き渡すのは当然でしょうに」
「故に侵攻することにしたのじゃ。それでな、お主も軍に参加して欲しいのじゃ。ドラゴン殺しの英雄たるお主がいれば、奴らも震え上がって降伏するはず」
公爵に対してヴァーダルは笑みを浮かべる。
その顔はまるで狼のように獰猛で、常人が見れば身をすくませるほどの恐怖を抱かせる。
「くくく……つまり大量に殺してよいということですね?」
「うむ。じゃが目的の人物……ライジュールは殺さずに捕縛せよ。あ、それと妹がいるそうなのでそれも。姉妹同時に調教するのは楽しそうじゃ」
「他の者は?」
「殺してよいぞ。都市アルダがまさか復活するとは思わなかったが、こうなれば余の領地にしてしまおう。十年前とは事情が違う、今の王なんぞ権力はないから盗ったもの勝ちじゃわい」
「御意……いやぁ嬉しいですよ。以前に都市アルダにドラゴン投げ込んだ時は、あれだけ人が多かったのに殺せなかったのが辛くて。ようやく心残りを消せます」
ヴァーダルは口の周りを舐め、瞳孔が開ききった目で告げるのだった。
それと見てグモブ公爵は満足げに頷いた。
「頼むぞ、千人殺しの血衣英雄よ。余の物を取り戻しておくれ」
0
お気に入りに追加
417
あなたにおすすめの小説
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?
よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ!
こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ!
これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・
どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。
周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ?
俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ?
それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ!
よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・
え?俺様チート持ちだって?チートって何だ?
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
転生したら大好きな乙女ゲームの世界だったけど私は妹ポジでしたので、元気に小姑ムーブを繰り広げます!
つなかん
ファンタジー
なんちゃってヴィクトリア王朝を舞台にした乙女ゲーム、『ネバーランドの花束』の世界に転生!? しかし、そのポジションはヒロインではなく少ししか出番のない元婚約者の妹! これはNTRどころの騒ぎではないんだが!
第一章で殺されるはずの推しを救済してしまったことで、原作の乙女ゲーム展開はまったくなくなってしまい――。
***
黒髪で、魔法を使うことができる唯一の家系、ブラッドリー家。その能力を公共事業に生かし、莫大な富と権力を持っていた。一方、遺伝によってのみ継承する魔力を独占するため、下の兄弟たちは成長速度に制限を加えられる負の側面もあった。陰謀渦巻くパラレル展開へ。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる